☆“これがノーベル賞生んだ大学の現実”
.[he-forum 3552] 2002年3月7日(木)「しんぶん赤旗」
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2002年3月7日(木)「しんぶん赤旗」
“これがノーベル賞生んだ大学の現実”
予算削減研究室を直撃 ボイラー暖房中止 間借り部屋のまま名古屋大学
「校舎の老朽化で水漏れが起き、上階の配水管の位置を確認しながら、コンピューター
を置いている」「予算削減で、コピー代が有料になって、困っている」―。全国大学院生
協議会(全院協)の理事校会議(二月十七日、東京)で、院生からこんな報告がありまし
た。全国の大学で起きている深刻な実態を告発し、貧困な研究環境の是正を求める動きが
始まっています。震えながら
気温〇・七度のある朝、名古屋大学を訪れました。
「研究室にストーブ一個。近づくと熱いし、離れれば寒い…。震えながら研究していま
すよ」
名古屋大学の地球水循環研究センター(名古屋市千種区)では、五階建ての校舎に例年
十二月から入るボイラー暖房が中止され、各研究室ではストーブを購入しました。
大学院生(25)は、赤く燃えるストーブの芯(しん)を見つめながら、「研究費が削
減され、毎年ねん出していた百万円の暖房費も出なくなった。企業からたくさん外部資金
をもらえる研究はいいけれど、気象や海洋の水の循環に着目した基礎研究の環境が劣悪で
あっていいはずがない。これがノーベル賞受賞者を生んだ大学の現実なんて」といいます
。
廊下には、部屋に入りきらない設備や資料の入った段ボールが、山のように積まれてい
ます。
「昨年、環境学研究科が新設されましたが、独立した校舎がなくて、院生たちは、この
センターや工学部などの校舎で“研究室の間借り”をしている状態なんです」(前出・大
学院生)10年で2.2倍に
国の大学院重点化政策のもと、この十年間で、全国の大学院生は約二・二倍に増えまし
た。名古屋大学でも、現在、約二倍にあたる五千六百人が在籍しています。院生の急増に
たいし、教職員の数や施設面積が追いついていません。
教育学研究科では、約十九平方メートルの研究室のなかに七つの机を置き、十五人の院
生が使っています。ある院生(30)は、「こんな状態では、院生は、研究室にこなくな
ります。これは、名大だけの問題ではないと思う」といいます。
名古屋大学院生協議会は先月一日、こうした実態を「総長交渉要望書」としてまとめ、
松尾稔総長に提出しました。
二〇〇二年度予算案によると、研究費や施設維持費など国立大学への予算は、前年比1
・5%増と依然として低く抑えられています。その一方で、研究内容が審査されて支給さ
れる競争的資金が五年間で二倍化し、新たに国公私立「トップ三十」の大学づくりとして
重点的資金枠を設けるなど、一部の大学や研究を優遇する施策が強まっています。予算増
額して
文部科学省は、老朽化・狭隘(きょうあい)化した国立大学の施設を整備する五カ年計
画(「緊急に整備すべき対象」は六百万平方メートル)を立てましたが、計画二年目にあ
たる二〇〇二年度予算分まででも、達成率はわずか六分の一程度にしかなりません。
小泉内閣が唱える“大学の構造改革”は「(限られた)資源のなかでの競争的環境づく
り」(文科省)です。
全院協の浜田盛久議長(27)は、「各大学の実態を踏まえた基幹的予算の増額など抜
本的な改革を」とのべています。