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独行法反対首都圏ネットワーク

☆ 山内恵太氏の論文 
. [he-forum 3261] 山内恵太氏の論文
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佐賀大学の豊島です.
独法化を憂慮する皆様へ.また,この5年間に起きている「ウソも百編繰
り返せば本当になる」という事態を容認できないと思う皆様へ.

東大駒場寮自治会の山内恵太氏の論文を推薦いたします.ウェブに転載し
ましたのでどうぞご覧ください.
「独法化・大学再編を迎撃しよう!」
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/yamauchi.html
印刷向けpdfファイル
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/yamauch.pdf

私はこの論文から,独法化阻止が大学だけの問題にとどまるものではなく,
憲法擁護の国民的課題の一環であること,また大学関係者も「大学の自治」
のためだけに憲法を「利用」するのではなく,もろもろの憲法的価値を一
体のものとしてとらえる必要があること,などを読みとりました.そのよ
うな観点からすれば,独法化反対運動を国民的・人民的な運動のいろんな
分野に「持ち込む」ことは決して「援助」を求めるものではなく,独法化
阻止が今日の全国民的課題であるとして運動を促すべく積極的に広め訴え
るべきであるという気持ちを強くしました.
(この論文は「反グローバリゼーション」の立場からのものですが,この
立場がすべての独法化阻止運動の参加者に求められる,というものではも
ちろんありません.)

タイトル,目次,そして最後の章からの一部の抜粋をこのメールに添付致
します.全文は上の url にアクセスして下さい.
また,ある季刊誌に発表された同氏の論文も間もなく転載する予定です.

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独法化・大学再編を迎撃しよう!

反グローバリゼーション・改憲阻止の青年学生の立場からする、 実践的・
飛躍的前進のための若干の分析と方向性の提起

0.はじめに
1.大学再編の経緯と現況
2.国家主義的統制強化
3.新自由主義的競争激化
4.新たなイデオロギー攻勢
5.憲法的諸価値と大学再編
6.グローバリゼーションにおける大学再編の本質
7.大学問題にとどまらない大学再編
8.破壊的再編に対する反撃の方向性
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8章から
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 その上でまず、この破壊的再編が制度のうえで標的にしているのが「大
学自治」であることを捉え、どんなにみすぼらしくなっていても「大学自
治」を擁護することが反対運動の側に求められる。様々な立場の違いこそ
あれ、「自治」を売り渡すのか、手放さないのか、この一線は決定的に重
要である。そしてこの「大学自治」擁護は、単に保護するだけでなく、そ
の内実をあらゆる次元で高めていく取り組みとセットでなければならない。
様々な「確認書」や「憲章」など宣言的なものは、それを実体化する現実
の力があって初めて有効なのであって、さもなければ本当に紙切れに過ぎ
ない(かといって自分から手放してはならない)。特に大衆的に「大学自
治」への関心を喚起し、そこへの参加を促していくことが重要である。
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であればこそ、一足飛びに「大学人一般」が「大学自治」に向かうことは
全くできない。それぞれの立場で、学生であれば「学生自治」を、職員で
あれば「職員組合運動」を、そして教官であれば「教授会自治」の民主化
を、それぞれ取り組む必要がある。「教授会自治」のために駒場寮から叩
き出された者として私は断言する。「大学自治」は擁護されねばならない
が、「大学自治」によって「学生自治」が弾圧されることは絶対に許さな
いし、また現実には換骨奪胎されてそのように機能している「大学自治」
の本来のあり方を奪い返すために、弾圧されている「学生自治」をますま
す発展させることこそが、真の「大学自治」擁護である、と。ともかく、
それぞれの立場からする取り組みこそが、結果的に「大学自治」を守り抜
くという一致点を明確化し共有化する道であるし、また運動の足腰を大衆
的に鍛えることを通じて「大学自治」を守り抜くための道となるに違いな
い。
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 「大学自治」擁護の一致点からさらに進んで、大学だけの問題ではない
大学再編に立ち向かうために、私たちはこの破壊的再編の本質に立ち入ら
ねばならない。この小論もそれを念頭に置いて書かれたものである。大学
再編は、憲法的諸価値に立脚した大学のあり方を破壊し、資本の完全なる
従属下にある下請け研究機関兼格安の労働力養成所に作り変えるものであ
るとしたとき、これに反対する運動は、憲法改悪阻止の統一戦線を志向す
るものでなければならない。運動論的な観点からすれば、この本質から目
をそらし、あたかも大学だけが社会から遊離・独立した「聖域」であるか
のような、行革の論理は、あるいは管理の論理は「大学になじまない」論
で独法化に反対することは、この問題を社会問題化する道・学内外の連帯
への道を自ら閉ざすものと言わざるを得ない。また道義的にも、侵略戦争
の敗北・世界的な反ファシズムの勝利がもたらした成果物である日本国憲
法を、国立大学の存続のためだけに引き合いにだすことが許されるはずが
ない。まして憲法的価値である「学問の自由」の制度的保障である「大学
自治」の擁護は言うが、その本体である憲法そのものへの改悪策動という
現実に対する反撃を、独法化反対のなかから発展させることを目指さない
とすれば、一体何のために「学問」をやっているのか、ということになろ
う。この運動は憲法的価値に並大抵ではなく支えられているということに
対する自覚がもっと必要である.
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 さて、独法化阻止が改憲阻止統一戦線に合流すべきというところ話を戻
せば、この改憲策動がなぜ急ピッチになっているのかにまで踏み込む必要
があろう。これについてはグローバリゼーションにおける国際競争のなか
での日本資本主義の生き残りをかけた国家再編であることに触れてきた。
であるがゆえに、破壊的再編のあとには産学協同の徹底化が用意されてい
る。私たちはここで、国際競争力と決別する決意を持たなければならない。
特に、国大協が国際競争力幻想に完全にからめとられてしまい、このまま
では「国が滅びる」などと狼狽するありさまとなっているいま、反対運動
の側は、ことは大学だけの問題でもなければ、一国だけの問題でもなく、
グローバリゼーションにおける国際競争力の強化という日本資本主義の要
求に基づいたものであるという点を明確に踏まえる必要がある。
 実際、現在推し進められている大学再編と極めて類似した例は世界各地
で見ることができる。韓国における大学「構造調整」は日本のそれに酷似
している。私立大学と国立大学の学費値上げのイタチごっこから、独法化
は「独立会計制度」、「トップ30」は「BrainKorea21」、教員養成系の
統廃合に至るまで、そっくりである。日本で大学再編が容易に進んでしま
えば、外国で大学再編と闘っている人々が不利になるというインターナショ
ナルな観点が求められる。世界の闘いの足を引っ張ってはならない。
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TOYOSHIMA Kouichi
Dept. Phys., Univ. of Saga
豊島耕一,佐賀大学理工学部物理科学科