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独行法反対首都圏ネットワーク

☆佐大・佐医大統合 個性と地域密着の視点で
 
[he-forum 3415] 佐賀新聞論説02/07.
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『佐賀新聞』論説  2002年2月7日付

佐大・佐医大統合 個性と地域密着の視点で


 国立大学の統合に向けた動きが本格化している。佐賀大学と佐賀医科大学も、
来年十月の統合をめどに協議を始めている。地域に密着した個性的で活気にあ
ふれた新大学を目指してほしいが、教員養成系の統廃合問題という重荷も背負っ
た検討となる。

 文部科学省の調べでは、国立大学短大百一校のうち三十六校が他大学との統
合を決めるか、本格的な協議に入っている。少子化で「冬の時代」を迎えた大
学の生き残り策だが、統合によって何を目指すかが問われている。

 文科省が進める再編統合の基本方針は(1)スクラップ・アンド・ビルドによ
る活性化(2)民間発想の経営手法(3)第三者評価による競争原理導入−で、「全
国トップ30」の大学を世界最高水準に育成することを目指している。

 効率的で開かれた大学への転換は国民の期待するところだが、競争原理を柱
にした統合計画は、地方の大学にかなりの重荷を背負わせる形となる。数合わ
せやコストの視点が強すぎると、地方の大学の反発は強いし、批判的な教官や
職員も少なくない。

 こうした背景の中で、佐大と佐賀医大は統合への検討に入っている。残され
た時間はそう多くない。問題を整理し、学内の意見に可能な限り耳を傾ける民
主的過程を経て、有意義な統合を実現してほしい。

 念頭においてほしいのは、学内の活性化と地域への密着である。

 進学希望者が学びたいと思う大学、社会と時代が望む人材を供給してくれる
大学、ひとことで言えば魅力ある大学づくりが最大の課題だ。形の上では、や
はり学部構成と、独自のテーマを追究するセンターの新設などがポイントとな
る。

 現在の学部構成は、佐大が文化教育、経済、理工、農の四学部で、佐賀医大
には医学部(医学科、看護学科)がある。統合後は佐大四学部と、医大の医学
部を合わせた五学部体制となる方向だ。統合メリットを生かす教育・研究セン
ターや大学院の創設、見直しが検討される。

 大学と地域の連携は積極的に行われてきた。有明海や虹の松原などの自然や
産業を守ろうとする佐大の研究などが成果を挙げつつある。両大学を含む県内
大学と、県、市町村、経済団体で佐賀地域産学官連携推進協議会も先月発足し
た。地理的特性を生かしたアジアとの交流にも熱心だ。

 個性ある新大学を誕生させる素地は十分にある。佐大の海洋温度差発電研究
に四十億円規模の予算が配分される。全国にアピールできる先端研究だが、統
合によってさらに魅力的なセンターや大学院が生まれることを期待したい。

 統合実現へ多くの課題があるが、教員養成課程の存続が焦点となっている。
文科省は再編統合によって国立大学の教員養成系を半数以下にする考えだ。

 佐大文化教育学部の学校教育課程(小学校)は、一学年九十人の定員で、全
国二番目の小規模だ。隣県大学への統合か存続かをめぐり協議が進められてい
る。

 少子化で教員採用枠が激減していること、佐大新卒者の教員採用がひとけた
台にとどまっていることなどを考えると、見直しは避けられない。

 しかし、前身である佐賀師範学校以来の伝統を持ち、付属の小、中学校を抱
える。教員採用は県単位で実施される。できるなら、佐賀で学んだ人材に子ど
もたちを託したい。教員養成過程の存続へ知恵を絞ってほしい。

 (田中好美)