☆国立三大学統合へ――独立行政法人化を前に生き残りをかけて
.[he-forum 3015] 「海つばめ」 10/21 p. 2-up12/6-
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いささか旧聞ですが:
「海つばめ」2001年10月21日 第842号 p. 2
【生き生き・地方情報】富山
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富山県内の国立三大学--富山大・富山医科薬科大・高岡短期大--の学長が、
2003年度を目標に統合することで合意した。6月初旬の「大学の構造改革の方
針」(いわゆる遠山プラン)の「現在99ある国立大学の数の大幅な削減を目指
し、再編、統合を大胆に進める」を実行に移したものであり、同月中旬の国立大
学学長会議での「一県一大学が未来永劫の原則であり続ける保証はない」との政
府の発言を受けてのものである。
音頭は富山大学がとった。地元紙によれば、文科省は富山大学を真っ先にリス
トラ対象にするとの危機感ゆえだという。人文学部の入試ミス隠ぺい問題があっ
たからである。これを「文科省が統合を迫るカードとして突きつけた」わけであ
る。これは、大学入試センター試験の数学の配点を誤り、97・98年度の2年間で
16人の受験生を不合格にしていたもので、しかも今年の2月には文科省に「ミス
はなかった」との虚偽の報告をしていた。16人のうち3人が入学を希望し、うち2
人は7月に入学した。もう1人は3年に編入学して今月3日に入学式が行われた
が、彼女は不合格後に他大学に入学・卒業して、現在は社会人だった。
3学長による統合案では、教育学部の縮小と教員養成を目的としない「ゼロ
免」課程の廃止といった全国的な流れを受けて、富山大学の教育学部が縮小ある
いは解体(他学部への吸収)される。教員採用が毎年10人前後(就職率は全国平
均を下回る25.7%)では仕方がないとの意向である。ほかは単なる寄せ集めだ
が、独立法人化前なら教職員の身分も守られるので、「痛み」もより少なかろう
ということで、これからリストラが図られるのであろう。
ただ、他の2大学と違って、医科薬科大学ではまだ学内の合意が得られていな
い。「まず、富山大がリストラ案など具体案を示すべき。単に統合するだけでは
共倒れになる」。「長い間、論文の1つも書かなくてもやっていける教授もいる
文科系をしょいこんでも、お荷物になるだけ」との声もある。同大は、国内で唯
一、医、薬の両学部を持つ医療系総合大学という「強み」をもち、--ただし、県
内の医療機関では金沢大医学部卒に牛耳られている--、特に薬学部は25年前に富
山大から移行したという経緯もあって、「出戻り」に対する抵抗感もあるとい
う。
政府の大学改革案では、大学の法人化によって、研究で生まれた特許を実用化
する「100パーセント子会社」を持つことができ、収益も自己収入として使える
ことになるが、医科薬科大は収益の出る附属病院を持っているし、和漢薬研究で
は国内をリードしているそうで、文科省のいう「トップ30」に入る自信があるの
かもしれない。そうなれば、予算の重点配分も受けられるのである。今回、富山
大学は入試ミス隠ぺい問題のペナルティとして、学長裁量経費の約3割を占める
「プロジェクト経費」7000万円を全額カットされたが、これなどは「トップ30」
大学に入らなければどうなるのかの良い見本といえよう。
30数年前の学生たちは「産学協同」に反対した。つまりは、資本の支配を積極
的に担おうとする大学に反対したということだが、今やその「共同」はより意識
的で、あからさまである。経済産業省は「大学の豊富な知的資産を企業活力に結
びつけて産業活性化を図る」(平沼プラン)と言い、経団連も産官学の連携推進
を提言する。NECは大学の教授や学生をそのまま向け入れて、特定の研究テーマ
を共同研究する「連携ラボ」をつくり、トヨタは共同研究の相手として、大学や
研究機関の若手研究者を公募するという。そして、野依教授のノーベル化学賞受
賞も「産学連携」のお手本として賞賛されている。生産と教育(研究)の結びつ
きは、この社会が資本主義社会であるがゆえの様々な歪みや限界を持たざるをえ
ないが、「大学自治の形骸化をもたらす」なとと言って、その結びつきを断ち切
ろうとするのは反動的である。
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Yasuhiro ISCIDA
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