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☆[埼玉の100人]/95 埼玉大学長・兵藤さん
 
.[he-forum 3446] 毎日新聞埼玉版02/17
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『毎日新聞』埼玉版  2002年2月17日付

[埼玉の100人]/95 埼玉大学長・兵藤さん


 ◇変革時代のかじ取り役

 「大学改革の狙いは、国際的な研究体制を整えることにある。単に統合・再
編を目指すのではなく、二つの大学のいい部分を補うことで本当の意味での総
合大学へと飛躍できるはず」

 1月24日に東京都内で行われた埼玉大・群馬大学長懇談会。赤岩英夫・群
馬大学長と並んだ会見で、落ち着いた口調で統合・再編構想のメリットを語っ
た。

 かつて「国立大2期校の雄」と呼ばれた埼玉大。しかし、独立行政法人化な
ど国立大学改革の流れに乗り遅れ気味で、「このままでは地方大学として埋没
する」との懸念が学内外で強まっている。そうした時代に、かじ取り役として
重責を担う。

 「今のままでは『トップ30』を狙うのは難しいかもしれない」と同大の現
状を指摘。「冷戦終結や市場経済の浸透など、現代社会は100年単位の大変
革期を迎えている。大学の力量を高めて、変革の時代に立ち向かうことが求め
られている」と強調する。

 専門は労使関係論。1953年に東京大経済学部に入学して近代日本の労働
組合論などを学び、卒業後は大学院に進学した。

 戦後の混乱期から朝鮮戦争を経て復興に向かう時代。各地で労働争議が起こ
り、原水爆禁止運動など社会運動も活発だった。「社会の変革に貢献したい」
と学究を志し、元同大学長の故・大河内一男教授に師事した。「若い学生にとっ
て大河内先生は雲の上の存在。しかし、そうした『高い山』のような先生の理
論を乗り越えることが若い私たちの目標だった」

 大学院修了後、東京大経済学部、埼玉大経済学部で研究者として過ごし、労
使関係や社会政策の研究に没頭する。97年には、研究生活の中間決算として
著書「労働の戦後史」(東京大学出版会)を刊行した。

 98年3月、周囲から推されて埼玉大学長選に当選。4月に第9代学長に就
任した。昨年末の学長選では再選を果たし、4月以降も引き続いて2年間、大
学トップとして改革に取り組む。

 大学改革に対する多様な意見の表れか、決選投票では田隅三生・理学部長と
6票の僅差(きんさ)。学内の支持基盤は盤石ではない。「何もこんな大変な
時代に学長を引き受けなくてもと思うこともありますが、これも巡り合わせ。
改革を避けることはできない」と自らを鼓舞する。

 同大はここ数年、JR東京駅近くに開いたステーションカレッジで社会人向
け大学院教育や、理化学研究所(和光市)との共同研究など、地域の研究・教
育機関としての取り組みを着実に実らせてきた。「今後も各学部や教官の協力
を得ながら、大学の将来像を確かなものにしたい」

 学長にならなければ、4年前の著作の続編として「労働の世界史」をテーマ
に本を執筆する計画だった。しかし「研究はお預けです。今は目の前の難題に
取り組むことがすべて」。当分の間は、慌ただしい毎日を送ることを覚悟して
いる。【加藤潔】

 ◆プロフィル

 ◇ひょうどう・つとむ 1933年愛知県生まれ。東京大大学院修了。同大
経済学部教授を経て同大名誉教授。94〜98年、埼玉大経済学部教授。主な
著書に「日本における労資関係の展開」(東京大学出版会)、「地域社会と労
働組合」(共編著、日本経済評論社)など。