☆パートタイム学生制度案への意見提出の勧め
[he-forum 3407] パートタイム学生制度案への意見提出の勧め.
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he-forum ML 会員各位
辻下@北大です。
中央教育審議会「大学等における社会人受入れの推進方策について (答申
案)」に対する意見募集(*1)の締切が2月13日です。
大学と社会の新しい絆を模索する答申案の趣旨に誰も異論はないと思います。
今回の答申案では長期履修学生(いわゆる「パートタイム学生」)制度・専門
大学院1年制コースの制度化・通信制博士課程の制度化の3提案がされていま
す。大学関係者は、大半の人が関与することになることですから、最低限一読
して、素朴に疑問に感じる点、新しいアイディア等があれば、数行のものでも
意見書として提出してはどうでしょうか。
どういう絆を社会との間に育てるかを大学が真剣に考えることが社会との絆
の重要な一部にあると思います。この3提案の趣旨が良いものであったとして
も、それがトップダウンな形で実現した場合に、社会との絆を求める余裕や意
欲が大学社会に残るのかどうか、よく考えて見るべきではないでしょうか。
また、大学外の方も、大学と社会の関係を改善することを謳った答申案です
から、答申内容がはたして社会が大学に望んでいることの核心を衝いたものな
のかどうか、また、どういうことを本当に望んでいるのか、等、大学関係者と
は異る視点からの意見を提出されることを要望します。
なお、中教審委員は提出された意見書に目を通す義務があります(*2)。
中教審委員にアイディアや意見を伝える機会としても活用できると思います。
また、文部科学省の中にも種々の意見の方が居られると思います。現在の政策
に批判的な方もおられるに違いありません。文部科学省内で種々な発言が起き
議論が深まる契機となる可能性も、微小ながらあるかも知れません。
最後に、答申案に関連して私見を少しだけ述べておきます。
答申案は、長期履修学生制度を「例外的」なものと位置づけているように感
じます。「もとより,学生の卒業時における質の確保を図ることは,大学等の
社会的責任であり,長期履修学生に対しても,厳格な成績評価を実施するなど,
安易な単位認定や卒業を抑制することにより,教育水準の維持向上を図ること
が必要である。」という一節は、現在の科目等履修生制度との連携を困難にす
る面があり、このままは「仏を作って魂入れず」の制度となってしまうことが
懸念されます。
「大学の社会的責任」は、「卒業」というラベルの品質を保つことではなく、
若干単純化して言えば、各学生に、科目(あるいはコース)の内容を完全に習
得させることです。しかし、完全に習得できる科目の種類や数は学生の能力と
意図に応じて多様なことは当然のことです。パートタイム学生制度を活かすた
めには、科目等履修生制度との連携を諮り、さらには、教員にも学生にも不毛
な活動を強いている「単位取得卒業制度」そのものの見直し(*3)まで踏み
込んで頂きたいと思います。
以上は私の個人的な意見ですが、それぞれの大学教員は経験に基づき種々の
意見があると思います。大学という場のルール形成に関心を持つことは、大学
教員の重要な責務の一つであり、当事者として社会から付託されている業務の
一つではないでしょうか。
(*2)「「新しい時代における教養教育の在り方について」(答申案)に寄
せられた意見について」
(♯)意見数は36件。「今回いただきました皆様の御意見は、中央教育審議
会の答申のとりまとめに当たり、参考とさせていただいております。答申は、
2月21日の総会において提出される予定です。」とありますので、はたして
中教審委員の方が目を通したかどうかは心もとないとは思います。なお、私の
知っている範囲では3名が意見提出しています:
(*3)参考文献:藤田 整「大学教育に「卒業」という制度は必要か」
大阪市立大学「経済学雑誌」第73巻第4号(1975.10.25) p64-74 時論
藤田 整「大学に「卒業」は無用ー学校教育活性化のための提案」
(人文書院 2000.10)
辻下 徹
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tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
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