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☆トップ30 公正な評価がカギ 
.[he-forum 3079] よみうり教育メール12/17(2)-
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Subject: [he-forum 3079] よみうり教育メール12/17(2)

よみうり教育メール  2001年12月17日付(2)

◆トップ30 公正な評価がカギ
 
 
 文部科学省が打ち出した、「トップ30」政策は、世界のトップレベルと肩
を並ぶ可能性のある大学の専攻を選抜し、そこに思い切って予算を重点配分し
て、世界最高水準の大学を育成しようというものだ。

 トップ30入りを目指して、各大学の研究活動に競争的原理が働き、研究活
動の活性化も期待される。同省では「その結果、わが国の大学全体のレベルアッ
プにつながる」と見込む。

 このような予算の重点配分と競争原理の導入は、今年三月に閣議決定した
「第二期科学技術基本計画」の大きな特徴だ。資源に乏しい日本が二十一世紀
も発展し続けるには、科学技術の振興が不可欠。総合科学技術会議の議長を務
める小泉首相も「総花的な研究開発を改めたい」と強調する。

 ノーベル賞受賞者の多くは、三十歳前後の若いころの業績が評価されている。
しかし教授中心の講座制を守るわが国の大学では、上意下達式に研究テーマが
決まることが多く、若手研究者が能力を発揮しにくいとされる。

 これを改善するため、第二期計画では「競争的資金」の倍増を打ち出した。
研究課題を公募し、優れた提案には十分な研究資金を与えて若手研究者の自立
を促すのが狙いだ。

 並行して進められるトップ30政策についても課題がある。評価基準があい
まいでは公正な競争は期待できず、大学に無力感を広げてしまう恐れがあるか
らだ。

 大学評価・学位授与機構の館昭教授は「論文の引用数を評価対象にするのは
良いが、悪い研究の例として頻繁に引用されることもあり、また、引用数を増
やすために友人同士で引用し合うことも起こる」と、公正さ、客観性の大切さ
を指摘する。

 振り返れば、日本の科学研究の世界には、「客観的評価と建設的な提言」と
いう仕組みが働く機会が少なかった。外部評価システムを導入する段になって、
改めて「研究を評価する人材」の不足が大きな課題として浮かび上がっている。

 評価者の養成によって、しっかりとした研究の評価体制を確立することが、
トップ30をはじめとする予算配分の重点化や、競争原理の導入を成功させる
重要なカギになることは間違いない。

 トップ30が大学の重点化だとすれば、研究分野でも実益性を重視した重点
化が進む。第二期計画は、<1>ライフサイエンス<2>情報通信<3>環境
<4>ナノテクノロジー・材料――の四研究分野に重点的に予算配分する。

 予算の重点配分は、社会的に優先度の高い研究分野を効率よく発展させる利
点がある一方、大学など、基礎研究が中心の研究予算を圧迫する恐れもある。

 国立天文台など大学共同利用機関の所長らが今年七月、「科学技術創造立国
の実現のために、基礎研究の推進にも配慮して欲しい」と、首相あてに異例の
要望書を提出したのも、その不安の現れだ。

 今年ノーベル化学賞を受賞した野依良治名古屋大大学院教授は、「科学はも
ちろん産業に役立つが、それ以前にまず私たちに自然の本質を教え、人生を豊
かにしてくれるものだ。そうした思想的伝統の上に技術や産業が乗っている。
大学改革に当たって、この本質を見失うことがあってはならない」と語ってい
る。