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独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人産業技術総合研究所における職員の給与及び評価システム 
.2002,1,22  独立行政法人反対首都圏ネットワーク
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独立行政法人産業技術総合研究所における職員の給与及び評価システ
2002,1,22  独立行政法人反対首都圏ネットワーク

 
 経済産業省工業技術院に所属していた15の研究所は2001年に常勤の研究者2500名,常勤の行政職700名という大きな規模を持つ独立行政法人産業技術総合研究所に改組された.改組に伴い各研究所にあった財務会計,施設管理,人事,企画,図書,技術支援などの研究管理/関連部門はすべて集中化され,より中央集権型の組織になった.

研究実施部門は,50あまりの研究ユニット(研究者が数十名から100名前後で構成)からなり,個々の研究者と研究管理/関連部門の間をつなぐ役割として各研究ユニットに2名ずつ事務員が配置されている.

以下,職員の給与と評価システムに関する添付資料を簡単に説明する.
  なお,資料番号をクリックすると資料(pdf)が開きます.

資料2-1 給与制度比較表←クリックして下さい

 研究職も行政職も同じ俸給表(研究職俸給表に対応した5級制)が適用されるようになった.研究職と行政職の人事交流促進が一つの目的とされている.1号俸が4分割され,資料2-2及び2-3のように各級が100以上の非常に多くの号俸から構成されている.

また,調整手当(東京勤務で12%,大阪名古屋は10%,筑波は研究職10%,行政職3%)などが財源に職責手当が,また,勤勉手当を財源に業績手当が導入された.職責手当ては,例えば同じ級号俸でも研究グループ長と下の主任研究員とでは月額およそ30000円の違いが出る.また,短期評価で決まる業績手当ては,6月と12月支給される業績手当てに反映され,およそ総額にして一月分の賃金の50%から200%までの4倍の開きがでる.これにより,かなり賃金格差が大きくなる上,当初当局から提案された案に従うと多くの職員にとって賃下げになることが判明した。急遽組合が交渉した結果、前年度より減らないという補填措置が実施されている.しかし,3年の補填措置期間が終了すると、役職についている職員を除く多くの職員にとって実質減給となることが予想されている.定年までに受け取る総額として1000万円以上差が出るという試算もある.以前より予算的に費目の壁が低くなったとはいえ,人件費と事業費は厳格に区別されており,ノーベル賞クラスの顕著な業績がない限り,人件費の総額増加は難しいと言われている.

資料2-2及び資料2-3 俸給表←クリックして下さい

各号俸が4分割されたために,最大125まで多くの号俸が設定されている.これは昇給月を年1回4月のみすることで,従来の4回の昇給月の差を是正するための措置とされており,一回に4号俸ずつ昇給する.しかし,昇格時の上げ幅などのより細かい給与管理も可能な表になっている.例えば当初の案では、昇格については直近上位の号俸へ上がるとしていたが,これだと昇格に伴う賃金アップが従来より大幅に小さくなり,組合の交渉で従来並に修正させた.

資料3-1 職員評価制度のまとめ←クリックして下さい

 職員に対する評価制度は短期評価,長期評価の二つある.短期評価は毎年行われ,次年度の業績手当てに反映される.また,長期評価は昇格対象者(ただし最高級の5級職員に対しても7年に一度行われる)に対して行われる.評価の基準が若干異なるが,研究者も行政職員も全く同じ仕組みで評価を受けることになる.評価システムはまだ始まったばかりであり,今後いろいろな問題点が洗い出されると考えられる.

資料3-2 評価プロセス(短期評価)←クリックして下さい

直近の上司が評価を行い,ユニット長(部門長)がそれを参考に決定する仕組みになっている.所属する部門やユニット,グループの中期目標,中期計画に基づいて,毎年の事業計画が立案される.各職員はそれに基づいて各自の業務計画書を作成する.そこでその年度の業務内容や達成目標をかなり細かく決め,上司や部門長などがそれを決定する.年度の終わりに近付いたころに,各自が自分の業務計画書に対応した自己評価票を作成する.それを基づいて直近上司が評価票を作成し,それを元に部門長がきめる.評価はいろいろな項目毎に4段階に別れているが,これは5段階にすると中央の段階に集中するので評価にならないと言う理由である.目安として業績手当てについては総合評価でBならば100%の支給を受け,それ以外であれば目標の達成具合に応じて増額や減額される.

評価を行う者に対しては評価の仕方に関する研修を義務付けており,各自のつけた評価自体も評価の対象となる.つまり,オールAをつけた評価者に対してはその評価は適切でないという判断がさらに上部の評価者から下されるのである.普通の職員は基本組織であるグループのリーダーによって評価され,されにグループのリーダーはさらに上のユニット長や部門長に評価され,さらに彼等は理事や理事長に評価されるという評価の階層構造ができあがっている.評価結果は該当職員には内示され,不服申し立てもできる.

資料3-3 評価プロセス(長期評価)←クリックして下さい

短期評価と異なり,直近の上司ではなく,ユニット長(部門長)が評価者となり,最終的には理事長が決定する.短期評価と同様に評価対象者は中期目標と対応した自己評価票を作成する.場合によっては評価者によるインタビュー等も行われている.評価結果の内示を受けた後で被評価者は不服申し立てができる.級別定数は明示的にはないが,人件費総額が決まっていることもあり,昇格は以前よりも厳しくなったと言われている