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☆緊縮財政下でも振興費は大幅増 総合科学技術会議発足から1年
. . [he-forum 3342] 朝日新聞01/15-

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『朝日新聞』2002年1月15日付


緊縮財政下でも振興費は大幅増
総合科学技術会議発足から1年


 省庁再編で内閣府に総合科学技術会議が発足して1年。科学技術政策の「司
令塔」として来年度予算案の編成に影響力をみせ、科学技術振興費は大幅に増
える。ただ、予算配分だけでなく、文部科学、厚生労働など各省縦割りの弊害
をなくし、研究を国民に役立つ成果に結びつけるための改革は今年。真価が問
われるのはこれからだ。(浅井文和)

 尾身幸次・科学技術担当相は「内閣主導の予算案の編成ができた。科学技術
創造立国を目指して日本を強くしていく方向が緒についた」と最初の1年を振
り返った。

 昨年末に決まった来年度予算政府案。科学技術振興費は約1兆1774億円
で今年度に比べ5.8%増えた。一般歳出を2.3%削減する緊縮型の中で異
例の伸び。ライフサイエンス分野が28%も増えるなど、総合科学技術会議が
重点とする4分野の伸びが著しい。

 財務省で科学技術予算を担当する主計官も「ここに重点を置くべきだ、とい
う総合科学技術会議の意見、提言を受け止めて編成した」と認める。

 昨年秋、各省が構造改革特別要求枠で出した科学技術関係の提案を、尾身担
当相や有識者議員が詳しく調べ、優先順位をつけた。その結果を財務省も尊重
したわけだ。

 複数の省にまたがる計画について運用面で調整する方針を決めているとはい
え、似たような予算案が並ぶところもある。

 病気に関連する遺伝子研究のように、先端的な研究の成果を迅速に臨床に結
びつける探索型医療では、文部科学省と厚生労働省の双方の予算案が認められ
ている。

 同会議が次に目指すのは制度面を含め、研究現場の改革。まず、研究の課題
選定から評価まで監督する責任者制度の導入に向けて動き出す。

 全米科学財団をはじめ欧米の研究振興機関が分野ごとに博士号をもつ責任者
(プログラム・ディレクター)を置いているのを参考に、日本学術振興会など
の研究振興機関に経験豊かな大学教授級の責任者を設置。時代遅れの研究が漫
然と続くのを防ぐ考えだ。

 知的財産権の活用や研究者の任期制導入なども欠かせない課題だ。

 しかし、実行となると、たとえば国立大学の場合は文部科学省が担当する国
立大学改革と密接にかかわるといったように、各省の取り組みの進展次第といっ
た要素もある。推進役として同会議がどれだけ力を発揮できるかが問われる。

<総合科学技術会議議員の井村裕夫・元京大学長の話> この1年で最も力を
入れたのは立案するだけでなく各省の調整をすることだった。予算編成で意見
を言い、成果をあげることができた。会議を日本の科学技術政策の司令塔にし
たい。国立大学の施設基盤整備、産学官の協力態勢づくり、地域の科学技術振
興、研究開発の評価などに取り組みたい。プログラム・ディレクターは欧米で
は優秀な科学者が務めている。日本も科学者が入って同様の仕組みをつくれる
ようになる。

<総合科学技術会議> 議長は小泉純一郎首相。科学技術担当相、文部科学相、
経済産業相、財務相らと井村裕夫・元京大学長、白川英樹・筑波大名誉教授ら
有識者議員7人で構成する本会議を月1回開く。自前の事業予算をもたない各
省の調整役だが、予算編成や重要課題について提言や答申をする。民間や大学
などからの登用を含めた約80人の事務局をもつ。

◇科学技術重点4分野の予算額(文部科学省分)
             01年度   02年度
 ライフサイエンス    561億円  717億円
 情報通信        854    890
 環境          572    576
 ナノテクノロジー・材料 213    249