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☆教育学部再編/島大と鳥大の合意を歓迎する
: [he-forum 3578] 山陰中央新報社説03/11.
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『山陰中央新報』社説  2002年3月11日付

教育学部再編/島大と鳥大の合意を歓迎する


 国立大学教育学部の再編問題で島根大学と鳥取大学は、基本的な合意に達し
た。島根大教育学部は教員養成を担当する学部に、鳥取大教育地域科学部は、
教員養成機能を併せ持つ一般学部に改組することで合意。この案を基に今後文
部科学省と協議していくことになった。

 再編問題では、島根大と鳥取大のどちらに教員養成学部を残すかが最大の焦
点になった。文科省の再編方針では、一県一学部の現在の体制を見直し、隣県
同士で統合する考え方が示されているからだ。 

 この点について両大学で協議した結果、山陰両県に最低ひとつは教員養成学
部を必要とするとの基本認識で一致。その上で教員養成は島根大が受け持ち、
鳥取大は学生の希望に応じて、教員免許を取得できる一般学部に役割分担する
ことで折り合いがついた。

 教育学部の再編問題について、大学側が一定の方向を打ち出したのは全国で
初めてであり、両大学がお互いの立場を尊重しながら、現実的な選択に活路を
見いだそうとしたことを歓迎したい。

 仮に両大学が教員養成を譲らず行き詰まった場合、山陰両県から教員養成学
部がなくなる事態も想定されただけに、地元にとって今回の合意の意義は大き
い。

 子どもの数が減っていることから、教育学部を卒業しても教員になれる道は
狭くなっている。過疎地を抱える山陰両県では特にその傾向が強い。かつては
地元に大量の教員を送り出していた島根大と鳥取大も昔の面影はない。

 しかし、その一方で有力な企業の少ない山陰では、教員は公務員と並ぶ安定
した職業であり、志望者も多い。そうした若者たちの希望を育てる選択肢を地
元に残しておくべきだ。

 文科省は、各大学の動向を見極めながら、来年度中に全国の再編計画を示す。
その計画に今回の合意を反映させてほしい。

 両大学の合意は、定員交換という方法が採用された。鳥取大教育地域科学部
の教員養成課程の定員七十人を島根大に移す代わりに、島根大は教育学部のう
ち教員免許を取得しなくても卒業できるゼロ免課程の定員百人を鳥取大に譲る。

 この結果、島根大教育学部は教員養成に絞った学部となり、入学定員は現在
の二百人から百七十人に減る。鳥取大はゼロ免課程を母体とする文系の一般学
部に衣替えし、定員は百六十人から百九十人に増える。

 鳥取大の一般学部は、学生の希望に応じて教員養成もできるようにする。教
員免許のうち専門性の強い中学、高校の免許は教育学部でなくても取得できる
が、鳥取大の新学部は、教員養成学部に限られていた小学校や養護教員の免許
も取得できるのが特徴。一般学部でありながら、教育学部の性格も残している。

 背景には教員養成を残してほしいとの鳥取県側のニーズがあり、同時に鳥取
県内に少ない文系学部を求める声も取り入れた結果である。

 教員養成をめぐる両大学のすみ分けはできたが、それはあくまで枠組みであ
り、大学冬の時代に生き残れるかどうかは、教育の中身と今後の実績にかかっ
ている。

 そのため新学部の特徴をどう打ち出していくか。それは大学としての競争力
を付けることであり、そのための議論を深めてほしい。