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11・14国立大学長会議での遠山文科相、長尾国大協会長、小野事務次官の挨拶
文教ニュース 第1652号 (平成13年11月26日)
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大学関係者との共同作業で良い大学作りを
遠山文部科学大臣
国立大学長懇親会で大学の置かれた立場や国際競争力で理解と協力
遠山文部科学大臣は11月14日、学士会館で開かれた国大協主催の学長懇親会で、@今回の日本そして大学の置かれた役割や立場を充分認識されたいA大学改革は個性ある輝ける国際競争を持つ大学になるため今が好機であるB大学関係者との共同作業によって良い大学を作り耐えていきたいと挨拶し理解と協力を求めた。
遠山大臣の挨拶概要は次の通り。
「皆さんこんばんは。今日は、国大協の総会の後にもうけられております懇談会にお招きをいただきまして、ありがとうございます。私は小泉内開のメンバーの一人になりまして、といいますか引き受けさせられまして半年たちました(実)。なかなかその大臣の仕事というのもタイトでございます。霞ヶ関にいたときも、随分働き者のほうであったと思いますが、また大使で出ておりましたときも、ずいぶんやったと思いますけれども今はなかなか大変でございまして、本日も一日、予算委員会で、拘束されておりました。今やっと抜け出して参りました。お昼、空を見たら、真っ青な空でして、この空の下を歩けたら良いなあと思ったのですが、そういうわけにも参りませんでした。
今、文部科学省も守備範囲が大変広くなって参りました。以前、私が使えていた大臣の時よりも、いろいろな意味で大変でございます。 一つは科学技術関係の仕事が増えたこと。これは私にとりまして、学術行政を10年以上やって参りましたので、むしろ科学技術とそれが一緒になって、良いプラスの面が出て来たらと思っておりまして、楽しみにやっている仕事でございますけれども、それ以外に、ご存じのようにいろんな改革が進んでおりまして、小泉内閣自体が構造改革内閣ということでございまして、日頃、これまで経験しないような仕事に加えて、その仕事の量と質というのは大変なものでございます。もっとも安泰な時であったらたぶん指名されなかのではと思っておりますけれども(笑)。
私はご存じと思いますけれども、高等教育関係は学術で10年やりました以外に企画課長を3年やりまして、ちょうど大学審議会を立ち上げる時でございました。その意味で大学改革の推移については、常に非常に応援もしましたし、またその推移を見守って参ったと思っております。でまたその後に、高等教育局長、ちょうど大学改革が軌道に乗り始めた頃に担当させていただいたわけでございます。そのようなことで1990年代に入ってもう一つの大学改革の波が順調に走り始めた、いやその後いろんな問題が、国立大学のみならず、公私立大学にも影響を及はして、日本の大学が再生に向けて、力強く歩みだしていったなあという概念をもってトルコヘ行っていたわけでございます。
3年余向こうで働きまして帰って参りましたら、日本はずいぶん変わっておりました。まず省庁再編、そのうちに美術館長になったのですが、国立美術館ハ回立博物館が独立法人ということになりまして、4つの美術館がひとつの独立法人になったその理事長もやらしていただいたわけでございます。その他に相当驚いたのは、国立大学まで法人化しなければいけないというのを聞いたときでございました。ただその後に独立法人の理事長として仕事をしましたときに、むしろこの機会に、いろんな意味で今までできなかったことをできるのだなあと確信を持ったわけでございます。その仕事をむしろ力強く進めようと ました。それから6ヶ月の間、私はいろいろな仕事をしながら文部科学省の守備範囲というつのは、国民に希望を与えうる唯一の官庁ではないかと思うわけでございます。 一つは人間の知の部分、ノーベル化学賞で受賞者が昨年に続いて国民に希望を与えたこと、あるいは何回も失敗していたロケットが打ち上がってあんなに国民の皆様が喜んでくださったこと。あるいはスポーツにしても文化にしても、21世紀いろんな問題を抱えておりますけれども、国民に希望を与えるのは、我が文部科学省の守備範囲の仕事ではないかなということで、大変な責任を感じながら明るいことを考えようと思っているところでございます。
そおいうなか国民が一番期待しているのはやはり大学でございます。就任しまして2ヶ月間は教育改革三法、大変な難事業でございましてけれどもそれに迫われ、教科書問題、あるいは池田小学校の仕事に追われておりましたが、その時同時に経済財政諮問会議によっていろんな国に係わる仕事、機関というものを見直そうと、そして民間でできるものは民間で、地方でできるものは地方でという、強いリーダーシップないし、会議のメンパーの意向によって、国立大学についても民営化をということが明瞭化したわけでございます。そのような時期に、文部科学省として不作為ではありましたが、英明な先生方はどのようになったかということはご推祭いただけるのではないかと思っております。
その時に思ったのは、私は日本にとって今大事なのはやはりこの世紀を生き抜いていく日本としては、既に言われておりますけれども、知の再構築と中しますか、本当にその日本人の英知を集めて、そして優れて人材を養成すること、なかでも独創的な基礎的な優れた研究をやっていただくこと、そして国民の期待に答えること。国民が一番期待しているのは、教育ないし研究を通じて、優れた人材を育成することないし、そういう人達が本当に力強い意欲と情熱と力を持って生きていく、そういうエネルギーを与えてくれることではないかと思っております。
その意味で、経済財政諮問会議における議論が、どうしてもそれは経済の効率化ないし財政の効率化ということで、先ほど申したような行き方になりそうになった訳でございます。その時に出したのが、大学の構造改に文部科学省はずっと歴代の先輩達、そして歴代の学長の皆様との共同作業によって、日本の大学、特に設置者としての責任のある国立大学について充分に支えようとし、そして共同作業をしてきた役割を持つ官庁でございます。そういう姿勢で勿論これからもいるわけでございまして、その点については何らご心配はいらないと思います。
しかしながら同時に現在日本で起きているこの経済財政状況、そして国民の持っているいろんな不安、そして思いもかけないあの同時多発テロのような事件を通じて、全世界が今萎縮し始めている、あるいは非常に将来が見通しにくいこの世の中におきまして、いったいどうして良いのか、今会長は、国立大学は五里霧中と会長はおっしゃいましたけれども、日本全体、世界全体がそういう状況でもあるわけでございます。私は、大学関係者はこれら何ら思い悩む必要は無いわけでございます。これは本来の大学が帯びている、本来の大学が達成すべき使命、優れた人材養成、そして優れた研究、そういうものを通じて本来の使命を果たしていただくこと。同時にそれを発揮しながら、地域社会に、ないし国に貢献していただくことであろうと思います。
もし回立大学として将来ともにいくということであれば、それは他の設置形態の大学が行っていることと同じことをやって一言っていいわけはございません。今日タックスベイヤーの日は非常に厳しいいものがございます。そういう日に耐えて、ああやはり、あれは国立大学として立派だと思ってもらえるような大学にしていただきたい。それがあの方針の根底に流れるものであります。
従いまして、あの方針が唐突であるとか、あるいはプロセスの面において唐突であるないしエネルギーが無いというお話がございますが、とんでもないことでございまして、私ないし担当の者達も、また先輩達もあのように10年以上をかけて、26もの答申を出していただいた遺産を、優れた思考の遺産を持っているわけですね。そういうものをベースにした上で、今日の危機にどう対応していくかということで考えられた方針であるわけでございます。明日ですね、本当は明日うかがって、この席で文部科学大臣として、明確にいろんなことをお話ししたかったわけでございますが、明日も一日参議院の予算委員会でとられましておうかがいすることができません。ただその私が正式にお話しすることについて、明日小野事務次官の方から話してもらいます。また同時にいま先生方がおそらく一番、その悩んでおられる、あるいは疑問をもつておられる点もあるでございましょうけれども、そういうことについての方針の考え方、ないしその意味づけにつきましては、別途ベーパーを用意いたしております。先生方にいろいろなご疑門に答えていこうということである訳でございますo
したがいましてお願いしたいことはいくつかございますけれども、まず今日の日本とそして大学の置かれた役割ないし立場を充分ご認設いただきたいと思います。そして2番目には今が大学改革、本来やつていただく大学改革の好機であるということでございます。この機を逃しては、後に、私は悔いが残ることになると思います。その具体的なことは申しませんけれども、英明な学長の方々は、あのときやっていなかったから、というふうなことを将来悔いていただくことがあるかもしれません。つまりこういう要請ないし国民の期待、その他、つまりまたあの大学審議会で蓄積された、この今日の大学改革の分科会で審議され、そこで功をねらった本当に個性ある輝ける大学、そして国際競争力を持つ大学というものになっていく、そういう好機であると思います。そのようにお考えいただきたいと思っています。
そして三番目には文部科学省はあくまで設置者として充分な任務をはたしてまいりたいと思います。これまでと同じように、それは文部科学省の職員とそして大学関係者とに共同作業によつて、良い大学を作る、耐えていこうということでございます。いま高等教育局の方で改革の専門官の部屋もおいてありますから、いつでもそこにおいでださい。また、私も大変な時期ではございますが、もし国立大学長からの面会の予約があれば、何をおいてもお目に掛かりたいと思っております。そのような是非とも、今回、特に明日お出ししますペーパーでお話を聞いていただいて、もっと私も先生方のいろんなお立場、ないし悩み、そういうものをお聞きできる機会があると良いとおもいますが、時に出張にでました時には、何人かの先生方には既にお目に掛かっておりますが、出来るだけお目に掛かりたいと思っております。大事な事は、大事をする時には、非常に歩く人間は信頼を持つということでございます。そういう風に考えておりますので、是非ともこの機会に先生方もいろんなお考えを私の方に充分ぶつけていただきたいと思っております。
これからの日本、これからの世紀、そこを生き抜いていく若い人達をどのように私どもが責任を持って養成していくか、そのようなことについてまた皆のお知恵があればどんどん取り入れて行きたいと思っているところでございます。せっかくご馳走が並んでいる中で長話しはできません。けれども私もまでしばらくここにいるつもりでございますので何なりとご高見を賜ればありがたいと思っております。いろいろお話したかったのでございますけれども、それぞれの方針のコメントについて話し始めますと1時間くらい、そのくらい時間がかかると思いますので省略させたいだだきますが、先生方の各大学におけるご活躍とそして大学の関係者を是非今日の条件について知覚していただくようなリーダーシップを発揮していて、ともに日本のために働いてまいりたいと思うわけでございます。本日はどうもありがとうございました。
長尾国大協会長の挨拶は次の通り。
「現在、国立大学は、なんて言いましょうか、全く、霧の中をかき分けかき分け、どっちを向いて進んだらいいのか、なかなか難しい状況の中を行っているわけでございます。なんて言いましても、高等教育の将来という事につきmしては、文部科学省の関係の方々が、日夜考えてくださっているわけでございますが、本当に私どもの現場にいる学長こそが、この高等教育の将来について、最も心配しているわけでございまして、そういおう意味でこれからも文部科学省の方では、是非私どもの現場の声、心配、そして将来への考え方というものについて、広くお聞きいただけると大変ありがたいかと思っております。そういう会になりますよう、ひとつ今日は、いろいろフランクにご懇談いただければありがたいと思いますが。
文部科学省のほうで考えておられることにつきまして、遠山大臣がわざわざ、お忙しい中、おいでいただきまして、お話をくださるそうでございますので、私ども99
の国立大学の学長も良くお聞きいたしまして、明日へ糧にしたいという風に思っておるわけでございます。いずれにしましても、この遠く(高く)掲げます理想というものと現実のとギャップといいますか、あるは旗として掲げていることと、実際の財政上の問題たか、いろんな面で乖離があるんじゃないかという心配もございますし、いろんなことが、ございますので、これから、あと一年、二年ぐらいですか、ここが、私どもといたしましては、最大の山場ではないかというふうに思っております。そういったことで文部科学省と今後とも良くお話し合いをさせていただきたいと思って降りますので、よろしくお願いいたします。
小野事務次官の挨拶概要は次の通り。
「本日、ここに国立大学長懇談会が開催されるにあたって、学長の皆様方の日頃のご尽力に深く敬意をあらわしますと共に、私の所見の一端を申し述べる機会を賜りました事に感謝いたします。
はじめに、先般、米国において、同時多発テロ事件が発生し、また現在、炭素菌による事件も広がっております。これは、米国だけの問題ではなく、日本を含む国際社会への大きな脅成であり、断じて許されないものであります。日本政府としても、国際的な協力を実現するため鋭意取り組むと共に、国民の安全と安心を確保するため、関係府省が相互に連携して万全の体制をとることとしております。各大学に置かれても、その保有する生物剤、科学剤等の厳格な管理や医療面での協力体制などの万全の廃寮をお願い致します。
小泉内閣が発足し、約半年が経過いたしました。その間、私は、我が国が二十一世紀において活力ある国家として発展し、子供たちが夢と希望を抱く事のできる明るい未来を切り拓いていけるよう、「教育は国家百年の計」という認識にたって、教育改革の推進や諸施策の充実に取り組んでまいりました。初等中等教育段階においては確かな学力の育成と「心の教育』の充実に重点をおいて各般の施策を進めておりますので、高等教育段階においても、各大学における学生の受け入れ及び教育面の充実について、今後とも充分なご配慮をお願い申し上げます。
「知の時代」とも言われる二十一世紀に入り、「人材大国・科学技術創造立国」を目指すわが国にとって、「知の創造と継承」を行う大学の果たす役割は極めて重要であります。おれまで十年以上にわたり大学審議会等での熱意溢れる審議の成果のベースとして、各大学において改革がすすめられてまいりました。しかし、現下の我が日の厳しい経済社会情勢の下、国政全般にわたって聖城なき構造改革の断行が求められております。そうした中で、先般、大学の構造改革による日本の再生と発展への貢献を期して、 「大学(国立大学)の構造改革の方針」を打ち出しました。
特に中し上げたいのは、この大学の構造改十の方針は、我が国の大学、なかでも国立大学が、国民の期待にこたえ、その課せられている主要な役割を果たすため、それぞれの特徴を生かしつつ、教育や研究等の上でより一
層活力に常み、日際競争力のある大学になることを願ってのものであり、また、基本的に、これまでの大学改革の流れを附まえて策定したものであります。我か省としても、各大学における積極的な取組を支援してまいりたいと考えておりますので、どうかご理解のほどをよろしくお願いいたします。
各大学での真勢な御検討と創意工夫あふれる御努力によって、それぞれの大学の特色を生かした「個性揮く大学づくり」が進み、その中でより大きな学術文化の一化が咲き、 「知的存在感のある国」づくりへの貢献がなされることを期待しております。
このほか、大学関係の事項に若干の言及をさせていただきますと、育英奨学事業については、厳しい概算要求基準の下ではありましたが、無利子貸与・有利子貸与事業を通じて、その充実を図ることとしております。
また、学生の就職を取り巻く状況は、厳し旦展用情勢が続く中、なお厳しいものと認識しております。我が省としても桟会あるごとに、各経済団体に対して学生の雇用枠の拡大などについて格段の配慮をお願いしておりま
すが、各大学におかれても、引き続き学生一人一人の個性や能力に応じた、きめ細かな就職指導の充実等に努めていただくようお願いいたします。
さらに、大学入学者選抜のより一層の改善に取り組んでいただく一方で、入試業務におけるミスの防止に万全を期するようお願いいたします。
次に、「科学技術創造立国」の実現についてであります。先般、名古屋大学の野依良治教授がノーベル化学賞を受賞されるという大変嬉しいニュースがありました。昨年の白川博士の受賞に続く野依博士の受賞は、長年にわたる地道な御努力の積み重ねによる独創的な研究成果が世界から高く評価されたものであり、誠に御同慶の至りです。今後とも我が国から人類の未来を拓き、世界をリードする研究成果が続々と発信され、我が国が知的存在感のある国として世界に貢献していくことが期待されており、基礎研究の振興がこれまで以上に重要と認識しております。このため、本年三月に策定された「科学技術基本計画」に沿つて、独創的な基礎研究と、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料等の重点分野の研究開発とをバランスよく推進するとともに、宇宙開発や原子力の研究開発についても着実に推進してまいります。
また、優れた研究活動を助長し、支援するため、競争的資金の改革・拡充、優れた研究者・技術者の養成・確保、大学と教育現場との連携による科学技術・理科教育の充実などの話施策を推進してまいります。さらに、教育研究の環境を改善し、その成果を高めることは重要な政策課題の一つであります。そのため、国立大学等の施設の整備については,本年四月に策定した「国立大学等施設緊急整備五か年計画」に基づき予算の確保に努めるとともに、他省庁等との連携やPFI等新たな整備手法の導入も図るなど、国立大学等施設の重点的・計画的整備を図ってまいります。
我が国経済の活性化を図る観点からは、大学等の英知や優れた研究成果の積極的な社会還元について、産業界をはじめ国民から従来以上に大きな期待が寄せられております。我が省としては、各大学の自主性を尊重しながら、企業との共同研究の拡充、技術移転機関(TLO)による大学等の研究成果の特許化、国立大学の教員等の兼業の緩和などを進める一方、大学を核としたベンチャーの創出支援や地域科学技術の振興を図る産学官連携システム改革プランを推進してまいります。各大学における積極的な取組をお願いいたします。国際課の進展が著しい今日、我が国の大学に対する国際社会の期待はますます増大しております。教育、学術などの面で交流を促進するとともに、積極的な国際貢献を進めていくことが重要であり、各大学の幅広い御協力をお願いいたします。なお、本年七月にイタリア・ジェノバで開催された先進国首脳会議
において、教育が一屈用と成長の基盤であることが確認され、発展途上国への教育協力の重要性が共同コミュニケにも盛り込まれました。古くから人づくりを回づくりの基本と考え、教育分野での取組を重視してきた我が国としては、今後、我が国が教育において培ってきた経験や、我が国の持つ人的資源をより効果的に生かした協力を行えるよう、先月発足しました。国際教育協力懇談会において協力の拡充の可能性を検討しております。
また、今年は、我が国が外国人留学生の受入制度を制定してからちょうど百年目に当たり、これを記念して、天皇・皇后両陛下の御臨席を仰いで記念式典を開催したしました。各大学の御努力もあり、今年の留学生数は約七万九千人と過去最高の数になっておりますが、今後とも、各大学におかれては、留学生が日本に留学して本当に良かったと思えるよう、受入対制の充実に更なる御尽力をお願いいたします。生涯学習機会の実現を目指す上で、大学の持つ機能が活用されるよう、開かれた大学ヘの期待が高まっております。これまでも、社会人特別選抜や夜間大学院、科目等履修生制度等の活用、子どもたちの体験活動に重点を置いた公開講座の実施等に取り組んでいただいております。昨今の雇用の流動化や厳しい経済情勢に対応するため、各大学におかれては、インターンシツプの導入による職業観の涵養や教育訓練給付制度を活用した社会人キャリアアップ教育の推進なども含めて、社会・雇用の変化に対応できる人材の育成や世界に通用する高度職業人の養成に更なる御尽力をお願いいたします。我が省としても、法科大学院のスタートに向けた取組も含め、プロフェッショナルスクールの整備や関係予算の充実など、社会人等の能力開発のための学習機会の拡充について、各大学の取組を積極的に支援してまいります。また、政府においては、五年以内に世界最先端のIT国家を実現することを目指した「eーjapan」構想に基づき、各般の施策を総合的に推進しております。生涯学習分野においても、衛星通信やインターネツトを活用して大学の公開講座等を全国的に提供するシステムの構築に関する研究に着手しておりますので、各大学におかれても積極的な御協力と御活用をお願いいたします。
最後に、行政改革は政府の最重要課題の一つであり、現在、特殊法人等改革、公益法人改革、公務員制度改革、規制改革等各般の話課題に取り紅んでおります。これらについては、年内又は年度内に改革実施に向けた計画を策定する予定であり、我が省としても担当する教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の国民生活における重要性を踏まえつつ、必要な改革に適切に対応してまります。
以上、目下重要と考える幾つかの問題について私の所見の一端を申し述べさせていただきました。学長の皆様方におかれましては、多事多難な中、御苦労をおかけいたしますが、現在の皆様方の御努力が、新世紀の我が国を支えていく基盤になるとのご認識を新たにし、リーダーシップを十二分に発揮され、それぞれの大学がその特性を生かしつつ、社会の期待にこたえ、より活発で充実した教育研究活動を展開されるよう、 一層の御尽力をお願いいたします。我が省としても、皆様方の御努力には最大限の支援を惜しまないことをお約束申し上げて、私のあいさつとさせていただきます。」
中教審に教育振興基本計画の策定を諮問
遠山文部科学大臣「新しい時代にさわしい教育基本法の在り方」と二つ1年かけて審議
遠山文部科学大臣はH月26日、港区南青山のフロラシオン青山で開かれた中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶大学長)に対し「教育振興基本計画の策定について」と「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」諮問した。中教審では一年かけて審議を行う。
遠山文部科学大臣の諮間にあたっての挨拶骨子は次の通り。
「教育振興基本計画の策定についてですが、教育改革を着実に実行し、新しい時代にふさわしい教育を実現するためには、中・長期的視野に立って、教育施策の総合的かつ計画的な推進を図ることが重要であけ、教育振興基本計画を策定し、教育改革や教育基盤の整備を強力に推進していく必要があります。また、教育振興基本計画の策定は、国民に対し我が国の教育の目指すべき姿を示し、その実現に向けてどのように教育を振興し改革していくのかを明らかにするとともに、教育施策の総合的かつ計画的な推進を図る中で教育財政の充実や政策の適切な評価に資する観点から有意義であると考えております。なお、教育振興基本計画は、教育基本法で規定される教育の基本理念等を実現していく手段として重要な意義を持つものであり、その根拠を教育基本法に置くことを検討する必要があると考えております。このため、今回この2つをあわ
せて諮問することとした次第です。
新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方については、教育基本法は、戦後、民主的で文化的な国家の建設を目指して、我が国の新しい教育の理念と基本原則を確立するために、教育者並びに国民の指針として制定されました。以来、半世紀を経過し、その間我が回の教育はめざましく普及、発展するとともに、経済社会の発展にも大きく貢献してまいりました。しかしながら、戦後50年を経て、社会状況は教育基本法制定当時とは大きく変化し、教育の在り方そのものが問われていることも事実であります。我が国の次代を担う子どもたちが、将来に夢や希望を抱き、生きる力を持ってたくましく育っていくためには、私たちは新しい時代の教育の基本像を明確に提示するとともに、それを確実に実現していくことが求められています。このような状況を踏まえ、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方を考え、教育の根本にさかのほった抜本的な教育改革を推進するため、今回、教育基本法の見直しを諮問することとした次第であります。教育基本法の見直しに当たっては、特に次の占小に御留意いただき、幅広い検討を進めていただきたいと思います。
まず第一に、これからの時代の教育を考えるに当たっては、個人の尊厳や真理と平和の希求など現行の教育基本法が規定する普通の原理を大切にしながら、社会や時代の変化を踏まえ、現行規定に不足している事項は何かなどについて検討することが適当と考えます。これから御説明する諮問理由で示した検討事項は、教育改革国民会議の提言を踏まえつつ、現行の教育基本法が定める普遍的な理念を維持しながら、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方を検討するために、特に重要であると考える論点を示したものでございます。
第二に、教育理念の見直しと関連させながら、制度の在り方も含め具体的な改革を進める観点からの御議論が必要と考えます。教育基本法は教育に関する根本法として、教育上の話法令の準則としての性格を有しています。教育基本法の見直しは、関連する他の法令の改正も視野に入れた具体的な教育制度の改革につながる検討となるものと思います。学校教育法や社会教育法など、教育基本法の見直しに伴う他の法令の見直しの方向についても、必要に応じて御議論いただきたいと考えております」
(理 由)
戦後、我が国の教育は、教育の機会均等の理念の下に、その普及、量的拡大と教育水準の向上が図られ、我が国の経済、社会の発展に大きく寄与してきた。しかしながら、東西の冷戦構造の崩壊後、世界規模の競争が激化する中で、我が国の経済、社会は時代の大きな転換点に立っている。このような厳しい状況の中で、跡世紀に向けて、我が国が果敢に新しい時代に挑戦し、国際社会の中で発展じていくためには、国の基盤である教育を改革し、新しい時代にふさわしい人材を育成することが急務の課題となっている。
一方、教育の現状を見ると、子どもたちの問題行動や不登枝などの深刻な状況、社会性や規範意識の希薄化、過度の画一主義などによる個性・能力に応じた教育の怪視など、教育全般について様々な問題が生じている。また、経済、社会のグローバル化、科学技術の進展、地球環境問題の重要性の高まり、少子高齢化、男女共同参画社会や情報ネットワーク社会の到来など、社会の大きな変化に対応した教育が求められている。21世紀において、我が国が明るく豊かな未来を切り拓いていくためには、社会の存立基盤である教育について、この新しい時代における在り方を考え、その改革、振興を着実に推進していくことが何よりも重要である。このため、これからの教育の目標を明碓に示し、それに向かって必要とされる施策を計画的に進めることができるよう教育振興基本計画を策定するとともに、すべての教育法令の根本法である教育基本法の新しい時代にふさわしい在り方について、総合的に検討する必要がある。
I 教育振興基本計画の策定について ,
1 教育は、子どもたち一人一人に確かな学力を身に付け、豊かな心をはぐくみ、「自らの能力を最大限に発揮して自己実現を図るために重要であるとともに、社会や国の将来を左右するものであって、我が国が活力ある国家として発展していくためには、国家百年の計たる教育の振興が不可欠である。このため、国は、中・長期的視野に立ち、教育施策を総合的かつ計画的に推進し、「人材・教育大国」の実現に取り組むことが強く求められている。
昨年12月の教育改革国民会議の報告においても、このような考え方に基づき、教育施策の総合的推進のための教育振興基本計画の策定について提言されており、新しい時代にふさわしい教育を実現するという観占小に立ち、教育振興基本計画を策定し、教育改革や教育基撫の整備を推進していく必要がある。
教育基本計画においては、政府として、我が国の教育の目指すべき姿を国民に明確に提示し、その実現に向けてどのように教育を振興し、改革していくかを明らかにすることが重要である。このため、計画には、中・長期的な教育の目標や教育改革の基本的方向とともに、それを実現するために政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策や必要な教育投資の在り方、国、地方公共団体の役割等について明らかにする必要があると考える。
また、このような教育振興基本計画の策定は、教育に関する施策の体系化や整合性の確保とともに、教育財政の充実にも資するものであり、さらに政策の適切な評価という観点からも重要である。
2 教育振興基本計画の策定に当たっては、計画に盛り込むべき内容として、主に次の事項について検討する必要があると考える。
第一に、教育に関する施策の基本的な方針として、教育の目標やその目標を実現するための教育改革の基本的方向等について検討する必要があると考える。
第二に、その目標を達成するために、政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策として、例えば、以下のような事項について、国民に分かりやすい具体的な政策目標を示すとともに、それを、実現するための主要な施策について検討する必要があると考える。(1)初等中等教育の教育内容の改善、充実(2)教員の資質向上と学校運営の改善(3)高等教育の整備、充実門家庭、地域の教育力の向上(4)教育の情報化、国際化・国際交流の推進など
第三に、総合的かつ計画的に教育施策を推進するために必要な教育投資の在り方についてである。教育に対する投資は、我が国の活力ある健全な発展に不可欠な社会的基盤の形成に寄与するものであり、望ましい教育投資の在り方について検討する必要があると考える。
第四に、計画の推進に関して、政府及び地方公共団体の役割、政府及び地方公共団体の連携等について検討する必要があると考える。
3 また、教育振興基本計画の策定は、教育基本法の基本理念等を実現していく手段としても重要であり、教育改革国民会議報告において提言されているように、他の多くの基本法と同様、その根拠となる規定を教育基本法に設けることについて、 「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方」とあわせて検討する必要があると考える。
U 新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について
1 教育基本法は、教育の基本理念及び基本規則について定める法律として、昭和22年に公布・施行され、以来、我が国の教育は50年以上にわたって教育基本法の下で進められてきた。しかしながら、先に述べたように、制定当時とは社会が大きく変化しており、また、高校、大学進学率の者しい上昇や生涯学習社会への移行など教育の在り方も変容を遂げてきている。さらに教育全般について様々な問題が生じており、21世紀を迎えた今日、将来に向かって、新しい時代の教育の基本像を明確に提示し、それを確実に実現していくことが求められている。このため、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方を考え、その見直しに取り組み、教育の根本にさかのほった改革を進めることが必要である。
2 教育改革国民会議の報告においては、これらの時代の教育を考えるに当たっては、個人の尊厳や真理と平和の希求など普通の原理を大切にするとともに、「新しい時代を生きる日本人の育成」 「伝統、文化など次代に維承すべきものの尊重、発展」 「教育振興基本計画の策定など具体的方策の規定」の三つの観点から、新しい時代にふさわしい教育基本法を考えていくことが必要であると提言されている。
この提言を踏まえながら、時代状況の変化にかんがみ、教育基本法の在り方について、主に次の事項に関して検討する必要があると考える。
第一に、教育の基本理念についての検討である。教育の基本理念として、教育基本法は、教育の目的(第1条)及び方針(第2条)を定めている。教育の目的として第一条は、人格の完成を目指し、国家、社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成を期して行うとし、国家、社会の形成者として有すべき徳目を例示している。また、教育の方針として第二条において、教育の目的を実現するため、教育の行うに当たっての心構え、配慮すべき基本的事項について定めている。
これについて、普遍的な理念は維持しつつ、次の視点などから検討する必要があると考える。
(一)時代や社会の変化に対応した教育という視点
教育は時代や社会の変化に応じていくものであり、不易と流行ということを考えたとき、特に、人々が身に付けるべき知識・技能、そして教育の手段など教育の具体的な内容、方法は時代の進展や社会の要請に応じて改善されるべきものである。今日、生涯学習社会の到来、国際化の進展や環境保全の重要性の高まりなど時代や社会の変化に対応した教育が求められているという視点から議論する必要があると考える。
(二)一人一人の能力・才能を伸ばし創造性をはぐくむといヽつ視点科学技術の進展や経済、社会のグローバル化が一層進展する新しい時代にあって、我が国が創造的で活力ある社会として発展していくためには、創造性や独創性に富んだ人材の育成がますます重要になっている。そのためにも、人は一人一人違っているといヽつことの価値を再碓認して、 一人一人が持っている能力・才能を伸ばしていくという視点から譲論する必要があると考える。
(三)伝統、文化の尊重など国家、社会の形成者として必要な資質の育成といヽつ視点急速な社会状況に変化と豊かさの進展の中で、個人と社会との関係を改めて考え、これからの時代を担う子どもたちの社会性をはぐくみ、社会規範を尊重する精神を養い、人間性豊かな日本人を育成することが求められている。そして、国際化が進展する社会の中にあつて、日本人としての自党を持ちつつ人類に貢献するということからも、我が回の伝統、文化など次代の日本人に継承すべきものを尊重し、発展させていく必要がある。これらの点を踏まえながら、今日において、国家、社会の形成者として有すべき資質として、特に求められている点は何かといヽつ視点から議論する必要があると考える。
第二に、教育の基本原則についての検討である。
教育基本法は、教育の機会均等(第3条)、義務教育(第4粂)、男女共学(第5粂)を
規定して、教育の普及を図っている。このうち特に、義務教育は近代国家における基本的な教育制度として憲法に基づき設けられている制度であるが、制度の在り方について、例えば、 一人一人の能力の伸長を図るといヽつ視点、あるいは家庭の果たすべき役割と学校教育との関係といった視点から、議論する必要があると考える。また、男女共学規定について、制定時との時代や状況の変化を踏まえ、男女共同参画社会の形成を目指す観点から講論する必要があると考える。
さらに、政治教育(第8条)と宗教教育(第9条)について、その在り方と限界について規定されているが、宗教教育に関しても、憲法に規定する信教の自由や政教分離の原則に十分留意しながら、宗教的な情操をはぐくむという観点から議諭する必要があると考える。
第三に、家庭、学校、地域社会の役割など教育を担うべき主体についての検討である。教育の目的の実現のためには、家庭、学校、地域社会等の果たすべき役割を明稚にし、それぞれがその役割を果たしつつ、互いに迎携・協力して教育に取り組むことが重要である。特に、教育の原点は家庭にあり、基本的な生活習慣や倫理観、自制心、自立心など基礎的な資質や能力を育成する場として、家庭が教育に対して果たすべき役割はとても大きなものがあると考える。
家庭教育や社会において行われる教育については、社会教育に関する規定(第7条)の中で触れられているが、家庭や地域社会等の教育に対する役割の重要性を十分踏まえ、その役割を明確にする観点から議論する必要があると考える。
また、学校教育に関する規定(第6条)として、学校の性格及び教員の身分について規定しているが、学校についても、その役割や教員の使命について明碓にする観点から議論する必要があると考える。
第四に、教育行政(第10条)については、教育が不当な支配に服してならないとの原則を維持しつつ、教育振興基本計画のあり方とともに、国、地方公共団体の責務について、その適切な役割る分担をふまえて、教育施策の総合的・帰依核的な推進が図られるよう、明確な観点から検討する必要があると考える。
第五に、前文の取扱についてである。教育基本法には、法制定の由来、趣旨をあきらかにするための前文が付されている。前文についても法律全体の在り方に即して検討をおこなう必要があると考える。
3 また、学校教育法や社会教育法など教育法令は、教育基本法に掲げた理念、原則に則ってさだめられていることから、教育基本法の見直しに伴うその他の見直しの方向についても、必要に応じて、議論が必要であると考える。