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☆東京芸術大学長に再登板する画家、平山郁夫さん 
.『朝日新聞』「ひと」欄  2001年11月29日付up12/2-4

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『朝日新聞』「ひと」欄  2001年11月29日付

 学長選出の知らせは北京で聞いた。日中友好協会長として、江沢民国家主席と会談する直前だった。

 学長職は、すでに89年から6年間務めている。創作活動やユネスコ親善大使などの活動で、最近は休む間もない。にもかかわらず、もう一度引き受ける決心をさせたのは、芸大の将来に対する危機感だった。

 いま、大学の再編統合や競争原理導入の議論が盛んで、法人化も予定されている。だが、芸大には提携できる大学がない。芸術は、目に見える効用を示しにくい。

 「芸大は、国立大学の中の床の間のようなもの。即効性はないが、国の品格として欠かせない。それを実績や数値で示せというのは無理です」

 豊富な経験と社会的な発言力を期待されての再登板だ。前回の学長時代には、大学院に文化財保存学専攻を新設し、大学美術館、奏楽堂の構想を推進した。

 「国際社会の中で、日本文化を創造する芸大の役割は大きくなっている」と確信し、今回の役目は「芸大の自主独立を守ること」ととらえる。そして、学内について「終身雇用のぬるま湯ではいけない。実力主義による緊張感が必要です」と付け加えることを忘れない。

 広島で被爆し、戦後、芸大の前身・東京美術学校へ。そこで師の前田青邨らと出会った。妻美知子さんは同級生で、卒業制作は首席。自身は二席だった。

 日本育英会長など60を超す公職のうち、約9割を辞め、12月21日から「大役」に挑む。

 ひらやま・いくお。「今こそ恩を返す時。短期決戦の覚悟です」。71歳。