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独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育21 第4部・変わる大学    教育系大・学部の統廃合
[he-forum 3497] 読売新聞島根版02/20.
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『読売新聞』島根版  2002年2月20日付

教育21 第4部・変わる大学

教育系大・学部の統廃合 

 島根大の泉五郎教育学部長らが今月一日、県の山崎悠雄教育長を訪れ、教員
養成系大・学部の再編成を巡る文部科学省のヒアリングへの回答内容を説明し
た。大学側は同省に存続の方針を伝え、その構想案を作成していると話した。

 その場で、同案作成チームの森本直人教授は「存続には地元がどれだけ教員
を採用するかが大切だ」と県の協力を求めたが、山崎教育長は存続の必要性に
理解を示しながら、採用拡大には「できれば多く採用したいが、少子化を考え
ると…」と表情を曇らせた。

 「地元で先生」減る一方

 同省の有識者懇談会が昨年まとめた報告によると、教員養成系大・学部の教
員就職率は少子化の影響で二〇〇〇年度には33・7%に落ち込んでいる。一
方で、教育系学部は学生に対する教員数が多いとの指摘がある。小学校、中学
校十教科、幼稚園、特殊教育と専門分野が詳細に分かれており、教員免許の取
得に対応しようとすれば、最低でも百人程度の教官が必要になるという。これ
に対し、教育系学部は定員二百人以下の大学が全体の三分の二を占める。報告
では、こうした実情をふまえ、複数の都道府県を単位とした再編統合を行うよ
う提言している。

 存続へ改革の道筋追求

 県内の小中高・特殊学校の教員約七千六百人の半数近くが島根大出身だが、
少子化や学校統廃合の影響で県の採用数も減少。二〇〇二年度の採用試験合格
者数は九十六人と百人を切った。同大学の教員養成課程卒業生の教員就職率も
二〇〇〇年度は21・3%で全国四十七位、昨年度は28・4%で四十二位。
同省のヒアリングでも「地元に就職の場がないのでは」との指摘を受けた。

 有識懇の報告を受け島根大と鳥取大が懇談会を設けた。両大学は「山陰に一
つは教員養成学部が必要」との認識で一致したが、鳥取大は「現状維持」、島
根大は「わが大学に」と主張、議論はこれからだ。また同課程定員は島根大が
百人、鳥取大は全国最少の七十人で、厳しい状況に変わりはない。しかし、森
本教授は「地元の需要が少ないから統合するというのなら、地方切り捨てだ」
と反論する。

 県も昨年十二月、江口博晴副知事らが島根大を訪れ、教育学部の存続を要望
した。県では約三分の一の小学校に複式学級があり、その教育方法も大学の研
究に負うところが大きい。同学部付属小には複式学級が設置され、一九七九年
には「複式教育研究センター」(現・教育臨床総合研究センター)も開設。様々
な研究や助言を行い、県独自の指導法確立に貢献してきた。山崎教育長も「地
域事情も理解してほしい」と訴え、今後文科省に存続を要望することも検討し
ている。


 一方、教育学部の現状については森本教授も「『総合的な学習の時間』や不
登校など、現場のニーズに十分応えきれていない」と認める。大学院に生活科
(従来の小学校一・二年の理科・社会科)研究室がないため、同科の現職教員
の研修に対応しきれないなどの例もあったという。その反省から構想案では、
現職教員の研修機会の拡大を含めた大学院教育の抜本的改革を検討。地域との
連携強化も柱の一つにすえ、連携学校現場での半年―一年程度のインターンシッ
プ制度導入も模索。県の教員は四十歳前後が多い年齢構成になっていることか
ら、「バランスの取れた構成にすべき」と若手の採用拡大にも期待を寄せる。

 構想に先んじ同学部は昨年十二月、松江、宍道、加茂の三市町と、全国でも
珍しい共同研究などの推進をうたった覚書を結んだ。その際、各教育長からは
「教育過疎を作らないためにも教育学部は必要だ」との声が相次いだ。地元の
期待は大きいが、過疎・少子化に歯止めはかからない。泉学部長は「現状のま
まで残るのは無理。我々は、今の教育的課題に答えることができる改革を示す
しかない」と力を込める。