☆国立大学の構造改革 地方切り捨てを許すな
.[he-forum 3225] 河北新報01/18論壇 .-
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東北大学職員組合です。
以下の通り、本日付河北新報「論壇」に東北大職組大村前委員長の投稿が掲載され ました。
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論壇
国立大学の構造改革 地方切り捨てを許すな
東北大職員組合前委員長・東北大大学院教授
大村 泉
国立大学は今、激動の渦中にある。昨年六月に文部科学省から提示された「大学の
構造改革の方針」(遠山プラン)は日本経済の国際競争力強化に貢献できる大学づく りを謳(うた)っている。そのために、国公私の全大学から上位三十校に資金の重点
配分を行ない、世界最高水準の大学を育成する計画(「トップ三十構想」)が提出さ れた。
こうした計画に沿って、国立大学は二〇〇四年四月に独立行政法人に移行する予定
だが、法人化に向けた国立大学の構造改革には疑問点が多い。特に、教育を受ける側
からはあまりにも問題の多いこの構想が、意外に大学の外では知られていない。
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たとえば、受益者負担の名のもとに授業料値上げは必至である。今回の国立大学
「改革」は、巨額の財政赤字の解消を目的とした行財政改革に由来する。
政府は運営資金減額のために学生納付金の引き上げによる自己収入の増大を各大学
に求め、大学や学部ごとに異なる授業料・入学金が設定される見込みだ。そして、こ れらの費用は私立大学並に引き上げられ、医科歯科系や理工系学部では、大幅な引き
上げが予想される。
また、日本育英会廃止の方針が政府から出されている。「原則支給」の欧米諸国に
対し、現在でさえ「原則貸与」の貧困な奨学金制度の悪化が懸念される。苦学生や社 会人学生の懐は直撃されるであろう。
地方大学の切り捨ても現実化してきた。これまで地方国立大学は、大都市圏から離
れた地域の学生に高等教育の機会を提供してきた。地方の裕福でない苦学生も、比較 的低額の学費で進学することができた。学生たちは卒業後、地域の産業・行政・教育
・文化の世界で活躍している。
現在、地方国立大学は生涯学習の拠点として、多くの市民に学習の場を提供してい
る。ところが「トップ三十」へ資金等を集中させる一方、国立大学の大幅削減を目的 とした再編統合も企画されている。
文部科学省幹部は「国立大学のない県があってよい」という趣旨の発言をしてい
る。地方大学のリストラとでもいうべき動きに加え、少子化の影響もあり、教員養成 系に対する風当たりは強く、宮城教育大学もまた存亡の危機にある。
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一方、「トップ三十」に入っても安心するのは早計だ。予算増額のためには、政・
財界の方針に沿った大学づくりを強いられ、運営の非民主化、教員身分の不安定化、 目先の成果に駆り立てられる研究状況-などの懸念が出されている。
昨年十二月十一日に開催された東北大学の「外国人研究者との懇談会」に出席した
際、阿部博之学長は東北大の金属関係の論文引用件数が世界のトップであることを紹 介し、大いに誇りにすべきだと述べた。
その後、「研究史を塗り替えるような論文が直ちに耳目を引くものでないことに注
意すべきだ。ノーベル化学賞を受賞した白川英樹筑波大名誉教授の論文は、長期間ほ とんど注目されなかった。重要なのは引用点数の多い研究の単なる後追いではなく、
画期的業績を直ちに見抜く力を蓄えることだ。これがなければそうした業績を上げる ことはできない」という趣旨の挨拶をした。
このような良識が通用するならよいのだが、現実に進行しているのは、流行する
(あるいは金になる)一部の研究だけが脚光を浴び、重要だが目立たない学問が見捨 てられる方向である。労多くして「成果」になりにくい県民との交流などは、一部を
除いてはおざなりにされかねない。
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学問や文化の継承・発展のためには、国民の側に立った真の大学改革が必要であ
る。大学の現場で本当に必要とされているのは、先進国並の高等教育費の増大と、教 育・研究環境の早急な整備である。文部科学省は現在の方針を全面的に見直すべきで
ある。
(投稿)
********(以上)********
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東北大学職員組合 小野寺智雄(おのでらとしお)
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