☆「大学トップ30」プランで波紋、旧帝大優遇、批判根強く 私大・地方大、「公正な競争を」
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『日本経済新聞』2001年12月3日付
「大学トップ30」プランで波紋、旧帝大優遇、批判根強く
私大・地方大、「公正な競争を」
大学の研究水準を世界最高レベルに引き上げようと文部科学省が来年度から
始める「トップ30」。学問分野ごとに優秀大学を選び予算配分を重点化する。
トップ30に入るため地方大学や私立大学などは知恵を絞っているが、競争が公
正でないと反発の声が強い。
「理化学研究所との連携を埼玉大学の強みとしてアピールする」と兵藤学長
は言う。同大は埼玉県和光市に拠点を置く理研とここ数年、協力関係を築いて
きた。理研はバイオやナノテクで最先端をいく研究所。その理研の研究者20人
以上が同大で客員教授や助教授として活躍する。トップ30への選抜に理研と連
携を最大限活用する考えだ。
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文科省の「大学の構造改革方針」の目玉施策でもある「トップ30」は大学の
単純なランク付けではない。同省が示す10の学問分野ごとに、電子工学や材料
工学などといった「大学院の専攻」を10―30、公募を通じて選ぶ。選ばれた専
攻には五年間にわたり年1億―5億円の資金を支援する。来年度予算では211億
円を概算要求した。
埼玉大のように特色ある活動を売り込んだり、選抜対象分野をにらみ専攻再
編の動きも出始めた。
ただ選抜の仕組みには地方大や私大から反発の声が強い。同じ分野で1大学
から複数の専攻が選ばれる可能性があるからだ。例えば「情報・電気・電子」
分野では実績の高い東京大学や東京工業大学などの専攻が軒並み名を連ねると
いうこともありうる。
もともと文科省は大学の研究・人材育成能力を高めるためここ数年「大学院
重点化戦略」を進めてきた。博士課程のある国立大の大学院は全部で255ある
が、その4割は旧7七帝大を中心にした著名大学にあり、研究予算などでこれら
の大学を厚遇してきた。地方大学が「(研究能力を高めるため)博士課程の新
設を要望しても、文科省は首を縦に振らなかった」とある地方大学長はこぼす。
その上でのトップ30選抜は「ゴルフでいえば、プロとアマの対決で、プロ
にハンディを与えるようなもの」。黒川清東海大医学部長は旧帝大への「過保
護」を批判する。
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また文科省が例示した選抜分野は伝統的な学問分類が色濃く、この点にも批
判が強い。慶応大学の安西祐一郎塾長も「視野の広い人材を育てるため数学や
物理学、生命科学を網羅する専攻(基礎理工学専攻)を設立したところだ。トッ
プ30は研究のたこつぼ化を助長する」と話す。「大学を国が格付けするのはお
かしい」(梶谷誠電気通信大学長ら)という意見もある。
文科省は具体的な選考方法を来年初めにも決める。物議をかもしているだけ
に「(選考基準など)制度の透明性は確保する」という。大学に競争原理を導
入する動きは、研究プロジェクトを公募で決める「競争的研究資金」の拡大な
ど別の形でも進んでおり、そうした制度との整合性も問われる。
(矢野寿彦、長谷川章)