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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大統合 理念、目的を明確に示せ
. [he-forum 3333] 毎日新聞社説01/26.-

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『毎日新聞』社説  2002年1月26日付

国立大統合 理念、目的を明確に示せ

 文部科学省が昨年6月に示した「大学(国立大学)の構造改革の方針」(遠
山プラン)を受け、全国101の国立大学・短大は、再編・統合についての基
本的な考え方をまとめた。

 筑波大と図書館情報大など、統合で合意済みのケースが9組あるほか、群馬
大学と埼玉大学など統合に向けて具体的に協議中のところも6組。さらに何ら
かの形での再編・統合、連携に向けて話し合っているところも多い。独立行政
法人化を控えた国立大学は、今大きく動き出したように映る。

 しかし本当にそうなのかは、まだ何ともいえない。全体に漠としていて分か
りにくく、何のための再編・統合なのか、これによって果たして大学は変わる
のかが、なかなか見えてこないのである。

 統合に合意したケースは、総合大学と同県の医科大学というケースが多い。
統合が進めやすい環境にあるからだが、学長が減るだけで後は何も変わらない
ということにもなりかねない。統合する以上は大学、学生、地域にとってそれ
がプラスになることを明示し、アピールする必要がある。

 難しいのは教員養成系だ。医科大学と違い、空白となる県が出る可能性があ
る。教員は県単位で採用するシステムだけに簡単ではない。今回統合が具体化
したケースはなく、他大学との接触にとどまっているのはそのためだろう。

 統合を視野に入れて検討中としたケースの多くは、統合の目的、形態さえ、
お互いにコンセンサスを得られていない。ともかく何かをしているように体裁
を整えた、と受け取られる例もある。

 責任の過半は、文科省の方にあると言わざるをえないだろう。

 遠山プランは「国公私の『トップ30』大学に資金を重点配備し、世界最高
水準に育成する」というのが、眼目である。国立大学予算制度の構造を変え、
競争原理を導入して傾斜配分するというのだから、護送船団方式に慣れきって
た大学に衝撃を与えた。

 その当否は別にして、問題なのは大きな転換であるにもかかわらず、政府の
構造改革提言を受け、経済財政諮問会議に向けて急きょ策定されたことだ。2
1世紀の高等教育をどうするかからではなく、唐突に出てきたのである。

 そのゆがみは、遠山プランの第一の柱に「国立大学の再編・統合を大胆に進
める」を掲げ、「数の大幅な削減を目指す」としたところに表れている。トッ
プ30とは必ずしもリンクせず、数の削減そのものが目的になっている。再編・
統合の理念、原理原則が何なのかが伝わってこないのである。

 これでは各大学の検討が、数合わせや生き残りのための弥縫(びほう)策に
なりがちなのも無理はない。諮問会議への説明のための削減なら本末転倒だ。
活力に富む魅力的な大学づくりを目指す結果としての再編・統合でなければな
らない。文科省はグローバルプランを策定すべきだし、各大学は危機にあるこ
とを自覚し、それぞれの明確な目標、将来構想を打ち出すべきである。それが
基本になる。