トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学の独立行政法人化と、大学職員の「非公務員化」に反対する決議
   2002年2月26日       秋田大学教職員組合中央委員会
.
-----------------------------------------------------------------
当組合の中央委員会で以下のような決議をあげました。秋田大学の学長・部局調・
評議員レベルだけでなく、県内新聞社と、文部科学省、弘前大学・岩手大学学長・組
合に送付する予定です。

国立大学の独立行政法人化と、大学職員の「非公務員化」に反対する決議
 文部科学省に設置されている「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会
議」において検討が続けられているが、現状では、2年後の独立行政法人化が既定の
路線とされ、さらには職員の「非公務員化」が全体の方針となりつつある。
  これまで、秋大教職組は、全大教などの運動に呼応して、独立行政法人化された場
合の問題を指摘し、地方議会への請願行動、新聞への意見広告など、さまざまな反対
運動を重ねてきた。地方議会での請願採択は全県の3分の2に及び、当組合の主張へ
の賛同が大きく広がっている。
  現在議論されている独立行政法人の制度構想を見れば、独法化によって、大学の自
主性、自律性が拡大されるのではなく、逆に、中期計画、中期目標などを通じた国の
統制が強化されることは明らかである。上からの一方的な評価によって運営費交付金
が左右され、競争が強制される。一部は潤沢な大学が出るかもしれないが、大部分は
淘汰されていくことになるだろう。経費を毎年1%ずつ削減し、自己収入を1%ずつ
増やすことが強制され、最終的には民営化が強制されることになる。これは教育や研
究、医療に対する国の責任の放棄に他ならない。受益者負担、独立採算のもとに、授
業料や医療費が値上げされることになれば、教育や医療に対する国民の権利を侵害す
るとともに、地域社会の発展にとっても大きな打撃を与える。学問、科学自体も、流
行に影響され、基礎研究などが軽視されることで、長期的、総合的な発展が阻害され
ることになる。
  大学職員の「非公務員化」が急に浮上してきたが、これは職員の「首切り」に等し
い。公務員としての身分を失い、民間労働者として再雇用される点で、国鉄や電電公
社の例に似てくる。再雇用時点での差別選別の問題もさることながら、NTTが現在
進めている大規模なリストラのような状況が大学にもふりかかってきかねない。公務
員の身分に「拘泥」するから反対なのではなく、民間労働者における雇用の不安定さ
や、教育公務員特例法などに保障された教育、研究上の保障の消失が問題なのであ
る。大学職員の労働基本権、生活権に大きな影響を与える事項が、当事者である我々
に何の説明もないまま、議論も保障されないままに決定されようとしている。
 特に、教官以外の職員は多様な職場の中から大学を選んだにすぎない。その選択故
に公務員身分を失い、採用試験等での合格・採用の事実が無効化されるとすれば、法
の下の平等にも反する。また、教育文化学部附属学校の教官の場合、公立学校との交
流人事が行われており、公務員身分が失われることになれば、交流人事の前提が崩れ
ることになる。
  秋田大学教職員組合は、独立行政法人化と職員の「非公務員化」に反対するととも
に、大学当局に対し、我々と同じ立場に立って反対していくことを求めるものであ
る。
                                             2002年2月26日
                                             秋田大学教職員組合中央委員会

北東北3大学の統合問題に関する決議
 懇談会が設置され、大学のトップレベルで統合を視野に入れた協議が開始されてい
る。従来のような協力関係を築くことは重要だが、統合となれば、話は別である。多
くの場合、統合は、同じ県内の総合大学と医科大学との間で進められている。県域を
越えている例では埼玉大学と群馬大学の例があるが、北東北の場合は地理的に大きく
離れており、さらに、ほとんどの学部が重なっている。このような大学間の統合にメ
リットはあるのかどうか。メリットがあるとすれば、重なりを整理するというリスト
ラが可能であることしか考えられない。重なった学部をいずれかの大学キャンパスに
集中させることもありうるだろう。そうなれば、機能を縮小された県の「分校」では
十分な教育、研究を行えなくなり、その地域の学生は大きなハンディを背負うことに
なる。
  規模を拡大しなければ、生き残れない、他大学との競争に勝ち残れないと考えられ
ているようだが、いたずらに大きな組織は、逆に機動性を損なうことになる。一見
「無駄」と見えるようなことが、学問の発展には必要なのである。
  3大学の統合が、秋田大学部分の整理縮小を伴うものである場合、教職員の大学間
移動を伴うものである場合、秋田大学部分の自主性、自律性が損なわれ、集権的な統
制が及ぶ場合、秋大教職組としては、統合に対し強く反対せざるをえない。
  また、教員養成学部の統廃合問題については、各地域に小学校教員養成機能が残さ
れることを前提とした上で、各地の教員養成学部の創意をいかした改革が保障される
べきであり、文科省や、3大学トップの思惑で改廃が行われることに強く反対する。
                                             2002年2月26日
                                             秋田大学教職員組合中央委員会

秋田大学基本構想問題に関する決議
  大学を取り巻く状況が厳しくなっているときだけに、秋田大学は、大学人としての
知性を発揮し、この難局を乗り切っていくべき、重大な責務を負っている。ところ
が、公表されている基本構想(案)は、その文章表現そのものから、大学人としての
見識を疑われるような内容になっていることに深い失望をおぼえる。基本テーマであ
る、『「環境」と「共生」』にしても、どのような理由で選び取られたのか、具体的
な方策として挙げられているものとどのような関係があるのか、まったく読みとるこ
とができない。
  適正な評価と競争的環境が、むしろ中心テーマに座っているとしか思えないが、こ
れでは政府の「構造改革」路線の請け売りに過ぎない。巷間、日本では競争が足りな
いと言われるが、実際には労働現場を含めて、過度の競争にさらされてきたことは、
国際比較を通しても明らかである。バブル期の異常な経済活動が今日の事態をもたら
しているにも関わらず、さらなる競争の激化、「痛み」の押しつけによって今日の不
況を乗り切ろうとすることは、本末転倒である。今日必要なことは未来への希望と、
現在の安心ではないだろうか。
 基本構想案の中で、最も大きな問題は、評価と教育・研究資源の配分とを結びつけ
ていることである。従来の裁量経費は「申し込み・審査」制であった。これでも、最
低限必要な教育研究経費が圧迫される点で、問題があるわけだが、今回提示されてい
る案では、「申し込み」云々ではなく、教員を丸ごと評価して、最初から配分に差を
つけようとしている。最低必要限度が保障されるのかも不分明であり、「不適格」と
判定されれば、「日干し」にされることもあり得る。教員に限らず、関係する職員
や、学生、院生にまで及ぶ重大な問題に発展する。職員に対しては雇用保障、身分保
障、学生・院生に対しては教育保障の点で、法的な責任を問われる事態も予測され
る。
 適正な評価が必要であることは確かだが、「悪いところを切り捨てる」ような発想
は、西洋的な外科手術のようなもので、全体を健康体にすることはできない。問題の
あるところにテコ入れすること、改善の手だてを十分に尽くすことが求められる。
 また、「秋田大学評価センター」が「強権的」「生殺与奪的」な機関となり、学部
の上に「君臨」することに対しても、大きな危険を感じる。評価には関わっても、配
分には関わるべきではない。学長のリーダーシップは、その見識の高さによって発揮
されるべきであり、上からの権力的な統制によって果たされるべきではない。
 教官の任期制も、上と同様、危険性が大きい。教職員の身分、労働条件に関わるこ
とについては慎重であるべきであり、人事院登録の職員団体たる当組合の意見を聞く
べきである。制度設計にもよるが、スランプや病気も許されず、家族との団らんや、
自らの健康を犠牲にするような「競争」が強制されるようなことは、労働者の基本的
な生活権を奪うことになる。そのような過酷な環境は、弱者を追い込むとともに、組
織全体の活力、相互扶助・連携を損なうことになる。
 テニュアの保障が大学にとって優秀な研究者を確保するための手だてであり、長期
的に一つの大学に在職することによって、始めてその地域社会、その大学のために
「奉仕」する意欲がわいてくるのである。いつでも、機会さえあればより条件のいい
ところに「脱出」しようとする者ばかりとなれば、組織の体をなさないことになる。
何よりも、日本において、任期後に他に移れるような、大学教員にとっての労働市場
は存在していない。
  当組合は、この基本構想(案)に対して反対するとともに、抜本的な書き換えを要
求するものである。そして、基本構想策定に際しては、大学構成員全体の声を反映さ
せるための手だてを尽くすこと、懇談会等での「聞きっぱなし」を是正することを強
く求めるものである。
                                             2002年2月26日
                                             秋田大学教職員組合中央委員会