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独行法反対首都圏ネットワーク

法人化問題をめぐる現情勢について
              ―当面する焦点は、教職員の非公務員化を許すか否か―
   2002年2月6日     独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

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                    法人化問題をめぐる現情勢について
              ―当面する焦点は、教職員の非公務員化を許すか否か―

                                                          2002年2月6日
                              独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

 遠山プランの「三点セット」、再編統合、トップ30、国立大学法人化はそれ
ぞれ重大な局面を迎えている。「三点セット」は、全体として国立大学の民営
企業化を一層促進する機能を果たそうとしている。以下、現状の論争点と問題
点を指摘する。

○再編統合: 1月28日から2月1日の日程で行われた各大学への文科省ヒアリン
グを前に、文科省は各大学の再編統合計画をリークすることによって、各大学
の再編統合への取り組みを強制している。これは今夏の概算要求に向けて、法
人発足時の初期条件を「整備」することを目的としている。
 こうした再編統合計画は、「数合わせ」(山陽新聞社説1月26日)にすぎず、
「数の削減そのものが目的」となっており、「再編・統合の理念、原理原則が
何なのかが伝わってこない」(毎日新聞社説1月26 日)という批判がすでに寄せ
られている。「基礎的学問領域の軽視」と「地域貢献の視点の欠如」を批判す
る声も多い。「大学の自治、独立性、校風といった、真理を学ぶものにとって
かけがえのない環境について、統合を急ぐ大学や文科省はほとんど留意してい
ないようにもみえる。」(神戸新聞社説2月3日)「責任の過半は、文科省の方に
あると言わざるをえないだろう。」(毎日社説)という批判にこそ応えるべきで
ある。
 まず文科省の再編統合政策自体が、昨年6月の経済財政諮問会議に「遠山プ
ラン」として提出されたものであることを想起しておこう。再編統合は、小泉
内閣の構造改革の一環であり、1月25日に閣議決定された経済財政諮問会議の
「構造改革と経済財政の中期展望」
(http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2002/0125tenbou.html)が、「国
立大学の再編・統合を促進」し、「国立大学を早期に法人化」し、「民営化及
び非公務員化を含め民間的発想の経営手法を導入」することを求めていること
に注目しなければならない。尾身科学技術担当相は、昨年11月19日の産学官連
携サミットで、「国立大学も非公務員型にして競争させたい。学生が集まるか
どうかで自然淘汰する。」と発言し、非公務員化を淘汰の手段として、再編統
合を進める意向を表明している。再編統合と非公務員化、民営化は一体のもの
として進められつつある。

○トップ30: 文科省は1月17日に「トップ30」に関する骨子案を発表した(全文
は首都圏ネットのウェブページに掲載)。これは「悪評」(読売新聞1月18日付)
によって、「21世紀COE」と改名されたが、4月に審査委員会発足、6〜7月申請、
8〜9月交付という日程が予定されている。
 このプランは教育・研究にかかわる活動実績だけでなく、「大学の将来構想
と実現のための計画内容」も評価対象となっており、文科省はこれを通じて、
生き残りを賭けた再編統合のための大学間の競争に拍車をかけ、「重点4分野」
に向けた大学内部の組織再編を狙っていると思われる。実際、いくつかの大学
では「トップ30」のために、教員組織をはじめ、学部・学科の配置、任期制を
含めた組織再編を計画しており、それを通じて、人的・物的「資源」の重点配
置を推進しようとしている。これは、大学の淘汰をめぐる選別と競争の装置と
して計画されており、組織から個人に至るまで、選別淘汰を行おうとするもの
である。「トップ30」は、「物質的インセンティヴ」によって組織替えを強制
しようという、非学問的・反大学的な誘導策と言わねばならない。再編統合と
ともに、これに対して、いかに立ち向かうかが問われている。

○国立大学法人化: 国立大学法人化は3月の最終報告に向けて、文科省調査検
討会議連絡調整委員会で議論が行われている。1月25日に開かれた連絡調整委
員会の第5回会議(http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency.htm)によ
れば、論点は次の三点である。

 運営組織: 中間報告におけるB案、C案のあいだにバリエーション(案の1)、
バリエーション(案の2)を設けている。基本的には経営(運営協議会)と教学(評
議会)を分離し、学外者を含む「役員会」を必ず置くものとし、その「議決を
経る」のか、大学の判断で「役員会」を置きその「議決を経る」のか、が二つ
の「バリエーション」を分かつ論点となっている。
 昨年の国大協臨時総会などでは、経営と教学の一致という国大協の従来の方
針を変更して経営と教学の分離を採用することへの慎重論が相次いだ。この論
点については、経営と教学の分離に加えて、「重要事項の役員会の議決」とい
う方向で固まりつつあることを、国大協および各大学はいったいどう考えるの
か。

 中期目標: この点についてはA案(文部科学大臣が作成主体)、B案(大学が作
成主体で、大臣が認可)が選択肢となっている。通則法のスキームとは異なる
と主張されてはいるが、A案、B案いずれの場合も、通則法の基本的サイクルを
変更するものではない。ここでも大学の主体的決定の可否が問われている。

 職員身分: これについては、非公務員化への決定的な変更が行われようとし
ている。1月25日の連絡調整委員会では、提出された意見資料を含め、会議で
も非公務員型を主張する勢力が圧倒的であったと言われる。1999年に有馬元文
相は「公務員型なら」と政策転換をした理由を説明したが、ことここに至って
「非公務員型」が前提とされようとしている。この点は厳しく批判されねばな
らない。
 1月25日の閣議決定「構造改革と経済財政の中期展望」(前出)では、国立大
学の「民営化及び非公務員化」がうたわれるとともに、「国立大学の法人化に
伴う大学事務のアウトソーシングの促進」が求められている。これは、教員だ
けでなく、事務職員を含めた一括非公務員化(および今後の民営化)を計画した
ものに他ならない。
 このような重大な変更を、「連絡調整委員会」という限定された委員会が各
委員会に諮ることなく、また国大協や各大学に諮ることなく、何よりも教職員
の同意を得ることなく決定するなどということは許されない。

 連絡調整委員会は、今後2月7日、2月21日、3月6日に開催される。3月6日に
は、最終報告の議論が行われる予定であり、この2月は、大学教職員の身分を
非公務員化するか否かを決定する重大な時となる。急ぎ取り組みが求められる。