トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆「教員養成課程の再編は慎重に」 
.[he-forum 3026] 福島民報論説12/05-up12/6-
---------------------------------------------------------------

『福島民報』論説  2001年12月5日付

「教員養成課程の再編は慎重に」
 
 いつも気がひけるのは「総論賛成、各論反対」の立場をとる場合だが、ここ
はあえて一言、主張しておきたい。総論とは小泉首相のいう聖域なき構造改革
であり、国民がそれぞれに痛みを分かち合ってでも戦後半世紀を経た社会全体
の制度疲労を克服して、21世紀の新たな活力を生み出して行かなければなら
ないということである。すでに実施の中央省庁の再編はじめ、金融制度の改革、
道路関係4公団の民営化、通信の規制緩和など勇気をもって大胆に進めてもら
いたい。

 さて各論反対の各論とは、今回明らかになった国立大の教員養成課程の統廃
合である。少子化現象の進展、荒れる学校現場、理系学生の学力低下、世の中
にうまく適応できない新卒者の再教育など、最近マスコミにも取り上げられて
きた教育問題は枚挙にいとまがない。だからいま教育改革も大学改革も緊急に
必要であることに異論はない。ただし現在進められている一連の制度変更がこ
れらの課題の解決に役立つかというと、どうも形いじりばかりが先行して、改
革の実が伴わないのではないかと危ぐしてしまうのである。

 国立の教員養成系大学・学部のあり方を検討してきた文部科学省の有識者懇
談会は先月22日、1都道府県に1教員養成系大学・学部を設置―というこれ
までの方針を転換し、全国48大学・学部を2カ所、あるいは3カ所ずつ統廃
合して現在の半数以下にするべきだという最終報告書を提出した。これを受け
て同省は来年度中に再編計画をまとめ、早ければ2003年度にも統合を実現
する。

 この中にはもちろん福島大教育学部も含まれることになる。再編の理由は新
卒者のうち教職に就く学生が年々減少し、教員養成系の活力が失われつつある
ことや、交通通信網の発達ですべての都道府県で教員養成を行う必要性が薄れ
たことなどが挙げられている。しかしこれらの一見、もっともな理由の陰に行
政効率だけを最優先する国の姿勢が見え隠れしているように思える。

 当事者でもある福島大は自ら、現行の3学部の再編と自然科学系学群の創設
を柱とする学科再編作業の真っ最中だ。報告書に対する考え方は先月30日付
本紙の「視点論点」に登場してもらった下平尾勲・同大地域創造支援センター
長のインタビューに詳しく述べられている。重複を避けるがまったく同感であ
る。

 昨年8月17日付の本欄の「国立大の独立法人化は必要か」でも述べたが、
学術研究や学生の教育など、いわゆる国公立大学の運営は経済性とか、採算性
などとは基本的になじまないし、なじませれば無理が生じる。特に教員養成課
程は「人づくりを担う人」の人づくりだ。現況がベストとは思わないが、効率
が上がらないから統廃合をするのでは、まるでIT産業の生産工場と同じ扱い
となる。

 福島大の場合、常識的に考えれば宮城教育大、山形大、茨城大、宇都宮大あ
たりが統合相手になろうが、新学部が福島県に開設される保証はまったくない。
各県の教育界関係者がそれぞれこぞって存続運動にやっきとなるようなばかげ
た事態にだけはならないように願っている。(渡辺 智衛)