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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大法人化 国は大学自立の芽つぶすな
 
[he-forum 3682] 宮崎日日新聞社説03/29.
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『宮崎日日新聞』社説  2002年3月29日付

国立大法人化 国は大学自立の芽つぶすな

 文部科学省が検討していた国立大学法人化の最終報告がまとまった。

 予算の使い方や人事、教育研究組織などについての国の規制を緩和し、大学
の裁量を大幅に広げるというのが法人化の趣旨だ。

 国家の付属機関だった従来に比べればよりオープンな制度になる。大きな前
進であるのは間違いない。

 だが、最終報告をみる限り、国の関与の及ぶ余地は依然大きく、やり方次第
ではかえって国のコントロールが強まる恐れもある。

 肝心なのは大学の自主性・自律性の確立だ。自立の芽をつぶしてはいけない。
国は大学支援に徹してほしい。

☆教職員は非公務員に

 最終報告では、教職員の身分を非公務員とし、外部の有識者を含む役員会の
設置が新たに盛り込まれた。

 大学の自由度をできるだけ高める、という観点から言えば、非公務員とした
のは妥当なところだ。

 教育研究の自由も、公務員でなければ守れないというわけではなかろう。問
題があれば透明性を高める中で社会に問い掛け、勝ち取るのが本筋だ。

 役員会を設け、大学全体として「透明性の高い意思決定」を目指したのも理
解できる。経営・教育の責任者となる学長の権限は強大だ。重要事項について、
学長の意思決定に先立ち役員会の議決を経るとしたのは、権力チェックという
点でも意味がある。

 気になるのは、行革論議で浮上した独立行政法人の基本的枠組みを依然引き
ずっている点だ。

 行政の企画立案機能と実施機能を分け、企画立案を本省が、独立行政法人が
実施機能を担うという仕組みだが、実施機能として想定されていたのはもっぱ
ら定型的業務である。

☆統制強化に強い危惧

 主務省が中期目標を定めて指示、その評価委員会が達成状況を評価するとい
う上意下達の仕組みは、自由な発想を基本にする大学にはなじまない。

 報告は、大学の中期目標に各大学が作成した原案への配慮義務などを盛り込
んだが「文部科学大臣が…定める」とし、文科省内に置いた国立大評価委員会
が達成状況を評価し「運営費交付金等の算定に反映させる」とした。

 これでは国が目標を定めるという基本は変わっていない。とても先進国の大
学とは言えまい。

 運営費交付金についても報告は「評価結果等を反映」としただけだ。教育費
や最低限の研究費など基盤的経費をどこまで保証するか、明らかでない。 予
算配分などに大きな権限を持つことになる国立大評価委員会も文科省の組織で、
メンバーも文科省専任だ。

 これまで以上に文科省のコントロールが強まるのでは、と大学が危惧を抱く
のも無理からぬところだろう。

 だが、国によるトップダウンの仕組みが強くなれば、大学に未来を開く自由
な発想は生まれにくくなる。

 肝心なのは、評価結果の交付金への反映方法や評価の在り方など今後の検討
に委ねられた点だ。

 具体的な制度設計は、評価と離れた基盤的経費の一定程度の保証、国立大評
価委員会を国の関与をできるだけ制限する方向で組み立てるべきだ。

 国立大も正念場である。これまで国任せだった予算配分や労務なども自律的
に行う必要がある。自由が広がる分だけ責任も大きくなる。大学自治を構築で
きない大学に未来はない。