☆県内国立大再編/地域の提言を受け止めよ
.『北日本新聞』社説 2001年12月1日付up12/2-2-
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『北日本新聞』社説 2001年12月1日付
県内国立大再編/地域の提言を受け止めよ
富山大、富山医科薬科大、高岡短大の再編統合について、富山県内の有識者でつくる「国立大学の改革等に関する懇談会」(南日康夫会長)が中間提言をまとめ、各大学と文部科学省に提出した。
三大学はいずれも、県民の多大な支援、協力で設立され、発展してきた経緯がある。それだけに、県民には「国立」ではあっても「県民の大学」という意識が強く、提言で新大学が「地域に根差し」た姿になるよう求めたのは、当然のことと言える。
三大学の再編協議では、中間提言を十分に反映してもらいたい。文科省は、地方大学への地域の考えをきちんと受け止めてほしい。
中間提言は、新大学が「交流と貢献」を基本理念とし、「地域に根差し、環日本海を指向する知的センター」として発展することを期待している。
教育では「人づくり」の拠点として、教員養成機能や現職教員の再教育機能の充実強化などが重要であるとしている。研究では「オンリー・ワン」の研究によって世界に誇れる大学を目指すとし、和漢薬や「日本海学」などを特筆しているのが注目される。
文科省の「大学の構造改革方針」(遠山プラン)は、国立大の数を大幅に削減し、優れた業績を上げる研究分野に予算を重点配分しようというものだ。先月まとめられた、国立の教員養成大学・学部を見直す文科省の懇談会報告では、教員養成課程の県境をまたいだ再編統合もうたわれている。
文科省のこうした動きに対して県内有識者の懇談会が提言をまとめたのは、地元国立大の将来への強い危機感を物語るものである。
しかし、県内三大学に限らずどの国立大も、再編論議はせいぜい近隣の大学を含めた学部再編のレベルにとどまり、これからの高等教育、学術研究のあり方にまで深まっていない。いま必要なのは、将来を見据えた本格的な大学論ではないか。
県内有識者の提言は、国に対して「国立大学を中心とした高等教育のあり方(グランドデザイン)を明示する」よう求めている。もっともである。地方国立大の新しい姿を描くには、こうした理念がまず必要であり、その際、これまで果たしてきた役割をきちんと評価すべきことは言うまでもない。