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独行法反対首都圏ネットワーク

☆全大教臨時大会「特別決議」
[he-forum 3583] 全大教臨時大会「特別決議」.
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3月9日〜10日に開催した全大教第25回臨時大会は、下記の「特別決議」を採択しました。


特 別 決 議

 3月6日の文部科学省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」連絡調 整委員会において、最終報告案「新しい『国立大学法人』像について」がまとまり、 3月26日にも文部科学大臣に対して、最終報告が提出されると伝えられている。しか し、最終報告案が示す国立大学法人制度の内容を検討するならば、そこに示された制 度設計の方向性は、学問の自由と大学自治の破壊を通じて、学術研究・高等教育・医 療の発展の基盤を崩し、日本の社会、国民に取り返しのつかない深刻な悪影響を及ぼ すものであり、断じて容認できるものではない。
 また、昨年9月27日に調査検討会議が公表した「新しい『国立大学法人』像について (中間報告)」に対しては、私たち全大教を含む大学関係者が多数の意見書を提出し た。真摯な検討と真剣な意見集約の結果であるこれらの意見書に対して、連絡調整委 員会が誠実に対応し、十分な議論を行った形跡は全くうかがえず、きわめて遺憾であ ると言わざるを得ない。

 最終報告案の具体的な論点に即していえば、まず第1に、教職員の身分について は、「非公務員型」を採用するとしている。しかし、この選択が教職員の雇用・身分 保障を不安定化させ、多くの教職員の労働条件引き下げを容易にし、教育公務員特例 法の不適用を通じて学問の自由と大学の自治を破壊することは明らかである。このこ とが日本の大学・高等教育に及ぼす混乱と災禍は、きわめて深刻で長期的なものとな らざるをえない。
 そもそも、教職員の身分の根幹に関する重要事項にもかかわらず、この間の「中間 報告」に対する全大教を含む多くの意見書の指摘を無視し、その後も大学関係者、教 職員の意見も聴かぬまま、「公務員型」を前提とした検討が、なぜ突然「非公務員 型」とされたのか、明確な説得的理由は何ら示されていないことにも重大な疑義があ る。そのことは、国家公務員試験採用で、現にその職にある職員の身分を「非公務員 型」とする合理的根拠が記されていないことにも端的に示されている。
 すでに昨年9月の「中間報告」に任期制促進の姿勢があからさまであったことは全大 教の意見書でも厳しく批判したところであるが、最近の連絡調整委員会の姿勢は、教 員の身分保障や研究教育活動への否定的影響への深い洞察を抜きに、是が非でも任期 制を積極的に導入するために、「非公務員型」を採用しようとしており、こうした乱 暴な手法は断じて認められない。
 また、国家公務員の、営利企業との兼業は人事院規則により「当該営利企業との間 に特別な利害関係又はその発生のおそれがなく、且つ、営利企業に従事しても職務の 遂行に支障がない(人事院規則14-8、第1条)」場合に限られているが、この規定は国 家公務員が国民全体の奉仕者であるとの考え方からくるものである。今回の「最終報 告(案)」で「非公務員型」を選択した理由の一つとして「営利企業の役員等を含む兼 職・兼業について、法人の方針に基づく弾力的な運用」が挙げられているが、高等教 育機関という公共的性格を持つ大学教職員がむやみに営利企業の役員等と兼業・兼職 することは、国民全体への奉仕者から営利企業への奉仕者となりかねず、国立大学の 使命をないがしろにするものである。

 第2に、「運営組織の在り方」については、教学と経営の一体的かつ円滑な意思決 定システムの構築が大学・高等教育機関にとっての生命線であり、絶対に譲れない基 本原則であることが全く配慮されていないことを指摘せざるをえない。役員や、評議 会のメンバーはすべて大学構成員(常勤の職にある者)でなければならず、非常勤の 職にあって大学の運営にかかわることのできる機関は、諮問機関としての性格をもつ ものに限定すべきである。無限定な学外者の参画には、反対である。

 第3に、中期目標の作成手続きの基本的スキームについて、中期計画の作成・認 可、および国立大学法人に対する評価システムをも含めた全体的なシステムをみる と、国立大学法人の評価は、文部科学省内に設けられる国立大学評価委員会(仮称) が行い、評価と資源配分の直結を特徴としている点など、大学自治をないがしろに し、学術研究のあり方を土台から覆す危険性をもっていることを指摘せざるをえない。

 以上のように、調査検討会議の最終報告案は断じて受け入れがたいものであり、独 立行政法人制度の枠組みによる国立大学法人化に反対し、最終報告の撤回を強く要求 する。
我々は、文部科学省と調査検討会議に対して、学問の自由と大学自治を保障し、大学 の「自主性・自律性」が拡大するよう、重ねて、制度設計の再検討を求めるものである。
 以上、決議する。 

2002年3月10日
全国大学高専教職員組合第25回臨時大会