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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「独法化反対を表明し,実践しない人に真の改革を語る資格はない」
.[he-forum 3129] 改革を語る資格 .-

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佐賀大学の豊島です.最近開かれた集会の感想も込めて,一つの意見を投稿します.

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「独法化反対を表明し,実践しない人に真の改革を語る資格はない」

                      佐賀大学 豊島耕一

 しばしば「反対を唱えるだけではどうにもならない.こちらの改革を提案してい
かなければならない」という言説がなされる.後段の「改革を提案」の必要性・重
要性についてはだれも否定しない.(つまりその是非は議論のテーマではあり得な
い.)しかしこれら二つのフレーズの間の接続詞,“だけでは”には重大な問題が
ある.この表現は反対運動に心理的ブレーキをかける作用がある*.つまり,具体
的改革案を持たなければ反対運動をする資格がない,という暗黙のメッセージを含
むのである.さらにこのバリエーションとして,「反対運動も大事だが,“それよ
りも”自分たちの改革案を出していくことが“より”重要だ」という言説によって,
みずからが積極的に反対運動をしていないことに対する免罪符のレトリックになる
場合もある.

 これらは,心理的・レトリック的仕掛けとしては極めて初歩的で幼稚なものだが,
これに引っかかる「インテリ」が少なくないことには驚かされる.根本的な問題で
現状より悪化させる提案に反対することは「改革案」の最低条件なのである.これ
は出発点であって,この事を表明し実践しない人に真の改革案を語る資格はない.

 また,「改革を提案」という場合,多くの人がすぐに制度改革のことを連想して
しまうが,これはまさに官僚思考そのものである.官僚にとっては書類の束が出来
ないことには仕事をしたことにはならない.そしてそれを量産するテーマは制度改
変である.しかし今日の国立大学がかかえる問題の原因はその制度にあるのだろう
か?

 かつて設置基準「大綱化」によって教養課程が「自由化」された.しかし実際に
起こったことは,何の強制力もない,そして実際に行われたという「証拠」すら明
白でない「行政指導」によって,全国の教養部がほとんどすべて解体されたことで
ある.つまり問題は,自由化が画一化につながるというこの国の大学関係者のメン
タリティーそのものであり,文化である.そしてこれは今また,反対のはずの「独
法化」に明確に反対を表明できないという精神状況をも現出している.

 別の,非常に実務的な例を挙げよう.非常勤講師への給与の支払いが異常に遅い.
定職を持っていてお付き合いでやっている人にとってはさしたる問題に感じられな
いだろうが,そんなにゆとりのある人ばかりではないはずだ.だいいち世間の常識
に反している.特に,職業として非常勤講師をやっている人にとっては大変な問題
だ.「給料の遅配」そのものである.物品などの代金の業者への支払いも遅いので
はないかと心配している.請求書・納品書などに日付を入れさせない事もあるよう
だが,もしこの欄に後で大学側が書き込んでいるとしたら,「私文書偽造」に当た
るかも知れない.

 このような問題は,制度の問題であるどころか,法律や常識が守られていないと
いうことを意味するだけである.国立機関なら給料遅配をしてもよい,などという
法律はないはずだ.このような事をあげつらって「だから国立大学制度はよくない」
などと言う人があればお笑い草である.物品調達の事務手続きが現実に合わないと
いうのであれば,それを変えるべきであって「国立」であることを変えるべきだ,
というのがおかしいのはだれでも分かる.

* もう一つの重大な含意は,「改革案」なるものがまだ誰からも提案されていない,
というものである.もちろん決してそんなことはない.

豊島耕一
TOYOSHIMA Kouichi
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
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