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北陸の大学再編 地域とも組む攻めの大計を 
.『北國新聞』社説  2001年12月1日付up12/1-4-
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『北國新聞』社説  2001年12月1日付

 北陸の大学再編 地域とも組む攻めの大計を

 明治維新後の開国日本の将来を担う人づくりの大学ができて百三十年、戦後の新制大学がスタートしてからでも五十余年がたった。独立法人化をにらんだ再編・統合論議の真っただ中の国立大だが、公立大も独立法人化に動き出した。今、大学は国公私立を問わず、その存在意義が鋭く問われる第三の変革期を迎えている。

 いずれの大学であれ、その役割があすを担う人材養成機関であるという点は今後も変わらない。漫然と時流を追う再編ではなく、今後の高等教育はどうあるべきか、その狙いを明確にし、足元の地域とも積極的に組むなど攻めの大計を確立し、その実現にまい進してもらいたい。

 大学再編をめぐる最近の動きで注目されるのは、全国七十四校で組織する公立大学協会が自ら設置者の自治体に公立大の法人化を求めたことである。これからの少子化時代、法人化により国・私立との競争で生き残りをかけるという。

 石川県では四年後の開校を目指し、石川県農業短大を再編し四年制の石川県立大学(生物資源環境学部)に移行させる準備が進んでいる。昨年まとめられた基本構想では「バイオなど先端技術」教育を目指すとしており、学生数は現在の二・五倍の五百十人である。財政難の折、新たな負担をできるだけ抑える財政計画はどうあるべきか、地域の農業を再生する若い人材をどう集め育成するのかなど時流に横並びしない特色のある学部にすることが生き残りの条件である。例えば、環境に負荷のかからない持続性ある農業への脱皮という新農業基本法の主旨を生かす付属経営農場(押水町)での循環型農業教育も一つの目玉であろう。今年度中に基本計画が策定されるが、魅力ある大学づくりに関係者は心血を注いでもらいたい。

 富山県には日本海側で初めての公立工学系大学という狙いを持った富山県立大学(四年制)が十一年前に開学している。大学院も持つ新設の工学部のほかに、農業系短大だった県立大谷技術短大を再編した短期大学部がある。技術立県を目指す建学の精神を忘れずに、公立大の法人化の今後の論議に当たっては、十年間の実績を総点検し、北陸に根を張る人づくりで開かれた大学を目指してほしい。

 国立大再編でも、最近、新たな動きが出ている。文部科学省の懇談会が一県一教育学部というこれまでの方針を転換、教員養成系大学・学部を現在の半数以下にする最終報告書をまとめた。これを受け先日、金大側の呼びかけで石川県教委との意見交換会が開かれたが、地域と結びつた教員養成の必要性で一致した。

 石川県の場合、新規採用教員の三分の一は金大卒業生で占めており、教育学部と地域のかかわりは深い。また最近、北陸ではふるさと教育が盛んになってきており、それを支える教員の再教育などより積極的に地域に貢献する仕組みが求められる。

 大学全体の再編では富山大・富山医科薬科大・高岡短大など大学同士の組み合わせばかりが目立つ。しかし地域と強いきずなを持つことは再編・統合にあたっても欠かせない視点であり、例えば富山県内の大学再編でも、県が打ち出している日本海学という独自の狙いを生かしてもらいたい。

 再編以外でも金大や北陸先端科技大など県内十九の大学、短大、高専の学長らで組織する「いしかわ大学連携促進協議会」が共同事業を推進する財団「大学コンソーシアム(連合)石川」構想を打ち出している。公開講座はもちろん、社会人を実習生として受け入れ、ベンチャービジネスなど幅広く地域社会のニーズにこたえていこうという計画である。

 共同事業を展開しながら、それぞれの大学の独自性をどのように発揮していくか、課題も多い。が、京大などによる京都の意欲的な先行事例もある。北陸でも大学を県外から学生を呼び込める産業と位置づけて推進したい。積極的に仕掛ける取り組みから、内実のある再編・統合の展望も開けてくるだろう