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☆<社説>産学官連携 大学主導で実りあるものに 
. [he-forum 3029] 毎日新聞ニュース7速報-up13/8-
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<社説>産学官連携 大学主導で実りあるものに

毎日新聞ニュース速報

 米国ではライフサイエンスや情報技術(IT)の分野で大学の研究成果が産学官連携
によって実用化され、産業の国際競争力向上に貢献している。

 日本はどうか。国内で生まれた技術が先に米国や韓国などで使われるケースが少なく
ない。欧米の大学に1件数千万円の研究資金を出すのに、日本の大学には数百万円だけ
という企業もある。

 大学で産学官連携を嫌う風潮は影を潜めたものの、まだ3者の取り組みに問題があっ
て新産業の創出などに結び付いていない。そこで政府の審議会や経団連が相次いで産学
官連携に関する報告書をまとめるなど、連携を加速しようという機運が盛り上がってい
る。

 「産学官連携サミット」もこのほど東京で開かれた。総合科学技術会議(議長・首相
)を抱える内閣府と経団連、日本学術会議が主催し、300人余が出席した。

 科学技術創造立国を目指す政府は、今年度スタートの第2期科学技術基本計画で国家
的・社会的ニーズが高いライフサイエンス、IT、環境などを、特に重点を置く分野と
し、「国際競争力がある国」などの国家像を掲げた。

 文部科学省は国立大学に民間的発想の経営手法導入や「国立大学法人」への移行を求
め、経済産業省は3年間で大学発ベンチャー企業1000社を目標にする。

 そして産学官連携の大合唱である。長引く不況の中で3者が協力して経済の活性化、
豊かな社会の実現を目指すのは理解できるが、気になることも少なくない。

 これまでは大学よりも産業界が連携の必要性を主張し、経団連は国立大学の法人化に
当たって「非公務員型の導入を」とまで注文を付ける。一方で大企業は博士号取得者を
あまり採用しないし、日本の大学に出す研究費は少額に過ぎない企業が多い。産業界の
意識改革がまず必要だろう。

 大学人も研究成果を社会に還元する、実践的な人材を企業に送るという意識に欠けて
いる。これからは大学で何をやりたいかを積極的に発信し、自らが主導権を握って産学
官連携を実りあるものにすべきだ。大学院教育の充実、異分野との交流が特に重要にな
る。

 もちろん、国立大学協会を中心に「本来の目的の教育と研究をよりよいものにするた
めに産学官連携がある」などの原則を確立すべきだ。健全な連携のため企業と組織間の
契約にし、論文発表の自由や知的財産権の扱いについても明確なルール作りが必要にな
る。

 政府は大学のコントロールを考えるのではなく、研究者の兼業や人事交流、大学から
企業への技術移転などがスムーズにいくように制度改革を進めてほしい。国立大学の老
朽化した施設の整備に力を入れることも欠かせない。

 新たな動きの中で大学の純粋な基礎研究分野の人たちが将来に不安を抱く。大学は独
創的研究の重要さを認識するとともに、古くなった学問分野から脱却し、幅広い視野と
専門性を持つ人材を育成することが求められる。それが真の産学官連携につながる。



[2001-12-08-00:20]