☆<社説>理念生かす工夫をさらに ロースクール
.[he-forum 3573] (毎日新聞03/11
-----------------------------------------------------------------
To: "he-forum" <he-forum@ml.asahi-net.or.jp>
Subject: [he-forum 3573] <社説>理念生かす工夫をさらに ロースクール (毎日新聞03/11)
|
<社説>理念生かす工夫をさらに ロースクール
毎日新聞ニュース速報
ロースクール(法科大学院)の設置基準等について、中央教育審議会の大学分科会
法
科大学院部会は先ごろ、「骨子」をまとめた。修業年限は3年を標準とし、相当数の
実
務家を含む専任教員が、法曹養成に特化した実践的な少人数教育を実施。修了者の相
当
程度が、新司法試験に合格できるようにするというものだ。
ロースクールの骨格が、おぼろげながら見えてきた。とはいえ、まだ不透明な部分
が
多い。関係者は、十分に吟味検討して、過ちのない制度設計をしてほしい。
司法制度改革審議会は、現在年間1000人程度の司法試験合格者を、2010年
に
は、3000人とするよう提言。ロースクールを、法学教育、司法試験、司法修習を
有
機的に連携させたプロセスとして新たに整備する法曹養成制度の中核と位置付け、0
4
年には学生の受け入れを開始するよう求めた。欧米に比べ、法曹人口が著しく少な
く、
また今の司法試験の激しい競争が受験技術偏重を招き、倫理や教養がおろそかになっ
て
いる弊害を意識したものだ。
司法制度改革だけでなく、大学改革の視点から見ても、高度専門職業人養成を目指
す
プロフェッショナルスクールの象徴として意義ある構想になりうるだろう。
ただ骨子には、狙いを現実のものにするために、なお詰めておく必要がある部分が
少
なくない。
まず、一定水準に達した修了者を3000人近くも送り出す体制が、大学側に取れ
る
かという問題がある。現在100校近くがロースクールに意欲を見せているが、基準
通
りの優秀な教員をそろえるのは容易ではない。また骨子は水準維持のために第三者評
価
を受けることを求めているが、ゼロからの出発になる。実効あるシステムにするため
の
ハードルは高い。
さらに授業料が相当高額になることは確実だ。骨子は、奨学金、教育ローン、授業
料
免除制度などの支援制度の検討をうたっているが、日本の奨学金制度は極めて貧弱で
あ
り、かなりの覚悟をしないと、絵に描いた餅になりかねない。スタート前に、きちん
と
道筋をつけて置くべきだろう。
ロースクールの入学者選抜方法も課題が多い。骨子は、すべての出願者に適性試験
を
課し、法学部出身者には各大学院の判断で法律科目試験を行うとする。適性試験の内
容
が決定的に重要になるが、その具体像はまだ見えてこない。十分な研究と準備が要
る。
修業年限が1年短縮される法学部出身者と他の学部出身者のバランスも問題だ。
ロー
スクールの良さは、懐の深さと多様性にあり、法学以外の経済、理数、医学などを学
ん
だ者を数多く受け入れるところに意義がある。法学部に偏ると、弊害の多い現行シス
テ
ムと変わらなくなる。東大は3分の2を法学部出身者とする改革案を公表したが、そ
れ
では「3年が標準」にはならないだろう。
ロースクール導入後の法学部、大学院の在り方も課題だ。その位置付けと役割を改
め
てきちんと議論しておく必要がある。
[2002-03-11-00:45]