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☆教育21 第4部・変わる大学   医科大・島根大の統合協議 
. [he-forum 3498] 読売新聞島根版02/22
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『読売新聞』島根版  2002年2月22日付

教育21 第4部・変わる大学

 医科大・島根大の統合協議 

 文部科学省が昨年六月に公表した「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)
で、医科大などの単科大が統合対象にあがった。これを受けて、全国にある国
立医科大で、近接の大学との統合の動きが加速、島根医科大(出雲市)も例外
ではなかった。十月、同大学で行われた島根大との統合協議合意の調印式で、
両大学長が「新たな研究分野の創出など、地域社会のさらなる発展に貢献でき
る大学を創設したい」と共同コメントを読み上げ、来年十月の統合を目指した
協議が始まった。
 
 描けるか将来ビジョン

 同省の改革方針を毎月の教授会などで報告していた島根医科大の下山誠学長
は「それまで話もなかった統合が、遠山プランをきっかけに急速に動き出した。
プランを真摯(しんし)に受け止めなかったら大変なことになる。統合以外に
選択肢はなかった」と振り返る。プランの公表から半年足らずでの合意は大学
再編の流れを反映したものだった。

 統合協議では、遺伝子分野で両大学の共同研究施設を設置することなども検
討されており、研究の幅が広がるメリットが指摘される一方で、両大学が約四
十キロ離れていることなどに「統合が組織運営の弱体化につながるのでは」と
の不安の声も上がっている。


 出雲市乙立地区は市内一の高齢化率(29・64%)だが、常駐医師がいな
い。このため、同大学は週四回、医師を派遣するなど地域医療にも貢献してき
た。付属病院は県内で唯一、高度な医療を提供・開発する「特定機能病院」の
指定を受けている。昨年四月に医学分野単独では全国初の産官学連携の施設と
して「地域医学共同研究センター」を設置するなど県医療の中核を担う存在だ。

 組織弱体化を自治体が懸念

 大学統合によって医科大の独自性や研究費の削減などを心配する声もある。
出雲市議会は「再編統合が医科大の弱体化を招くとすれば大きな問題だ」とし
て昨年八月に支援協議会を作った。市も十月に研究会を設置、今春には出雲商
工会議所やJAも加わった官民一体の支援協議会を発足させる予定だ。

 市総務課の後藤政司課長も「将来的には二次再編で鳥取大医学部と統合され
るといったうわさも一部であった。医科大は市にとって欠かせない。統合でも
医科大が有利になるように物心両面で支援をしていきたい」と話す。


 現在の大学では、複数のキャンパスがあっても教養教育や管理運営はほとん
ど一元的に行われており、統合が“吸収”のイメージにつながる一因にもなっ
ている。こうした懸念に対し、下山学長は「医科大の機能などは統合後も従来
通りだ」と強調する。

 学部単位で独自に運営されているアメリカなどの大学を例に「医学には医学
に必要な教養教育があり、どの学部も同じといったシステムは問題。対等の立
場で統合する以上カラーを出して行くべきで、そうすれば研究などの連携もお
のずと進む」という。統合後も医学部の教養教育科目や時間数などはあくまで
医科大側で決め、受講場所もできるだけ現キャンパスで行うべきとの考えを示
す。

 統合協議会では、本部機能を島根大に置くことにほぼ合意したが、「学部ご
とに独自性を発揮し、切磋琢磨(せっさたくま)していくのが目指す姿。大学
統合のモデルを作り出したい」と下山学長は言う。


 統合の基本骨格は今春にまとまる予定だ。遠山プランを受けて、にわかに進
んだ“駆け込み”統合協議だが、両大学の歴史など様々な課題も山積する。生
き残りのカギはどのような将来的ビジョンを示すかにある。