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独行法反対首都圏ネットワーク

☆特集:『最終報告案』、学長選挙制度改革
.2002.3.13独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
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独行法情報速報 No.14 特集:『最終報告案』、学長選挙制度改革
2002.3.13独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
非公務員化明記の『最終報告案』提出される
前号で憂慮したように国立大学独法化問題は非公務員化を軸に急展開し、文科省調査検討会議第8回連絡調整委員会は遂に3月6日『最終報告案』を決定した。"変化のなかに物事の本質がある"という点から『2.21版』から『最終報告案』への変更箇所に注目しながら分析する。[]は『最終報告案』文書として新たに挿入されたもの。基本資料は以下のとおり。
第7回2月21日"新しい「国立大学法人」像について(案)"(『2.21版』)
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/M1-14.02.21-02.pdf
第8回3月6日"新しい「国立大学法人」像について(案)"(『最終報告案』)
http://www.jtu-net.or.jp/upi/document/renraku.html#8=『2.21版』からの変更箇所明示
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/mon-1.htm#no.108=テキスト化可能
【開示・分析】
1.管理運営体制:教学・経営の完全分離
(1)役員会に権限を集中
・役員会は、学長と副学長で構成。[大学運営の重要テーマ(具体的に列挙:略)等に応じて担当副学長を十分配置]。[大学運営の企画立案に積極的に参画する事務職員等からも…副学長に積極的に登用]。現在の事務局長クラスの登用が企図されていると考えられ、また別に学外からも招聘。
・[重要事項に関しては「役員会」の議決により、透明性の高い、適正な意志決定を確保]」
(2)評議会・教授会の権限をさらに縮小
・「学内の代表者で構成する」という文の前に[大学の教学に関する]を置き、権限を教学に限定。
・「教授会における審議事項を真に[学部等]の教育研究に関する重要事項に精選」として、教授会が広く全学的見地で議論することを認めない。
(3)運営協議会
・「学外の有識者や専門家が[相当数]参加」するものとし、経営の実権を握るとともに、「モニタリング」(要するに監視)する。
2.学長選考から教員投票を事実上排除:『2.21版』の(案の3)を採用
・学長の規定から、『中間報告』にあった"教育研究の拠点たる大学の代表者であるとともに、優れた経営者でなければならず"を削除。役員会への権限集中と対応していると考えられる。
・学長選考の実施主体を[運営協議会及び評議会の双方のメンバー(代表)から構成される学長選考委員会]とする。
・投票を例外的な扱いにし、しかも投票参加者の範囲を[教育研究や大学運営に相当の経験と責任を有する者に限定]。現行の教員投票制度の事実上の廃止である。
3.自主的人事の対象から部局長、副学長を削除
・大学自治の根幹をなす自主的人事の対象から、『2.21版』に明記されていた役員、部局長を外し、その対象を教員に限定。教育公務員特例法第4条が部局長を教授会による選考対象にしていることを壊すものである。
4.身分保障のいっそうの後退
・前号で述べたように非公務員化自身が教職員の身分を不安定にするものである。
・『2.21版』にはあった「解雇事由の制限」等の文言が消え、単に[休職、解雇、退職、定年その他について適切な定めが必要]という表現になり、解雇権乱用への抑制姿勢が見られない。
5.文科省による大学統制システムの堅持
・『2.21版』の「国立大学間や学部等の再編・統合を大胆かつ積極的に進める」が公私立大学との連携・協力を謳った上で[各大学の枠を超えた再編・統合…]と変えられている。文科省主導による国公私立大学全体の再編統合が企図されていることを示している。
・[大学の枠を超えた幅広い人事交流が可能な仕組み]、[地域や分野・機能等に応じて国立大学間等の人事交流を促進するための協力体制・仕組みの整備]が謳われている。これは文科省が旧来通り大学職員管理を通じた大学統制システムを堅持しようとしていることを示している。「国立大学の連合組織」もこうした文脈で提起されていると思われる。
【開示2】文科省、国大協のスケジュール
3月下旬:7ブロック学長会議
3月26日:『最終報告案』を「賢人会」(文科相の私的諮問機関)に提出。了承後、レセプション(要するに"打ち上げパーティ"!)於:東京全日空ホテル(午後4:30?)
4月3日:国立大学学長会議(文科省主催)
4月12日:国大協理事会
4月19日:国大協臨時総会
【提言】
国大協をはじめ各大学は、通則法に基づく独法化には反対であると、繰り返し表明してきたはずである。現在提出されている『最終報告案』は我々が幾度となく指摘してきたように通則法そのものであり、加えて将来の民営化を睨んだ非公務員化が明記されている。今、この段階ではっきりと『最終報告案』を拒絶しないならば、上記スケジュールに従って独法化が決定されるであろう。しかし、いうまでもなく『最終報告案』はあくまで文科省の案であり、国立大学は自らの方向性を自主的に決定する歴史的責任がある。本学の磯野学長が2月評議会の確認を経て正式に要求された国大協臨時総会が4月19日に開催される。
1.各部局教授会、評議会は、『最終報告案』を分析・検討し、『最終報告』案には同意できない旨、議決すること。
2.磯野学長は(1)4月3日の国立大学学長会議で、「『最終報告』案に同意できない」との意志を表明すること(2)4月12日国大協理事会、19日臨時総会で、1)国大協として『最終報告』案を拒否し、独法化反対の意思を再確認すること。2)これまでの国大協総会の決定に反して『最終報告』案をまとめた長尾主査に国大協会長を辞職するよう求めること。

【開示3】理学部、文学部、『最終報告案』への懸念を表明
《理学部教授会2002.2.21》抜粋 理学部HP参照
1.国立大学法人制度における教職員の身分は、必ず公務員とすること。 教員については「教育公務員特例法」を現行どおり適用すること。
2.短期的かつ対症療法的な経済効率性の観点からではなく、今後の日本の高等教育のあり方の観点から、大学の自主性・自律性を尊重・高揚すべく、『中間報告』ならびに調査検討会議連絡調整委員会で提示された国立大学法人の制度設計を根本的に再検討すること。
《文学部・文学研究科将来構想委員会2002.2.28》抜粋 文学部HP参照
1.国立大学法人制度における教職員の身分は公務員とすること。教員については 「教育公務員特例法」を現行どおり適用すること。
2.きわめて短期的な経済効率性からではなく、今後の日本の高等教育のあり方を 考える観点から、国立大学法人の制度設計を再検討すること。 とくに以下の諸点は、検討しなおすべきであると考える。
(1) 学長選考方法について、選考は大学内部での投票を経ることを原則とすること。
(2)大学の運営方法について、大学の自主性・自律性が最大限尊重されるように構想し直すこと。
【案内】文部科学省を囲む「人間の鎖」
2002年3月22日(金), 成立目標時刻 12時30分
調査検討会議の「結論」の記者クラブメディアによる流布によって,事態がまた進んでしまいそうな時期を迎えています.このような時にはタイミング良く,メディアに取り上げられるように最大限に工夫をした取り組みが是非とも必要だと思います.そのような表現のパフォーマンスとして,「人間の鎖」を提案します.
 主催 国立大学独法化阻止全国ネットワーク
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html事務局長  豊島 耕一
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学長選挙制度の改革を
文科省調査検討会議『最終報告』案では、前記【開示・分析】で示したように教員投票に基礎をおく現行学長選挙制度を根底から覆そうとしている。しかも、同案では教職員の身分を非公務員化することが謳われており、現行学長選挙制度の法的の根拠=教特法(第4条)が失われようと している。文科省が学長選挙制度の事実上の廃止を企図している背景には、国家による統制強化の下での大学の企業化推進があることは明白であり、断じて認められない。しかし、現行の制度をそのまま守ればよいかというと決してそうではない。現行制度廃止論がその大きな根拠とする点、(1)現在の選挙制度で選ばれた学長は部局利害の代表者でしかない、(2)どういう方針・見解をもっているか明確でないまま行われる選挙は人気投票に過ぎない、については、こうした状況の存在を否定することはできない。問題は、こうした現状を『最終報告』案=独法化の方向で変えるのか、それとも大学自治の基礎条件の一つをなす学長選挙制度を大学自治の理念に適合したものに改革するのか、という点にある。
【開示】現行制度の概略 「千葉大学学長選考基準」(「基準」)、「千葉大学学長選考実施細則」(「実施細則」)
(1)定義
《選挙資格者》選挙資格を有する者(「基準」第3条、第4条)=学長、専任の教授、助教授、講師、助手(ただし、「実施細則」第3条第1項に該当する者を除く)
《学部等》各学部(医、薬を除く)、各研究部(研究院)、医学部付属病院、環境リモセン、真菌(「基準」第5条)
《センター等》社会文化科学研究科、自然科学研究科、分析センター、総合メディア、留学生センター、アイソトープ総合センター、外国語センター、共同研究推進センター、海洋バイオセンター、先進科学教育センター、遺伝子実験施設、保健管理センター(「基準」第5条)
(2)概要(2)概要
1)学長候補適任者の推薦受付 
・学部等又は選挙資格者が5名以上いるセンター等の推薦(「基準」第7条)
・推薦は推薦理由、被推薦者の経歴、業績等を添付した書面による(「実施細則」第7条)
2)学長候補適任者選定委員会による学長候補適任者の選定 (「基準」第5条)
・委員会の構成:学部等(ここでは医学部附属病院を除く)から選挙資格者の互選により各4名の委員を選出
・委員会は2名連記により上位7名を限度して学長候補適任者を選定
3)選挙資格者による単記無記名投票
【分析】問題点/検討すべき点
1.現行制度では、学長候補適任者推薦権が、「学部等」又は選挙資格者が5名以上いる「センター等」というように部局等にのみ与えられている。いうまでもなく、学長は、「学部等」や「センター等」などの、 いわゆる部局を越えて全学的見地から任務を遂行するものである。だとすると、学長候補適任者は部局横断的に推薦される方が制度上、合理的なのではないか。部局等の推薦制度をやめることは、学長候補適任者が推薦部局の利益代表という側面を刻印されないという点でも有効であろう。実際、相当数の大学が部局推薦制度をとっていない。
2.学長候補適任者選定委員の選出が学部等に限定され、さらに学部等のなかでも附属病院が除かれている。このため、「学部等」に属しながら特例的に排除されている附属病院142名(講師・助手が中心)、「センター等」に属している自然科学研究科71名をはじめ各センターの総計274名(2001.5.1現在の選挙資格者総数1252名の実に2割以上)が学長候補適任者選定委員選出権を与えられていない。
3.学長候補適任者選定委員会による被推薦者からの学長候補適任者の選定、さらに選定された候補者に対する投票のいずれの過程においても被推薦者、候補者の「政策」「方針」等判断材料の提示が十分ではない。
4.リコール規定がない。
5.教員以外の階層から意見を聞く仕組がない。
【提言】
1.基本視点
学長が全学的見地から正しくリーダーシップをとれるためには、選挙制度において、以下のような基本視点が重要であろう。
(1)学長候補適任者の推薦は、個別部局の意向を越えた全学的見地からなされなければならない。
(2)各学長候補適任者の政策が明確に提示され、選挙資格者がそれらを正しく判断できるようにする必要がある。
(3)選出された学長へのチェック機構が選挙制度の重要な構成要素として内包されなければならない。
2.具体的提言
現学長の任期が本年7月31日までであり、学長選挙は6月実施と考えられる。時間的制約を考慮して、根本的改革を視野に入れつつも、当面の改善案を提言する。
(1)学長候補適任者の推薦は、現行規定に加えて、一定数以上の選挙資格者によるもの(推薦責任者・推薦者の連名署名を付帯した推薦書類を提出)も可とする規定を付加する。一定数とは、例えば全選挙資格者の10分の1というのはいかがであろうか。このような付加は全学的見地からの学長選出に大きく寄与しよう。
(2)学長候補適任者選定委員の選出は、学長候補適任者推薦権を有するすべての組織によって行われるものとする。選出委員数については構成人数を考慮して決める。
(3)選挙資格者の正確な判断材料を提供するために、候補者の政策・方針を掲載した「公報」の作成、政策発表会、立会演説会等を行う。実施機関を何にするかについては、現在の学長選考が評議会の管理のもとで行われていることを考慮すると、評議会で検討すべきであろう。
(4)リコール制度を導入する。学長のリーダーシップの確立は、リコール制度という安全装置の存在によって保証される。具体案としては、全選挙資格者の過半数の請求で発議され、全選挙資格者の2/3以上の解任要求でリコールが成立する、というようなことが考えられよう。
(5)教員投票によって選ばれた学長候補に対して、学生、院生、職員によるなんらかの信任投票を実施する方向で検討を開始する。