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独行法反対首都圏ネットワーク

☆静大人文学部教授会の「緊急要望」
 
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国立大学法人化に関する緊急要望
2002年3月20日


                                   静岡大学人文学部教授会


   本年3月初旬に、文部科学省国立大学のあり方に関する調査検討会議が「新しい
「国立大学」像について」の最終報告(案)の決定をした。今回の報告は、昨年9月
の中間報告に対して出された当委員会を含むパブリックコメントを一顧だにしておら
ず、その内容もさらに後退させたもので問題があり、とくに、教職員の公務員身分の
廃止、学長選考での外部者の関与、外部者が参加する運営協議会の大学運営上の権限
の集約等における提言に関して、高等教育機関たる国立大学の将来のあり方として、
我々は大きな懸念を有するところである。そこで、前回に引き続き、静岡大学人文学
部教授会として、以下の点について緊急の要望を提出するものである。


   1 国立大学法人化がやむを得ないとしても、教職員の身分は公務員とすること。
  教員については、現行どおり「教育公務員特例法」を適用すること。


   最終報告(案)が教職員の身分を非公務員型について優れているとする点について
は、結局効率的運営という側面を強調したものであり、明確な説得的理由に欠けるも
のである。そればかりか世界的にもまれな国家による高等教育への責務の否定にも繋
がる重要な問題である。非公務員型の選択は、多くの教職員の身分の不安定や労働条
件の引き下げを生み出すことになり、大学教育に及ぼす混乱は深刻なものにならざる
を得ない。とりわけ、地方国立大学においては、非公務員型になった場合には、優秀
な教職員の確保は極めて困難となり、大学経営上も大きな支障を来すことになる恐れ
が非常に強い。これらの点等から、教職員の身分については公務員型を選択すべきで
ある。
   さらに、非公務員型の選択は、教育公務員特例法の適用を否定することにつながり
かねない。いうまでもなく、教育公務員特例法は、学問の自由の保障と大学自治の尊
重という観点から、大学教員の人事すなわち、採用・昇任・分限・懲戒・服務等に関
しては、各大学で自主的に行うことを制度的に保障しているのである。教育公務員特
例法の適用が否定されるということになれば、学問の自由と大学の自治が破壊される
ことにもなりかねない。私立大学にあっても、教育公務員特例法が事実上の規範とし
て教職員の身分保障がなされている実情をも重く受け止め、教員に対して教育公務員
特例法を引き続き適用すべきである。
 特に一般事務職員、技術系職員に何らの意向を事前聴取することをも怠り、法人化
は公務員身分を前提として受け入れた旧文部省の姿勢からしても逸脱した公務員身分
の否定は、全くアカウンタビリティーの欠如した判断と考えざるを得ない。大学にア
カウンタビリティーを要求する一方で、その施策にそれを欠いている矛盾はきわめて
大きい。


 2 大学の運営方法について、大学の自主性・自律性が最大限尊重されるよう
  国立大学法人化の制度設計を再検討すべきこと。


   独立法人化後の国立大学の運営方法に関して、中期目標の作成・評価等について、
文部科学省に設置される国立大学評価委員会(仮称)の強力なコントロールの下に置
くような構想については、大学の自主性・自律性を損ないかねない危険性を有してお
り、制度設計の再検討が必要である。特に大学評価に関しては現行の「大学評価・学
位授与機構」の分野別教育・研究評価の試行内容から見ても、国立大学協会から同機
関に対する本年3月1日付けの「申し入れ」に示しているとおり、極めて恣意性を含
みうる危険性が濃厚であり、それだけにこの評価を前提に財政面での資源配分が行な
われるとすれば、重大な結果を招くといわざるを得ないであろう。


   最終報告(案)は、学長の選考について、運営協議会と代表者と評議会で選考する
ことにした。これは、学外者の意向を学長選考に強力に反映させることを企図するも
のであり、大学の自主性・自律性の確保といった観点から、これまで通り大学教員の
直接選挙による選出を維持すべきである。また学内運営組織について、特に教授会を
教学に限定し、大学運営の重要事項について、学外者を含む全学レベルに限定するな
ど大学の自主性・自律性の基盤である教授会の位置を弱化させるばかりか、全学意思
決定機関としての評議会も、運営協議会に従属させられる内容を含むなど極めて大き
な問題点を含んでいる。