☆帯畜大学長に鈴木氏 冨田氏に1票差 決選投票で再逆転 来月1日就任予定
[he-forum 3076] 十勝毎日新聞12/14.-
---------------------------------------------------------------
『十勝毎日新聞』2001年12月14日付
帯畜大学長に鈴木氏 冨田氏に1票差
決選投票で再逆転 来月1日就任予定
帯広畜産大学学長選挙の決選投票が13日午後1時半から行われ、帯畜大名誉
教授の鈴木直義氏(70)が前北大副学長の冨田房男氏(62)をわずか1票差で
下して当選した。十勝毎日新聞社の調べによると有効投票数は135票で、鈴
木氏が68票、冨田氏が67票だった。
学長選では同日午前10時からの第2次投票で、冨田氏が63票、鈴木氏が54票、
道獣医師会会長の金川弘司氏(66)が17票を獲得。冨田氏が第1次投票でトッ
プだった鈴木氏を逆転したが、新学長の当選に必要な有効投票数の過半数に達
せず、鈴木氏と冨田氏の上位2人による決選投票に持ち越された。
決選投票では、第2次投票で脱落した金川氏の票の大半を取り込んだ鈴木氏
が票を伸ばして再逆転し、冨田氏を1票差で抑えた。
帯畜大では13日午後4時からの教授会で、鈴木氏を次期学長候補者として選
出。14日、大学事務局と学長選挙管理委員会の関係者が東京中野区の鈴木氏の
自宅を訪れ、就任要請する。就任は来年1月1日付の予定で、任期は4年間。
鈴木氏は1月中に赴任する。
鈴木氏は群馬県出身。1955年帯畜大獣医学科卒。独・ボン大学医学寄生
虫病研究所などを経て73年に帯畜大獣医学科教授となり、89−91年まで東大農
学部教授を併任。90−95年、現在の全国共同利用施設・原虫病研究センターの
センター長。北里大客員教授、北里研究所客員部長。
決選投票結果
鈴木直義氏68票 票冨田房男氏67票
「北大との統合」に反発 帯畜大学長に鈴木氏
再編否定も具体性欠く
課題山積、厳しい船出
わずか1票差となった帯広畜産大学学長選決選投票の行方を決めたのは、第
2次投票で金川弘司氏が獲得した17票だった。決め手となったのは、今回の学
長選で最も是非が問われた「北大との統合」だった。(岩城由彦)
第1次投票を4日後に控えた2日、冨田氏は北大を訪れた帯畜大の獣医学科
教官ら4人と面談し、「2003年度概算要求として北大獣医学部と帯畜大獣
医学科の対等な統合方針を提出する」ことで基本合意。学長選での支持を取り
付けた。
10月17日の国立大学農学部系部長会議で教官数の大幅な増員が迫られた獣医
学科では、「もはや再編統合なしに対応できない」との危機感が頂点に達して
いた。
しかし、帯畜大卒教官らを中心としたいわゆる「民族派」は総合大学である
北大との統合を“身売り”と非難。大学の生き残り策についてさまざまな意見
が飛び交う中、学内で浮かんでは消えていた「北大との統合」をめぐる対立は、
学長選を機に決定的となった。
こうして獣医学科の支持を得た冨田氏だったが、6日の第1次投票では鈴木
氏に21票の大差をつけられた。ある教官は「獣医学科を分離・分割しないとい
う大学方針に配慮したのは分かるが、基本合意を表に出さなかったことで冨田
氏の実行意思を疑った」と漏らす。
一方の鈴木氏。「自助努力」を掲げた佐々木学長の流れを踏襲し、拙速な再
編統合を否定して支持を集めたが「具体的な計画に欠ける」との指摘や高齢を
気にする声もあり、票の上積みが疑問視されていた。
不安が現実のものとなったのは、第1次投票の数日後。冨田氏は「帯畜大の
特色を失わず、北大を含めた道内国立大学とのすみ分け、共生を図る」という
具体的な再編統合構想を展開し、学科の枠を超えて急速に浸透した。構想は基
本合意にも沿う内容で、第2次投票では63票を集め、前回から31票も伸ばした。
これに対し、鈴木氏はわずか1票増の54票。第2次投票での逆転を許した。
決選投票はこれからというのに、鈴木氏側のある教官は「学内の過半数が再編
統合を望むなら、そうすればいい」とあきらめに似た言葉まで出たが、陣営は
約1時間半後に迫った決選投票に向け、金川弘司氏が第2次投票で獲得した17
票に狙いを定めた。
単独存続の難しさを指摘し、道内6単科大学の連合を掲げた金川氏の票は当
初、冨田氏に流れるものとみられた。しかし、鈴木氏当選の決め手となったの
は、冨田氏が視野に入れていた「北大との統合」だった。
鈴木氏陣営は「北大には他大学と統合する気はなく、帯畜大との再編統合は
あり得ない」とした金川氏の主張に着目。獣医学科単独の動きやこれに応じた
冨田氏の姿勢も問うなど、手分けして個別の説得に乗り出した。
第2次投票の集計が出た正午すぎに始まった説得は、午後1時半からの決選
投票が締め切られる同3時近くまで続いた。第2次投票に参加しなかった教官
にも投票を呼び掛け、有効投票数は第2次の134票から135票に増えた。
薄氷の勝利を手にした陣営だが、国立大の在り方が問われる中でのかじ取り
の難しさは明白。「新学長はつぶてを投げられて任期を終えるだろう」という
陣営内の覚悟が、鈴木新学長の厳しい船出を表している。
インタビュー
帯畜大学長 鈴木氏に聞く
獣医学科分離・分割の考えはない
国民のニーズに合うビジョンを
帯広畜産大学の次期学長に決まった鈴木直義氏は13日夜、十勝毎日新聞社の
インタビューに答え、当選を果たした感想や今後の大学運営の決意などについ
て語った。(岩城由彦)
−わずか1票差での当選でしたが。
当選の知らせを聞き、改めて責任の重さを感じている。1票差になったのは、
教官の間に畜大が将来どうなるのだろうという不安があるから。それは当然と
考えるが、すべての教官には全体としてのバックアップをお願いする。学内融
和の上をいく協調のもとで、国民のニーズに合うビジョンを探りたい。
−文部科学省から、来年1月末までに大学構造改革の方針(遠山プラン)に
対する畜大の基本姿勢を示すよう求められているが、その対応は。
現学長(佐々木康之氏)が自助努力をもとにまとめた将来構想を踏襲する。
BSE(狂牛病)に対する畜大の最終検査機関としての役割などは、もっと大
学を挙げて強調すべきだ。今は単独で走るために足元を見つめ、動物の衛生管
理など社会が直面する問題について実績を積み重ねる努力が必要。再編統合に
時間を費やしている時期ではない。
−獣医学科の問題は。
他学科と分離・分割する考えはない。獣医学科は再編統合に傾き、後戻りし
にくくなっている感がある。一緒に難局を乗り越えたい。
−全国では国立大の再編統合の動きが加速しているが。
畜大には専門のあらゆる施設が整っており、BSEなど国の危機的状況を救
う使命がある。畜大だけが残ればいいというエゴではなく、国の信頼をまっと
うに受けられるよう尽くしたい。結果として再編統合に乗り遅れたとしても、
社会の緊急問題を請け負う以上、国には支援を求める。独立行政法人への移行
も含めた大学の方向性の土台を作り、若い人につなぎたい。