☆[やまなしに想う] 椎貝博美さん 大学統合
[he-forum 3133] 朝日新聞山梨版12/08.
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『朝日新聞』山梨版 2001年12月8日付
[やまなしに想う]
椎貝博美さん 大学統合
現在、山梨医科大と山梨大の間で国立大学間の統合が進行していることは、
ご承知の方が多いかもしれない。
もともと山梨県には山梨師範、山梨青年師範、山梨工専、それに山梨医専の
四つの専門学校があった。第2次大戦後間もない1949年の新制の山梨大発
足のときに、教育学部、医学部、工学部の3学部で発足する構想があった。
しかし医専が戦災を受けており、再建資金もままならなかったために、やむ
を得ず、教育学部と工学部の2学部で発足したのが現在の山梨大である。
時が過ぎて、72年に山梨大は医学部設置の概算要求を行った。その構想は
認められたものの、当時の政府の方針から、医学部は独立の山梨医科大として
78年に発足し、現在に至る。その間、教育学部は教育人間科学部と名称と内
容を多少変えた。
したがって、今度の2大学統合が実現すれば、3度目の正直の統合実現とい
うことになる。統合が完成すると、医学部、教育人間科学部、それに工学部の
3学部からなる新大学ができることになる。
そうなれば、教養教育の幅はうんと広がることになる。その一方、管理職員
の数は明らかに減らすことができるし、そのほか多くの面で省力化が図られる
という利点がある。
この大学統合という前例の乏しい作業を始めてみると、その手続きは新しい
大学を設立するのとほとんど同じであることに気がついた。
大学を創設するためには、大学設置審議会という審議会の審査を受ける必要
があり、先日2大学そろって審査を受けた。審査には口頭試問も含まれており、
学生に戻ったような気がしたのは私だけでは無いであろう。何とか質問に答え
ることはできたが、結果は近く通知されるらしく、たいへん落ち着かない気分
である。
この審査に通れば、今度は来年3月の国会に大学設置の法案を提出しなくて
はならない。これについては文部科学省の世話になることになろうが、大学も
入学試験や卒業、入学などで忙しい時期であり、両大学の教職員の負担が相当
に大きくなることはまことに申し訳ない。
そのほか多くの作業が順調に進行すれば、来年10月に新しい大学が誕生す
ることになる。しかし、これまで話題にも上っていない問題が表れる可能性も
あり、楽観は許されない。
それにしても、山梨医科大という教育、研究において優れ、かつ大学統合に
ついてもすぐれた見識を持っているパートナーが近くに存在したことは、山梨
大学にとって、また山梨県にとって、大変恵まれたことである。
(しいがい・ひろよし=山梨大学長)