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独行法反対首都圏ネットワーク

☆声明 「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会報告書」に未来は託せない 
.[he-forum 3014] 大教中央執行委員会-up12/4.-

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全大教中央執行委員会は下記の「声明」を発表しました。

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声明 「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会報告書」に未来は託せない

2001年12月5日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

一、「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」は、11月22日に最終報 告書「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について―国立の教員養成系大 学・学部の在り方に関する懇談会報告書―」(以下、「報告書」という。)を提出した。
その主な柱は、1,一万人の教員養成課程の総定員は維持 2,1県1教員養成系大 学・学部の原則を放棄し、「教員養成担当大学」と「一般大学」に再編・統合 3, 「教員養成担当大学」には原則として教員養成課程だけを置き、教育のみならず研究 面においても「教員養成学部の独自性」を追求する 4,教員養成課程が無くなる 「一般大学」には、新課程をもとに、教養教育を担当する組織や地域の求める人材を 養成する組織等を設置 5,附属学校については、「独立採算制への形態への移 行」、統廃合や地方移管、学級数削減等を行うとしている。

二、私たちは、下記の理由から、本「報告書」の内容は、今後の教員養成系大学・学 部の在り方、さらには国立大学の在り方に重大な禍根をもたらすものであると判断 し、強く反対する。

 第一に、本「報告書」は文部科学省が長年にわたって推進してきた「教員の目的的 計画養成」政策が実質的に破綻したことを反省し、戦後の教員養成に関する二大原 則、すなわち「大学における教員養成」「開放制」の原則に立ち返ろうとはせず、従 来通りの「目的的計画養成」政策の枠内においていっそう閉鎖的な教員養成システム を構築しようとしている。
 文部科学省が1960年代以降に推進してきた「教員の目的的計画養成」政策の下で、 画一的な管理養成が行われ、数次にわたる教員免許法の改正、課程認定基準の改訂等 によって、教員養成系大学・学部のカリキュラムや教員組織は閉鎖的で硬直したもの となってきた。しかも小中学校教員の新規採用者数が減少するに及んで、1980年代後 半以降、「計画養成」策を維持するために、新課程の設置、ついで学生定員の5000人 削減などの措置がとられてきた。本「報告書」が新課程切り捨てを示したことは、 「計画養成」政策がいかに体系的な展望の無かったものであるかを如実に示すもので ある。
 本「報告書」は、教員養成課程1万人体制を維持した上で、再編されて存続する教 員養成系大学・学部においては、教育面のみならず研究面においても「教育学部らし さ」「教員養成学部の独自性」の追求を一面的に強調し、教科専門の教員の専門分野 に関する研究についても、「教員養成学部らしさ」を求めている。これは教員養成系 学部から学問・研究を切り捨てようとするものである。学問・研究の成果をふまえた 教員養成ということが、「大学における教員養成」の原則の重要な側面であるが、こ のような閉鎖性をいっそう強めようとする志向は、この原則を大きく逸脱するもので あり、厳しく批判されなければならない。

 第二に、本「報告書」の内容は、現在重大な局面を迎えている国立大学の再編・統 合の動きに強権的手法により拍車をかけようとするものである。
 「大学(国立大学)の構造改革の方針」(「遠山プラン」)に基づいて、大半の国 立大学は再編・統合プランの提出を求められ、2002年1月の文部科学省ヒアリングに 向けて対応策を迫られている。教員養成系大学・学部の大幅な再編・統合を提示した 本「報告書」が、国立大学の再編・統合を拙速かつ一挙に推進する契機とされる危険 性はきわめて大きい。「遠山プラン」にせよ本「報告書」にせよ、文部科学省が大学 に直接に指示し、実質上拘束して、再編・統合を推進しようとする事態は、きわめて 異常なことである。
 その柱として、懇談会は1県1教員養成系大学・学部の原則の放棄という非常に乱暴 な帰結を導こうとしている。歴史的に蓄積され醸成されてきた大学と地域との重大か つ密接な教育的・文化的連携を、ほとんど学術的観点もなければ実証的な論理展開も なしに切り崩そうとしているのである。
 また教員養成系学部が廃止されれば、他の学部における教員養成にも多大な支障が 生じ、すべての学部の学生に教員となる機会を開いていた「開放制」の原則が大きく 損なわれることになる。国立大学から国民的課題である日本の教育に責任を負う部門 を無くしてよいのであろうか。
 そのことは、国立大学として担うべき地域社会に対する教育・文化を通じた貢献と 基盤を著しく弱めるものにほかならない。
 このような重大事態が想定されるにもかかわらず、本「報告書」は、300名、400名 の規模の教員養成系大学・学部でなければ、「優秀な教員の養成」ができないとし て、再編・統合を進めようとしている。しかし実際にこのようなスケールメリットが 存在するのかは、いっさい論証されていないのである。また交通・通信手段の改善も あるので、統合して差し支えないというに至っては、他の学部を統廃合しようという 場合にも使用できる論法であって、地域に育つ青年の進学機会保障、地域の教育・文 化の個性ある展開の条件整備に背を向けた、無責任な言辞と断ぜざるを得ない。
 また附属学校については、大学と附属学校が多様な連携形態を探求して、研究協力 や教育実習のいっそうの充実をめざすとともに、そのための条件整備がはかられるべ きである。しかるに本「報告書」は「まず再編・統合ありき」の態度をとっており、 あるべき方向に逆行していると言わざるを得ない。
 
 第三に、初等・中等教育現場で抱えている現在の問題解決に資するものではないと 言わざるを得ない。
 初等・中等教育現場では、いじめや不登校の増加、学級崩壊等多くの問題が生じて いる。このような問題は、学校現場の努力だけをもって解決できるものではないが、 少人数学級の導入や現職教員の研修機会確保など教育現場の条件改善も必要となって いる。しかしながら、本「報告書」は40人学級の維持を前提としており、多くの国民 が求める30人以下学級編成に向けた教員需要の検討はなされていない。また、現職教 員の研修についても、教員養成系大学・学部の統合により、逆に条件が制限されるこ とにつながることは明白である。

三、私たちは、中長期的な観点からの展望が欠如したまま、文部科学省からの強要・ 指導のもとで再編・統合が「強行」されないことを強く求めるものである。言うまで もなく私たち大学の教職員においても「構造改革」に乗るために教員養成系大学・学 部を犠牲にしたり、切り捨てたりするべきではない。教員養成系大学・学部の直面し ようとしている問題は、教員養成系大学・学部だけの問題ではなく、大学としての教 員養成の在り方、大学の将来に関わる重大問題である。「報告書」に対して、教育関 係者、報道界等からも広範な疑問と批判がだされている。
 私たちは、大学における教員養成及び地域社会における教育・福祉事業等に携わる 「広義の教育者養成」等、将来の地域社会をになう人材育成と教育・文化への寄与こ そが必要不可欠と考え、それらを大学の機能として位置づけることを求めるものである。
 私たちは、社会的責務をになう大学・高等教育の総合的充実をはかる立場から、今 回の教員養成系大学・学部問題について、「理念なき再編・統合」に反対し、学内で の合意形成と地域社会の理解と支持を得るため、広く共同したとりくみをすすめるも のである。


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