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☆教育学部再編/島大と鳥大がどう連携するか
 
[he-forum 3444] 山陰中央新報社説02/18.
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『山陰中央新報』社説  2002年2月18日付

教育学部再編/島大と鳥大がどう連携するか


 国立大学教育学部の再編・統合計画に伴い、山陰両県では島根大学教育学部
と鳥取大学教育地域科学部の存廃問題が浮上している。文部科学省の再編方針
では、小規模の教員養成学部を統合し、一定の学生定員数以上の規模に再編す
る。

 その際、現在の一県一学部体制を見直して、近隣の府県で一つの学部に統合
する考え方が示されている。

 この再編方針を当てはめると、両大学とも現状のままでは教員養成学部の存
続が困難になるため、双方の間で学部改変に向けて協議を開始した。

 今回の再編の背景には、少子化に伴う教員の採用減がある。山陰両県では特
にその傾向が著しく、地元の教員養成の役割を担ってきた両大学でも教員への
就職率が落ちている。

 教育学部は教員を養成するのが目的であり、少子化に伴って教員の需要が減
れば、その供給の在り方を見直すのは時代の流れとも言える。

 しかし両大学とも旧師範学校以来の伝統を持ち、地域とのかかわりが深い。
地元の高校生にとっても進路選択の重要な受け皿となっている。再編に伴って
教育学部がなくなると、地域の教員を地域で養成できなくなる。

 そのニーズが薄れているのだから、教育学部がなくなっても仕方がない、と
いうのが文科省の言い分だが、教育を考える上ではプラグマティック(道具主
義的)なにおいが強過ぎるのではないか。

 再編の方向は避けられないとしても、地域の実情をどう反映させていくかと
いう視点を失わないでほしい。

 全国的な教員の採用減に対し、各大学とも教員養成の定員枠を削減する一方
で、同じ教育学部の中に教員免許を取得しなくても卒業できるコースを新設し
て、学部としての定員を維持してきた。教育を看板としながら、中身は教員養
成という本来の趣旨が薄れつつあるのが実情だ。

 そのことが教育学部の性格をあいまいにしている。卒業に教員免許を必要と
しない、いわゆるゼロ免課程を導入、拡大する一方で本来の教員養成課程は規
模縮小を余儀なくされている。

 文科省はそこを改革しようとしている。現在のように細分化された小規模の
教員養成課程では十分な教育を期待できないとして、ゼロ免課程の分離を含め
た学部の再編統合を打ち出した。

 これに対し、島根大、鳥取大とも現在の学部存続を目指す方針を明らかにし
ている。島根大では生涯学習、生活環境福祉の二つのゼロ免課程を廃止し、教
員養成課程に絞って存続させることを決議した。 

 一方、鳥取大は現在の学部を、教員養成に地域科学などを加えた複合学部と
位置付けている。教員養成課程を残しながら、現在の学部を発展させる形で存
続させたいとしている。

 しかし、ともに教員養成課程を残しながら、学部を存続させていくことが可
能かどうか。島根大は鳥取大の教員養成も担いたいとの意向を示していたが、
両大学の協議でどちらか一方が吸収する方向は否定された。

 小規模な両大学の教員養成課程を、統合を伴わずに残せるかどうか。文科省
の評価に堪え得るためにも、地域に対する両大学の存在感が問われている。