☆国立大法人化最終報告 「外部の目」活用 経営課題審議に有識者
[he-forum 3658] 日本経済新聞03/27.
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『日本経済新聞』2002年3月27日付
国立大法人化最終報告
「外部の目」活用
経営課題審議に有識者
国立大学改革の最大の目玉ともいえる法人化問題で、文部科学省の検討会議
が二十六日まとめた最終報告書は、役員会の新設などのほかにも新たな視点を
盛り込んでいる。第三者の「外部の目」を活用しようとしているのが大きな特
徴だ。
■経営強化
法人化後は学内の資源配分や人の配置を戦略的に行うことも可能になる。従
来足りなかった「経営」的視点が求められることを受けて「運営協議会(仮称)」
も新設。学内代表者に一定数の学外有識者を加え、経営課題の審議に当たる。
一方で、教育・研究面の課題は学内代表者で組織する「評議会(仮称)」が担
当する。議決権を持つ役員会のメンバーが協議会や評議会のメンバーを兼ねる
ことは認めるという。
■中期目標
法人化後、大学側は地域特性や教育・研究の特色を踏まえて重点的に取り組
む事業などを中期的な目標として定める。全国九十九の国立大が一斉にこうし
た目標を作るのは初めてのことだ。
中期目標については大学側が事前に文科相に原案を提出、大臣は原案を尊重
して目標を定める。確定した目標に基づいて中期計画も作成、大臣が認可する
という。文科省側は「九十九もある大学の目標や計画について逐一国が指示す
るつもりはない」としており、大学の独自性が問われる。
■国立大学法人
法人の形態については「国立大学法人」という名称が使われている。文科省
は「広い意味では独立行政法人の一種だが、学外者の運営参画を制度化するな
ど性格が異なる面もある」として他の独立行政法人とは分けて考えている。
【解説】
透明な評価法の確立課題
法人化の最終報告書は、地域の高等教育の拠点とされてきた国立大学に競争
原理を持ち込み、活性化を狙った内容だ。今後の課題は、公正な競争の前提と
なる透明性と信頼性を兼ね備えた評価方法を確立できるかどうかだ。
新たな法人化制度では教職員は業績評価で収入に差が付く。このため、大学
はその評価の基準を明確にする必要がある。大学も教育・研究の成果や経営効
率に対する評価で、翌年度の国の交付金の額が決まる。
ただ、評価制度自体がまだ始まったばかりだ。教育・研究に対する第三者評
価を担う大学評価・学位授与機構は先日、二〇〇〇年度に初めて実施した国立
大学の評価を公表したが、評価する側にもされる側にも戸惑いの色が濃かった。
現状では同機構の評価方法は、各大学ごとに定めた中期目標の達成度に対す
る自己点検評価をベースにしている。しかし、報告書は同機構の業務見直しも
明言。分野別に各大学の研究業績がどの程度の水準にあるのかを評価するよう
求めており、この部分が大学の「成績表」となる可能性がある。
最終的に総合評価を行い予算配分についての意見を大臣に述べる国立大学評
価委員会(仮称)とも合わせ、評価機関側は評価基準を明示し、ブレのない評価
方法を確立することが求められる。