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独行法反対首都圏ネットワーク

  国立大学  理想の法人目指す努力を
 
.[he-forum 3668] 毎日新聞社説03/28
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『毎日新聞』社説  2002年3月28日付

  国立大学  理想の法人目指す努力を


  文部科学省の「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」は26日、
「新しい『国立大学法人』像について」と題する最終報告を公表した。

  独立行政法人とは別の「国立大学法人」を大学ごとに設置し、予算や組織面
などで大学の裁量、自由度を拡大する。一方、学外者の大学運営参画を制度化
し、大学への資源配分を第三者評価の導入による事後チェック方式に移行。個
性豊かな、国際競争力のある大学を目指すというものだ。国立大学制度の歴史
的転換といえる。

  ただ、最終報告はなお、運用によって右にも左にも行く要素を残している。
狙い通りに大学改革の推進力になる可能性がある一方、これまでと何ら変わら
ないことにもなりかねない。国の統制・干渉がむしろ強くなる可能性もある。
大学人の基本姿勢、理念がこれまで以上に重要であり、大学の教育研究につい
て、社会の理解を得る努力が欠かせない。

  報告は、中間報告で先送りされた課題にも切り込んだ。

  まず教職員の身分は、非公務員型を採った。外国人の管理職登用や兼職・兼
業の柔軟化など、多彩な活動が可能となる非公務員型の利点は少なくない。公
務員でないと身分が不安定になる、学問の自由を制度的に保障する教育公務員
特例法が適用されないため教育研究が脅かされる、などの反発も聞かれる。が、
そこは対応次第だろう。学問の自由は憲法に定められた権利であり、毅然とし
て臨めばよい。職員の身分は不利にならないような配慮が可能だ。

  大学の運営組織は、教学面担当の評議会とともに、経営面の運営協議会(学
外者を含む)を設置。これを踏まえ、学長が最終決定するが、特定の重要事項
は、役員会(同)の議決を経る、とした。大学の意思決定に透明性と説明責任を
取り入れるものにはなった。ただ、これも運用によっては、硬直化、形式化す
る恐れもある。

  もう一点、国立大学法人の柱である評価システムは、一部煮詰まらなかった。
大学の評価は計量的・外形的な基準だけでは難しい。評価結果を予算に反映さ
せるにしても、その方法と手続きは、見えてこない。まだ「具体的に検討する
必要がある」(最終報告)という段階だ。重要な課題であり、慎重な検討が求め
られる。

  今回の審議は、独立行政法人制度を前提としたところに無理があった。政府
の指揮命令下にある独立行政法人は、自主性・自律性を基本とする大学にはな
じまない。報告には工夫もみられるが、限界があったことは否定できない。

  その意味でも、今回の報告は、あくまで初めの一歩にすぎない。大学にふさ
わしい法人を作る努力は、これからも、不断に続けていかなければならない。

  国、文科省には、できる限り抑制的な対応を求めたい。設置主体が国であり、
カネを握っているからといって、安易に権限を振りまわしてはならない。独創
的な、価値ある研究は、国の「指揮命令」的感覚からは生まれない。