トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大独法化:学費、給与にも格差 大学間の競争激しく
 
.[he-forum 3651] 毎日新聞03/26
--------------------------------------------------------------

Mainichi Interacitive 2002年3月26日付


国立大独法化:学費、給与にも格差 大学間の競争激しく


 全国の国立大学が国の規制を外れ、民間的経営手法を取り入れる「独立法人」
の骨格が、26日固まった。民間企業と二足のわらじを履く教授が出たり、
「金もうけ」を視野に入れた大学運営が可能になるなど、大学の自由度が大き
くなる。一方で、大学に交付される予算や学生の授業料、職員給与に格差が生
じ、「非公務員」となる教職員の身分も不安定化するため、ぬるま湯体質を指
摘されてきた国立大学は競争を強いられる。独法化で国立大学はどう変わるの
か。


 ◇教職員は非公務員

 独立法人化された国立大の教職員は「非公務員」となり、原則として各大学
ごとに採用される。民間企業との兼業が可能になり、教官が民間研究所で研究
をして報酬を得たり、企業のトップと二足のわらじを履くことが可能になる。

 国立大教官の民間企業との兼業をめぐっては、99年に当時一橋大教授だっ
た中谷巌・多摩大学長がソニーの社外取締役に就任する際、国家公務員法など
に抵触すると問題になった。その後、人事院規則が緩和され、00年4月から
民間企業の監査役などとの兼業は認められたが、法人化で活動の幅はさらに広
がる。

 先端企業の研究をすることができると評価する声がある一方、学生への教育
がおろそかにならないかという懸念もある。独法化と合わせて教員の任期制を
採用する大学が拡大する可能性も高く、短い期間で成果を出せない学問が先細
りするという指摘もある。

 事務職員も、公務員としての身分保証はなくなるが、非公務員化後も公務員
宿舎を使用でき、従来の保険も継続できる。これまで職員は大学間を異動した
が、大学ごとの採用では、優秀な職員を大学が手放さないなど、人事が停滞す
る恐れもある。このため、最終報告では各大学が連携して人事を工夫するよう
求めている。


 ◇学費に格差

 学生の授業料は、国がある一定の幅を作り、その中で各大学が自由に定める。
これまでは、文学部でも医学部でも同一の学費だったが、今後、金のかかる医
学部など理工系学部で学費が値上がりし、同じ大学の学部間で格差が生まれる
可能性がある。

 学費を上げても学生の集まる大学は学費を値上げできるが、魅力のない大学
は学費を抑制せざるをえず、学費の大学間格差が広がる恐れがある。学費を上
げられないと収入が減り、教育、研究環境も整備できないという悪循環に陥り、
大学淘汰(とうた)の引き金になるかもしれない。

 一方、大学が勝手に学費を急激に値上げした場合、安い授業料で学べる国立
大学の特質が失われ、国民の反発が強まることも予想される。こうした事態を
防ぐため、奨学金制度の充実を求める声も大きい。


 ◇収益事業が解禁

 これまで、国立大の収入は学生が納める学費も含め、すべてが一度国庫に入
り、再分配されていた。法人化後は、独自に教育研究に関係する収益事業を行っ
て、その収入を運営費に回せる。新製品を開発したり、大学の教育成果を出版
して販売することなどが考えられる。

 しかし、都市部の大学と違って、周辺に企業の少ない地方の大学は資金も集
めにくく、この点でも格差が広がる恐れがある。運営の効率化を図るため、大
学がすぐに収入を上げにくい基礎研究や文学、考古学などの学問分野を縮小す
る可能性もあり、人文科学などが衰退するという指摘も出ている。


◇「学問の自由」「大学の自治」尊重し検討

 国立大学の独立法人化は、98年に「中央省庁等改革推進本部」が打ち出し
た国家公務員の削減計画の中で具体化した。01年度から10年間で国家公務
員を25%削減する計画で、当時対象となった国家公務員は約55万人(公社
化の郵政現業職員30万人は除く)。国立大の教職員は約12万5000人と
約23%を占め、目標達成には法人化が不可欠とされた。

 すでに、国立近代美術館や大学入試センターなど83の事務事業が01年4
月に独立行政法人に移行しているが、大学はこれらと違って「学問の自由」や
「大学の自治」を尊重すべきだとの意見があったため、文科省は大学にふさわ
しい法人化案を検討してきた。

 他の独立行政法人は、法人の長は所管する省庁の大臣が任命し、大臣が3〜
5年の中期目標を決めて指示するが、最終報告では大学の長(学長)は、これ
まで通り学内の選考を経て大臣が任命し、中期目標の期間も6年と長くした。
目標やその実施計画も各大学が作り、大臣はそれを十分尊重することも明記さ
れている。

 独立法人化後の主な制度変更

         現在    法人化後

位置付け  国の下部組織   独立した法人
運営費   国が使途定め配分 国が使途定めず配分
組織改編  法令などで規制  大学独自に策定
収益事業  認めない     教育研究と関連すれば可
教職員身分 国家公務員    非公務員
学長選考  学内評議会で選考 学外者も選考に参画
幹部職員  文科相が任命   学長が任命
給与    法律で規定    大学ごとに規定、業績給など可
勤務形態  法で兼業等禁止  兼業等が可
授業料   全国一律     一定幅の中で大学が決定