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独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育学部統合    地域連携念頭に論議を
.[he-forum 3063] 岩手日報論説12/1-up12/13-
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『岩手日報』論説  2001年12月12日付

教育学部統合 

地域連携念頭に論議を

 国立の教員養成系大学・学部を各都道府県に少なくとも1つ設置してきた基
本方針が転換される。全国に48ある教員養成系大学・学部の在り方を検討し
ていた文部科学省の懇談会は、隣接する大学・学部を再編・統合し、現在の半
数以下とする最終報告書をまとめた。これを受け、同省は2002年度中に再
編統合計画を策定する。

 報告書は▽少子化に伴う教員採用数の減少で、養成学部に入りながら教職に
就く割合は、かつての約80%から34%にとどまる▽規模の小さい学部が増
え、現状では学部、学生とも活力を失う▽交通網や情報通信技術の進展で、教
員養成を各県で行う必要性が薄れてきた−などを再編・統合の理由とする。

 教育の基盤づくりとして各県に置かれてきた教員養成機関の歴史を塗り替え
る大改革である。また、独立行政法人化の中で、待ったなしで迫る国立大学全
体の再編・統合の一環でもある。

 しかし、この再編・統合により必然的に教員養成系学部が消える「空白県」
も出てくるなど、地域への影響は大きい。従って、再編・統合が単なる数合わ
せであってはならない。関連地域の実情を十分に踏まえ、地域との連携や特色
を新たに生み出していくものであってほしい。

 大学の主体性が必要

 地域支援機能などの観点から「一県一教員養成系大学・学部」の体制見直し
を懸念する声も少なくない。だが、現状の体制がこうした機能を十分に果たし、
地域にこたえているか、疑問である。

 学校現場には、今、いじめや不登校、学級崩壊などの難題が山積、これらに
対応できないケースも目立つ。求められるのは、子どもたちが自ら学び、考え
る力をはぐくみ、個性を伸ばす教育の実践だ。そのための教員養成に向け、よ
り充実した教育の専門性が不可欠である。

 これまでのシステムでは、時代の要請にかなった教員養成の見通しが立たな
い。教員養成大学・学部を、地域・ブロック教育を支える機関としてよみがえ
らせなければならない。その意味で、教員養成機関の強化充実を図る視点から
の再編・統合は、妥当であると受け止めたい。「一県一学部」にこだわっては
本質を見失いかねない。

 今後、再編・統合の基準、学生規模、教員組織、空白県への支援体制など具
体的論議が展開される。ただ、具体的検討は、あくまでも文部科学省主導では
なく、各大学の主体性に任せることが重要であろう。

 探りたい多様な形態

 教員養成系と大学全体の再編・統合問題は、一体的に考える必要がある。教
育学部関係者は「総論(大学全体)より各論(教員養成)が先にきた」と戸惑
いを隠せない。しかし、まずは地域との連携を念頭に置き、学部の在り方を見
据えたい。

 教員養成学部がこれまで、実践とかけ離れた研究に目を奪われ、学校現場や
地域との関係が薄れがちだったことの反省から始めなければならない。大学、
学校、教委がスクラムを組み、地域に根差し、地域と共に支え合える学部は存
続されるだろうし、存続してほしい。

 例えば、本県の岩手大教育学部は弘前、秋田両大学との統合の可能性が高い。
どこの大学に学部を設置するかの論議が待たれる。3大学は全体の連携も視野
に入っているだけに、3大学の各種学部の特色も生かし合える協議を煮詰めた
い。さまざまな形態を追及する姿勢があすの大学を切り開く。

 再編・統合を柱とする国立大学の構造改革は、将来への布石として「聖域な
き」で進む。いずれ県域を超えた再編・統合はいや応なしである。必要なのは
時代に適応する建設的で前向きな視点であり、地元優先の"誘致合戦"だけは厳
に避けたい。

(吉田誠一)