☆国立大6割が統合検討――ぶつかる利害、具体化の壁
[he-forum 3357] 日本経済新聞01/25.
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『日本経済新聞』2002年1月25日付
国立大6割が統合検討――ぶつかる利害、具体化の壁
国立大の再編・統合は、複数の大学が一つになる「合併型」と、規模が小さ
く競争力の面で見劣りする学部を本体から切り離して他大学に再配置する「リ
ストラ型」に大別される。ただし文科省は「数合わせだけで構造改革は進まな
い」との立場。今回明らかになった再編・統合の動きをみると、お互いの利害
が一致しないなど、苦しむ国立大の姿も見えてくる。
■数合わせ
明らかになった統合の組み合わせのほとんどが、同じ県内の総合大学と単科
大学なのには訳がある。学科の専攻に重複がなく、地域的にも近接しているた
め、地元自治体の理解も得やすいからだ。
ただ逆に言えば統合後も両大学のキャンパス自体は残り、統合前と実態はあ
まり変わらない可能性が大。少子化を受けて文科省が半数程度に削減する方針
の教員養成系大学、学部も、そのままになりかねない。
今年10月の統合が既に決まっている山梨大と山梨医大の場合、山梨大の教員
養成課程の定員は100人。48ある養成系大学、学部の中では最も小さい部類だ。
このため山梨医大と統合して新大学に移行しても「これだけでOKとはならな
い。別途再編が必要」(文科省)とされ、教育課程だけは新大学から切り離し
て対応せねばならない。
山梨大は、東京学芸大、横浜国立大との間で教員養成機能の再配置の可能性
を模索するなど、再編の第2幕が進行中だ。
■片思い
文科省への各大学の報告をつぶさにみると、“片思い”のケースもあるなど、
大学間の思惑の違いも見受けられる。
大阪教育大、京都教育大など関西の四教育大学は、将来の連携の可能性を模
索し、情報交換を続けている。今のところ(1)教育大同士の大同団結(2)
他の総合大との統合――の選択肢が考えられているが、道筋は不透明。大阪教
育大は報告に、教育大大同団結に向けた情報交換のことを説明する一方、「大
阪大、大阪外国語大との間で統合を視野に入れ検討中」と総合大の名も明記す
る二正面作戦に出た。
だが意中の相手と見られる大阪大は「他大学と接触中」、大阪外大は「非公
式に接触」と記述するにとどめ、相手校を明かしていない。
また、鳴門教育大は「四国教育大構想を提案。(他大学も)本学構想を検討」
としたが、他大学はこの構想に触れなかった。教員養成機能を自校に残したい
との思惑が先行し、折衝は難航しそうだ。
■消えた案
注目されるのは東京医科歯科大の動向だ。同大はすでに東京外語大、東京工
業大、一橋大と連携し、今年4月から複数大学にまたがる「複合領域コース」
を開設。相互に学生の編入学を認めるなど、大学改革の先頭を走ってきたかに
見えた。
しかし、「本業の基盤強化を図らないと生き残れない」として、東大医学部
との統合を求める声が学内にある。
今月開いた評議会では、▽「4大学連合」にとどめ単独で生き残り▽海外有
力大学との提携を模索▽東大医学部との統合――3案が出された。意見の集約
に至らず、当初文科省への回答には3案が併記されていたが、東大との統合案
は急きょ削除された。統合案は「学内の合意ではなく、外部への影響が大きい」
ことが理由という。