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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「新しい『国立大学法人』像について」に対する声明
 
[he-forum 3659] 全大教中央執行委員会の「声明」.
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本日、全大教中央執行委員会は下記の「声明」を公表しました。


「新しい『国立大学法人』像について」に対する声明

2002年3月27日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の最終報告「新しい『国立大 学法人』像について」(以下、「最終報告」と略す。)がとりまとめられ、3月26日、 文部科学大臣に提出された。今後、「国立大学法人」の制度設計に関しては、文部科 学省で具体的な法案作成等の作業が開始されることとなる。
 しかし、「最終報告」が示す国立大学法人の基本的性格は、大学・高等教育の発展 にとって如何なる設置形態がふさわしいかという論理ではなく、その制度設計は、ま ず独立行政法人制度ありきという「行政改革」の論理から出発し、さらに、「大学の 構造改革方針」という大学の国際競争力強化の要因が付与されたことにより、極めて 歪んだ「国立大学法人」の姿に帰結している。
 仮に「最終報告」に沿った国立大学法人化が進められるのであれば、それは学問の 自由と大学自治の否定を通じて、学術研究・高等教育・医療の発展の基盤を崩し、人 類と地域社会、国民に取り返しのつかない深刻な悪影響を及ぼすものであり、断じて 容認できるものではない。
また、昨年9月27日に調査検討会議が公表した「新しい『国立大学法人』像について (中間報告)」に対しては、私たち全大教を含む多くの大学関係者が真摯な検討を加 え、意見書を提出したのであるが、これらの意見書に対して、調査検討会議は「最終 報告」に至るまで、十分な検討、議論を行った形跡は全くうかがえず、きわめて遺憾 であると言わざるを得ない。

 「最終報告」の具体的な論点に即していえば、
 まず第1に、教職員の身分については、「非公務員型」を採用するとしている。こ のことは以下に述べる重大な問題点を含んでいる。
 「最終報告」では、「国際競争力の高い大学」をめざすと称して、兼業・兼職の緩 和、任期制・「アウトソーシング」の導入促進等の「人事の流動化」を提示している。
これらは、教職員の雇用・身分保障を不安定化させ、多くの教職員の労働条件引き下 げを容易にする危険性を持っている。また、教育公務員特例法の不適用を通じて学問 の自由と大学自治の否定につながることは明らかである。このことが日本の大学・高 等教育に及ぼす混乱と災禍は、きわめて深刻で長期的なものとならざるをえない。
 そもそも、教職員の身分の根幹に関する重要事項にもかかわらず、この間の「中間 報告」に対する全大教を含む多くの意見書の指摘を無視し、その後も大学関係者、教 職員の意見も聴かぬまま、「公務員型」を前提とした検討が、なぜ突然「非公務員 型」とされたのか、明確な理由は何ら示されていないことにも重大な疑義がある。そ のことは、「学校教育法上国を設置者とする」としつつも「非公務員型」にすること や国家公務員試験採用で、現にその職にある職員の身分を「非公務員型」とする合理 的根拠が記されていないことにも端的に示されている。

 第2に、「運営組織の在り方」においては、教学と経営の分離につながる危険性の ある組織構成を提案していることや、学長選考にあたっての大学構成員の参画が大幅 な制限されていることなど、あまりにも問題が大きい。
 「最終報告」は、「運営組織の在り方」について、「教学と経営との円滑かつ一体 的な合意形成への配慮」を述べ、主に教学面を審議する学内の代表者による「評議会 (仮称)」と並んで主に経営面を審議する相当程度の学外有識者が参画する「運営協 議会(仮称)」を置き、学長は、両者の審議をふまえ、最終的な意志決定を行うとさ れている。これは、私立大学の理事会方式とは異なるが、教学と経営の分離につなが る重大な危険性がある。また、大学の「自主性・自律性」を高めるためには、役員 や、評議会のメンバーは大学構成員(常勤の職にある者)とすべきであり、非常勤の 職にあって大学の運営にかかわることのできる機関は、諮問機関としての性格をもつ ものに限定すべきである。無限定な学外者の参画には、反対である。
 学長選考についても、学長選考委員会(仮称、運営協議会及び評議会の代表で構 成)において、学長候補者を選考するとしており、学内の「意向聴取手続」を行う場 合であっても、その参加対象を限定するなど学内構成員による選挙を形骸化させるも のであり、到底認めがたいものである。これらの問題は、「最終報告」が述べる「憲 法上保障されている学問の自由に由来する『大学の自治』の基本は、学長や教員の人 事を大学自身が自主的・自律的に行うことである。」と如何に両立するというのであ ろうか。

 第3に、中期目標の作成手続きの基本的スキームについて、大きな問題点を含んで いる。中期計画の作成・認可、および国立大学法人に対する評価システムをも含めた 全体的なシステムを見てみると、中期目標は文部科学大臣が最終的に策定するとされ ている。また、国立大学法人の評価は、文部科学省内に設けられる国立大学評価委員 会(仮称)が行うこととなっており、評価と資源配分が直結している。このことによ り、政府・文部科学省による統制がむしろ強化され、学問の自由と大学自治をないが しろにし、学術研究の自由と自律性を土台から覆す危険性をもっていると言わざるを えない。

 第4に、大学共同利用機関の法人の制度設計に加え、新たに、公立大学・公立短期 大学、高等専門学校についても、法人化の具体的検討を明示したことも重大な問題で ある。

 私たちは、昨年7月の定期大会で決定した「独立行政法人通則法の枠内での特例措 置、あるいは、通則法を前提とした独立行政法人化に反対し、『対案』を提示し、よ り高い自律性を有する法人のあるべき姿を徹底して追求します。」という立場から、 今回の「最終報告」に基づく法人制度に反対し、「要求・対案」の対置、100万人をめ ざす国会請願署名運動など、学内の合意形成と地域社会に理解と支持を得るとりくみ を幅広い共同をすすめつつ、ねばり強く推進する決意である。


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