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No.13 |
特集:独法化による非公務員化・民営化 |
2002.2.15独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
非公務員化の重大局面!独法化は大学民営化への準備
国立大学独法化問題は、文科省調査検討会議連絡調整委員会が国立大学教職員の非公務員化へ急速に傾斜するなかで重大な局面を迎えている(開示・分析1、3)。そして非公務員化の先は民営化の道が提示されている(開示・分析2)。国立大学独法化は当初の行革の文脈にとどまらず、経済・財政における利潤追求手段の極大化と市場原理主義を目指す小泉「構造改革」の重要な一翼に変貌しつつある。すなわち、「構造改革」に寄与する大学民営化の準備のために非公務員化とセットなった独法化が強行されようとしている。連絡調整委員会は、今後、2月21日、3月6日に開催される。3月6日には、最終報告の議論が行われる予定であり、この2月は大学の将来を左右する重大な時となる(開示4)。
【開示1】文科省調査検討会議連絡調整委員会第5回会議(1月25日):
非公務員化が新しい重大論点へ
会議提出資料は、http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-ren.htm
【分析1】
○職員身分: これについては、非公務員化への決定的な変更が行われようとしている。1月25日の連絡調整委員会では、提出された意見資料(資料3を参照)を含め、会議でも非公務員型を主張する勢力が圧倒的であったと言われる。この会議の直前の1月22日に、経団連は規制改革に関する意見書
(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/004.html)をまとめているが、そこでも「国立大学を独立行政法人化する際は、非公務員型を導入すべきである」とし、それが産学連携のためであると明確に述べている。1999年に有馬元文相は「公務員型なら」と政策転換をした理由を説明したが、ことここに至って「非公務員型」が前提とされようとしている。
○運営組織: 中間報告におけるB案、C案のあいだにバリエーション(案の1)、バリエーション(案の2)を設けている。基本的には経営(運営協議会)と教学(評議会)を分離し、学外者を含む「役員会」を必ず置くものとし、その「議決を経る」のか、大学の判断で「役員会」を置きその「議決を経る」のか、が二つの「バリエーション」を分かつ論点となっている。昨年の国大協臨時総会などでは、経営と教学の一致という国大協の従来の方針を変更して経営と教学の分離を採用することへの慎重論が相次いだ。今回の連絡調整委員会の議論は、これを無にするものである。
○中期目標: この点についてはA案(文部科学大臣が作成主体)、B案(大学が作成主体で、大臣が認可)が選択肢となっている。通則法のスキームとは異なると主張されてはいるが、A案、B案いずれの場合も、通則法の基本的サイクルを変更するものではない。ここでも大学の主体的決定の可否が問われている。
【開示2】閣議決定「構造改革と経済財政の中期展望」(1月25日)
“国立大学の民営化を目指す”ことを明確化
全文は、http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2002/0125tenbou.html 。以下は、抜粋。
活力に富み国際競争力のある大学づくりの一環として、国立大学の再編・統合を促進する。国立大学を早期に法人化して自主性を高めるとともに民営化及び非公務員化を含め民間的発想の経営手法を導入することを目指す。大学教育に対する公的支援については、競争原理を導入するとともに、第三者評価による重点支援を通じて、世界最高水準の大学を育成する。同時に、質の高い教育研究活動のため、継続的な第三者による評価認証制度の導入、時代の変化等に対応した柔軟な大学設置等の促進、国立大学の法人化に伴う大学事務のアウトソーシングの促進などの規制改革を推進する。また、寄付金、受託研究等の扱いが公私の大学で相互に競争的になるようにすることを検討する。
【分析2】
「国立大学の再編・統合を促進」し、「国立大学を早期に法人化」し、「民営化及び非公務員化を含め民間的発想の経営手法を導入」することを求めていることに注目しなければならない。そこでは、国立大学の「民営化及び非公務員化」がうたわれるとともに、「国立大学の法人化に伴う大学事務のアウトソーシングの促進」が求められている。これは、教員だけでなく、事務職員を含めた一括非公務員化(および今後の民営化)を計画したものに他ならない。
【開示3】文科省調査検討会議連絡調整委員会第6回会議(2月7日)
雇用形態の全面的変更を打ち出す
会議提出資料は、http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-ren.htm
【分析3】職員身分について「非公務員型」を前提として、対応すべき問題点が議論されている。注目すべきは、文科省が「非公務員化」によって達成すべき目標が列挙されている点である。・印は委員会資料、#印は分析・コメントを示す。
○多様な雇用形態
・短時間勤務職員を含む多様な雇用形態
・テニュア付職員、それ以外の任期付職員等
#非常勤、短期、時間雇用職員の拡大、任期制などを通じて、不安定雇用を増やすことを意味する。
○多様な給与体系(処遇)
・多様な種類の職員に応じた多様な給与、手当等の処遇体系
・優れた成果、業績を挙げた者、挙げようとする者へのそれに応じた処遇
#給与格差の拡大と、業績主義賃金の導入を意図している。給与の原資については全くふれていない。
○採用
・今後の法人経営・展開に真に必要な人材の採用
・外国、民間等からの専門的知識・技能等を重視した採用
#採用の「柔軟化」については、もっぱら経営者の採用を意図している。
○任期制の導入
・大学教員任期法による三類型を離れた任期制の導入が可能に
#任期制の全面的導入が企図されている。
○定員管理
・常勤職員(実員)数の国会報告がなく、法人の自己努力等による職員の採用がより弾力的に
#運営費交付金において人件費と事業費は厳格に区別されており、定員抑制方向の圧力に変わりはない。
○国家公務員倫理法
・例えば利害関係者と行為の態様との組み合わせにより企業関係者との懇談等もより自由に
#語るに落ちた、とはこのことか。文科省調査検討会議の倫理観とはこのようなものなのか。
○勤務評定
・勤務評定の手続き、評定要素等、その結果に応じた研修、処遇への反映などの措置に関して、法人のポリシーにより弾力的な設計が可能に
#教員を含めて勤務評定の全面的導入が主張されている。
【開示4】国立大学の教職員組合委員長(2月14日現在19大学)連名の2月6日付要請文(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/020202monkayousei.htm)
国立大学職員の「非公務員化」に反対する
1.連絡調整委員会に提出された資料「法人化後の職員の身分に関する主な意見」について
去る1月25日の調査検討会議連絡調整委員会に提出された資料「法人化後の職員の身分に関する主な意見」は、経済財政諮問会議、総合規制改革会議などの政府関係の機関、経済団体連合会、政党、新聞社説など「非公務員型又はそれに近い主張」を多数掲載する反面、「公務員型を主張するもの」として全大教(全国大学高専教職員組合)の意見1件を掲載するにすぎない。こうした資料の編集は、明らかに「非公務員化」の主張に傾いたバイアスを含むものであり、委員会における議論を誘導するものと言わざるをえない。これは、これまでの議論の経緯からすればきわめて不当である。調査検討会議の「中間報告」においても3つの意見が同等またはそれに近いウェイトで存在することが示されており、また国大協(国立大学協会)が公務員型を支持する立場をとってきたことは周知のところである。
2.大学職員の意見を聴く必要がある
国立大学の職員は、公務員としてその職業生活を開始し、公務員としての地位が保障されることを当然の前提として勤務に精励してきた。大学職員の大多数は、今でもそうした地位が維持されることを信じている。そうした公務員としての地位が一方的に変更されることをほとんどすべての職員が容認しないであろうことは、わたしたちの行なっている調査などからも明らかである。
「公務員型」とするか、「非公務員型」とするかのもっとも根本的な問題は、「身分保障」である。法律上の「身分保障」があるか、これを失うかということは、職員にとってはその全職業生活にかかわる重大な問題である。こうした、職業生活、雇用の基本にかかわる問題を、当事者である職員の意見を聴くことなく一方的に決定することは、信義に反する。とうてい許されることではない。大学教職員の身分は公務員であるべきである。
それにもかかわらず、職員の意見を聴くことなく、一方的に、非公務員化の措置を決定するならば、大学の職場において雇用不安が広がり、日常の教育・研究業務の質も低下することになるであろう。文部科学省および調査検討会議は、最終報告を決定する前に、全大教ほかの大学教職員の職員組合との誠意ある交渉を行なうべきである。
3.公務員身分は「学問の自由」を保障するためにも必要である
国立大学教職員を非公務員にした場合には、教特法の教員に関する身分保障が適用されなくなる。教特法の規定が「学問の自由」を守るために、歴史的な経験に基づいて定められたことは言うまでもない。「学問の自由」は、大学における自由で創造的な教育・研究を発展させるための制度的な保障であり、これが大学の研究・教育活動にとって不可欠のものであることは今日でもまったく変わらない。
本来、「学問の自由」にとっては、私立大学にも同様の法的保障がなされるべきであるが、教特法の規定は事実上の規範としてこれまで私立大学にも及んでいた。国立大学について「非公務員化」することによって教特法の規定が意味を失うことになれば、それは、国公私立のすべての大学における教育研究の自由を脅かすことになりかねない。
「学問の自由」を守るためにも、公務員身分を維持しなければならない。
4.大学の再編淘汰の道具にしてはならない
前述の資料にある「非公務員型」を主張する意見の多くは、民間企業との研究協力や大学教員の兼職・兼業を可能にするために非公務員化が必要だと主張している。しかし、企業との研究協力や兼職は現行制度の下においてもすでに広く行なわれており、まして公務員制度改革がなされるならそうした問題はほとんど解消するであろう。現在主張されている非公務員化のねらいは、むしろ別のところにある。
「国立大学も非公務員型にして」「自然淘汰するのがいい」(尾身科学技術担当相、朝日新聞2001年12月17日)という発言に示されるように、国立大学を民営化または民営に近い形にすることによって、再編淘汰の手段にするというのが、今日の非公務員化の真のねらいである。こうした主張は、私立大学も含めた大学の社会的、公共的な性格を見失った誤った議論であり、高等教育と学問研究のバランスのある発展を阻害するものである。地域の発展、国民の高等教育への欲求、科学研究の発展といった見地からすれば、市場競争によって大学を淘汰するというような議論に組することはできない。
「非公務員化」をこのような大学の再編淘汰の道具にしてはならないのである。
以上の理由により、私たちは、調査検討会議に対して、以下のことを要求する。
1.国立大学職員の身分に関して、公務員身分を維持すること。
2.当事者である国立大学教職員の意見を聞くこと。
【提言】
非公務員化も独法化もいわんや民営化も未だ決定された訳ではない。大学で働く者は、時流に流されず、社会と歴史から大学に付託された任務を果たすために行動しよう。
1. 部局教授会は、独行法をめぐる情勢を【開示1】【開示2】【開示3】ならびにその原資料等に基づいて議論し、教育公務員特例法の堅持の必要性を広く社会に訴えるとともに、非公務員化と民営化に繋がる独法化について改めて反対の意志表示をするべきである。
2. 千葉大学学長は、文科省調査検討会議に対して、“『最終報告』の3月6日とりまとめを行わず、非公務員化問題について大学側の意見を広く聞く場を設けよ”と要求するべきである。
3. 千葉大学学長は、非公務員化と民営化に至る独法化を阻止するために、臨時国大協総会の開催を要求するべきである。
4. 安定した雇用関係のなかではじめて大学に課せられた任務を遂行できる。従って、大学教職員一人一人が、非公務員化を通じた雇用の不安定化と解雇の容易化に反対する必要がある。