『紀伊民報』2002年3月9日付
和大と三重大
紀伊半島南部の教育充実へ
教育学部の再編統合を検討
全国の国立大学で再編統合の動きが活発化する中、和歌山大学は、三重大学
と教育学部の再編統合について具体的な協議を始めることを決めた。今月中に
第1回会議を開き、今後、同学部の再編統合を含め、紀伊半島南部の教員養成
や教育サービスについて検討する。それと並行し、和歌山大は紀南地方の自治
体、企業、市民共同による「きのくに活性化支援センター」を、4月から全学
的な取り組みとして本格的に始動させることにしており、大学をあげて半島南
部の教育研究、経済、産業支援の充実を図る。
両県とも高等教育機関は北部に集中しており、両大は大学・短大のない紀南
地方と三重県東紀州地方(紀伊長島町以南、県境まで)の高等教育の対応を、
それぞれ課題として抱えていた。そのため今後の協議では、再編統合も含めた、
半島南部の教育支援を中心に議論していくという。
和歌山大学の守屋駿二学長は「山間部では複式学級なども多く、連携してへ
き地学校の教育方法について研究することが考えられる。また、一般や高校生
を対象にした公開講座などの教育サービスを、連携して充実させていく可能性
もある」と話している。
再編統合については、両大とも同学部の「教員養成課程」の維持を望んでい
ることや、教員免許を取得しない「新課程」の対応について調整が必要なこと
から、これらも議論のテーマになりそうだ。三重大の川口元一教育学部長は
「平成14年度中に再編統合の計画案を出していきたい」としている。
和歌山大は、教育、経済、システム工学の3学部。三重大は教育、人文、医
学、工学、生物資源の5学部で、互いに教育学部以外で競合する分野が少ない
ことから、将来的に、全学的な連携に発展する可能性もある。
守屋学長は「両大学は距離が遠いなどの問題があるが、教育学部の再編統合
の協議が順調に進めば、それを一つのきっかけとして、全学的に連携する可能
性はあり得る」。川口学部長も「両県南部を強化する非常に良いチャンス。将
来的に他学部の連携も十分考えられる」と話す。
また、和歌山大は県、田辺・新宮広域圏の自治体、経済界などの団体、住民
などと共同で、紀南地方の活性化を図ることを目的にした「きのくに活性化支
援センター」を4月に設立する見込み。平成16年春に完成予定の「IT総合
センター」(田辺市新庄町)内にサテライトキャンパスもつくる予定で、産官
学連携による教育研究、経済、産業に対し、知識・技術両面から全学的に支援
していく。当面は紀南地方が対象だが、将来的に、紀伊半島の海岸線に沿って、
県境を超えてネットワークを広げる「国道42号ライン」も構想にあるという。