☆国大協会長への質問--連名募集(2月18日締切り)
.[he-forum 3430] 国大協会長への質問--連名募集
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佐賀大学/全国ネットの豊島です.
国大協の長尾会長宛の質問書を作りました.「独法化阻止全国ネット」の世話人で
文案を作ったものです.同様の疑問をお持ちの方は,連名という形で提出したいと
思いますので,氏名と大学名を豊島までお知らせ下さい.国大協会則28条を引用し
ていますので,国立大学教職員の方に限定したいと思います.公開質問書ですので,
連名者の所属・氏名も公表します.提出時のわずかな字句等の修正は予めお認め下さ
い.
国立大学教職員の方へ質問書への連名をお願いします.募集期限は,集まり具合に
もよりますが,いちおう2月18日(月)正午と致します.
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国立大学協会会長
長尾真様
佐賀大学 豊島耕一(代表)
xx大学 ○○○○
△△大学 □□□□
・・・・・・・・・
会長におかれましては,国立大学の将来のために日々ご尽力いただいていることと
拝察し,感謝申し上げます.
ただ今,文部科学省に於ける「国立大学法人」案の検討が最終段階にさしかかって
おりますが,この間国大協と貴職がとってこられた方針,態度には然しながら重大な
疑問があります.国大協会則28条は会員が協会に対し意見を述べる権利を認めてお
りますが,そのためには明確な情報が不可欠です.そこで以下の項目に是非ともお答
えいただき,国立大学教職員によるこの問題の十分な理解とそれを踏まえての議論を
可能にしていただくよう,心よりお願い致します.
はなはだ勝手ながら,3月5日までに部分的に項目1だけでもご回答をいただけれ
ば幸いです.なお内容の性格上,公開の質問書とさせていただきます.
1.「中期目標」「中期計画」の行政による「認可」がやむを得ないとする理由を明
らかにして下さい.
独立行政法人制度の設計に深く関わったとされる藤田宙靖氏は,「中期目標」とい
う制度について,「この制度をそのままに大学に適用したとするならば,大学の自治
に対する著しい制約ともなりかねない」と述べています(注1).しかし先に貴協会
が文部科学省の調査検討会議に提出された「意見」には,「法令・予算措置という国
の行為を伴う以上は,文部科学大臣による各大学の『中期目標』『中期計画』の『認
可』はやむをえない」とあります.これはいかなる理由によるものですか.
すなわち,「政府の関与」という点では,会計検査院による検査(注2)や視学制
度がすでに存在していますが,これでは不足である理由,「大学の自治」を「著しく
制約」しかねないような制度をことさら導入しなければならない理由を明確にして下
さい.
2.前項目のような「認可」制度をとっている国があれば例示して下さい.
同じく貴協会の「意見」には,「そもそも個々の大学の中期的な目標を大臣が『策
定』するような国はないのではなかろうか」として,「認可」制を主張しています.
しかし「国立学校財務センター」が2000年に出した報告書(注3)によると,そも
そも「認可」制度自体をとっている国もないとされています.貴職の認識はこれとは
異なるのでしょうか.
3.調査検討会議に参加した2000年6月の時点では,国大協は法人化そのものにも
保留の態度でしたが,これがいつどのような理由で「法人化」容認に変わったのかを
明らかにして下さい.
蓮実前会長の2000年6月14日の記者会見では,「理想的な法人化を目指すために
参加するという理解で良いのか」との質問に,「かならずしも,そこまでいくのかも
わかりません.(中略)最終的にまったく理想的な形態がそこに成立しなければその
後新たな問題が起こるだろうというふうに考えます.」と答え,「法人化」そのもの
にも保留の態度を表明していました.しかし調査検討会議への国大協の意見に見られ
るように,現在では「法人化」容認の態度と考えられます.「理想的な形態がそこに
成立」したのでしょうか.
4.「通則法にもとずく法人化に反対」とは,具体的に通則法のどこに反対なのかを
明確にして下さい.
この表現の意味がもし「通則法と一字一句でも違えばよい」ということではないと
すれば,通則法のどのような内容に反対なのかを明確にしていただきたい.私たちの
見解では,調査検討会議の「中間報告」による法人化は,通則法の,あるいはそもそ
もこの制度を定義している「中央省庁改革基本法」(注4)の独立行政法人制度と本
質的な違いはないと見ています.貴職は何を本質的な違いと見ておられるのでしょう
か.
5.文部科学省内に置かれ,文部科学省が委員の人選を行う「国立大学法人評価委員
会」は,到底,文部科学省からの独立性を保証するものではありません.そのような
機関によって大学が評価され,その結果に基づき運営交付金の額が設定される仕組み
では,大学の教育・研究活動全般への行政の介入を防ぐことはできません.もしこれ
を認めるのであれば,法人化後のこのようなリスクを防ぐ具体的な方策を例示してく
ださい.
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最後に,質問の趣旨などについて十分ご理解いただけるよう,独法化問題について
の私たちの見方を述べさせていただきます.
現在,国立大学の法人化にむけて文部科学省の調査検討会議において最終的な審議
が行われています.
私たちが,中間報告の「法人化」に対して抱く最大の危惧は,それが憲法の保障す
る学問の自由を根底から脅かすものでないかということです.「学問の自由」の意義
は自明なものではなく,人類が多年にわたる苦い経験を経てその価値を認識するに至っ
たものです.わが国においても半世紀前,大学が時の権力の支配下におかれたときに,
人類的視野に立つ普遍的な洞察を使命とする大学の教員が,あるいは沈黙し,あるい
は唯々諾々と戦争に協力しました.これに対する慚愧,悔悟と,権力支配下におかれ
れば大学は同じ過ちを繰り返すという洞察から,それを防ぐ決意が込められた防壁が
憲法23条と言えるのではないでしょうか.
憲法12条が命じるように,学問の自由も,国民の不断の努力によつてこれを保持
しなければなりませんが,学問に直接たずさわる大学構成員は,他の国民以上にこの
義務遂行に重い責任があります.高等教育の最高責任者集団の一つである国立大学協
会が,「学問の自由」を多方面から削り取る装置を盛り込んだ法人化案を,政治的状
況を理由に自ら受け入れるとすれば,教育と学問にたずさわる者と,これらを大学に
負託している国民に対する背任行為に他なりません.
したがって,来る3月に発表される予定の調査検討会議最終報告に,仮に国大協が
反対されない場合には,国大協は,それが学問の自由を脅かすものでないことを明確
に示さなければなりません.
それは,大学構成員・国民に対する国大協の最低限の説明責任であり,これをおろ
そかにして,大学の説明責任を云々することはできません.
私たちは,計画されている国立大学法人化の日本の教育・研究の将来に及ぼす影響
の重大さに鑑み,国大協の責任者である貴職が,最終案の討議に際して,上記の質問
事項に対して責任ある明確な回答をしていただくよう強く要望するものです.
注
1)東北大学工学部および東北大学加齢医学研究所(1999年9月6〜7日)における
講演.同氏のサイトにあります.
2)会計検査院のウェブサイトにある「検査の観点」によると,次のように幅広い観
点から検査がなされることになっています.
「検査は,広い視野に立って多角的な観点から行われています.近年,行政改革な
どによる効率的な行財政の執行が強く求められています.そうした状況の中で,正確
性,合規性はもとよりですが,経済性・効率性及び有効性の観点からの検査の重要性
が高まっています.」
3)「大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究 第一次中間まとめ」
国立学校財務センター,平成12年1月