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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「新しい『国立大学法人』像について(案)」(最終報告素案)に対する見解
[he-forum 3536] 最終報告素案に対する全大教の見解.
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「新しい『国立大学法人』像について(案)」(最終報告素案)に対する見解

2002年3月5日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会


 2月21日の文部科学省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」連絡調 整委員会において、「新しい『国立大学法人』像について(案)」(「最終報告素 案」)が配布され、国立大学法人制度設計の根本を左右する論点である「教職員の身 分の扱い」、「運営組織の在り方」及び「中期目標の作成手続き」等について基本的 方向が提出されるに至った。
しかし、そこで示された各論点についての基本的方向は、大学・高等教育の真の充 実・発展に寄与するものではありえず、むしろ学問の自由と大学自治の破壊を通じ て、学術研究・高等教育・医療の発展の基盤を崩し、日本の社会、国民に取り返しの つかない深刻な悪影響を及ぼすものであり、断じて容認できない。
 また、昨年9月27日に調査検討会議が公表した「新しい『国立大学法人』像について (中間報告)」に対しては、私たち全大教を含む大学関係者が多数の意見書を提出し た。真摯な検討と真剣な意見集約の結果であるこれらの意見書に対して、連絡調整委 員会が誠実に対応し、十分な議論を行った形跡は全くうかがえず、きわめて遺憾であ ると言わざるを得ない。

 具体的な論点に即していえば、まず第1に、教職員の身分については、「非公務員 型」を採用するとしている。しかし、この選択が教職員の雇用・身分保障を不安定化 させ、多くの教職員の労働条件引き下げを容易にし、教育公務員特例法の不適用を通 じて学問の自由と大学の自治を破壊することは明らかである。このことが日本の大 学・高等教育に及ぼす混乱と災禍は、「法人への移行職員が不利益を被らないための 法的措置」等の手当てのみでは到底回避できない、深刻で長期的なものとならざるを えない。
 そもそも、教職員の身分の根幹に関する重要事項にもかかわらず、この間の「中間 報告」に対する全大教を含む多くの意見書の指摘を無視し、その後も大学関係者、教 職員の意見も聴かぬまま、「公務員型」を前提とした検討が、なぜ突然「非公務員 型」とされたのか、明確な説得的理由は何ら示されていないことにも重大な疑義があ る。そのことは、国家公務員試験採用で、現にその職にある職員の身分を「非公務員 型」とする合理的根拠が記されていないことにも端的に示されている。
 さらに、「非公務員型」を採用した場合に「大学教員任期法による三類型を離れた 任期制の導入が可能に」なるとされている。すでに昨年9月の「中間報告」に任期制促 進の姿勢があからさまであったことは全大教の意見書でも厳しく批判したところであ る。私たちは、「任期」法を容認するものではないが、最近の連絡調整委員会の姿勢 は、「非公務員型」を採用して、「任期」法にさえ反し、教員の身分保障や研究教育 活動への否定的影響への深い洞察を抜きに、是が非でも任期制を積極的に導入するこ とを目指している。こうした乱暴な手法は断じて認められない。

 第2に、「運営組織の在り方」については、教学と経営の一体的かつ円滑な意思決 定システムの構築が大学・高等教育機関にとっての生命線であり、絶対に譲れない基 本原則であることが全く配慮されていないことを指摘せざるをえない。役員や、評議 会のメンバーはすべて大学構成員(常勤の職にある者)でなければならず、非常勤の 職にあって大学の運営にかかわることのできる機関は、諮問機関としての性格をもつ ものに限定すべきである。無限定な学外者の参画は、受け入れることはできない。

 第3に、中期目標の作成手続きの基本的スキームについて、中期計画の作成・認 可、および国立大学法人に対する評価システムをも含めた全体的なシステムをみる と、国立大学法人の評価は、文部科学省内に設けられる国立大学評価委員会(仮称) が行い、評価と資源配分の直結を特徴としている点など、大学自治をないがしろに し、学術研究のあり方を土台から覆す危険性をもっていることを依然として指摘せざ るをえない。

 以上に指摘した諸点をはじめとして、今回の「最終報告素案」は断じて受け入れが たいものであり、撤回を強く要求するとともに、学問の自由と大学自治を保障し、大 学の「自主性・自律性」が拡大するよう、制度設計の再検討を求めるものである。


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