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独行法情報速報    No.11    特集:『将来構想II』の示す教員組織再編論  
.2001.12.12独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局-up12/12-
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独行法情報速報    No.11    特集:『将来構想II』の示す教員組織再編論

2001.12.12独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局

『千葉大学の将来構想
II』教員組織再編案の根本的議論を
本速報No.10(11月19日発行)で“あまりに問題の多い”『千葉大学の将来構想II』について、急ぎ批判的分析と提言を行った。とりわけ、教員組織再編案には重大な問題があると率直に指摘した。そして、将来構想に関わる重大問題を新年早々の文科省ヒアリングにあわせる形で議論不足のまま進めることは絶対に避けなければならないと提言した。その後、11月26日園芸学部教授会で古在学部長が「現状の案では賛成できない」との意向を表明するなど各部局での議論が進んでいる。このため12月10日に開催された第2回教員組織検討委員会への土屋委員長の報告(挟込み資料【開示1】参照)に対しては、各部局委員から異論が相次ぎ、委員会としての共通見解とはならなかったのである(【開示2】)。
しかるに翌12月11日に開催された将来構想検討委員会で配布された『将来構想II』《骨子版》(【開示3】)では、前日に部局選出委員によって受け入れられなかった教員組織案がほとんど無修正のまま掲載されている。教員組織検討委員会の存在意義を否定する行為である。我々が規程のない委員会でこのような重大な問題を扱うべきではないと繰り返し指摘して来たのは、まさにこのような事態を避けるためであったのだ。しかし、この『将来構想II』は12月20日の評議会に報告され、以後部局での議論に付され、2月に最終文書としてまとめられることとなった。各部局での根本的議論を進めることに資するために、『将来構想II』の中心をなす教員組織再編案(以下、「再編案」)の問題点を開示資料1、3をもとに改めて分析するとともに、今後の議論の方向についても提言を行う。

【分析】教員組織再編案の危険な本質
一般的にいって組織方針は組織の任務・目的に従属する。であるとすれば、『構想(案)』の目指す千葉大学は(1)高度職業人養成を重要な課題とする大学院教育の拡充と多様化、 (2)社会的需要に応える高品質な学部レベル教育の提供、 (3)国際水準の先端的・融合的研究推進の効率的かつ迅速な実現ということになるが、果たして、この3点で千葉大学の目的・任務が規定されるのか、基礎科学はどうするのか等、厳密な議論がまず必要である。教員組織再編という組織方針が大学の目的・任務を逆規定するという倒錯を決して起こしてはならないことをまず指摘しておく。
(1)基礎的研究体制の編成・構築プランを欠如させた教員組織再編案
 「再編案」は、「組織としての柔軟な資源管理」、すなわち教員定員の柔軟な管理が必要とし、そのために「教育体制、研究体制から相対的に独立に教員組織を構成、運用」し、教員は「学術部門」(「部門」)に所属させるという。ところがその「部門」は、「現在の『学科』程度の規模が目安」といわれるだけで、その実体は全く不明である。その規模(定員)も「部門」の総数も「今後検討」されるにすぎず、また「部門は、人事(給与)及び基礎的な予算に責任を持つ」とのべても、その「人員、予算などの調整のために、『系』を設ける」というから、人事・予算の基礎になる基準的教員定員が「部門」に保障されるのかも不明である。しかも「研究に必要な資源・時間は導入資金等に見合う形で確保する」というのであるから、「部門」を基礎的研究組織とし、そのための条件を保障することが考えられているかは、怪しいのである。
実のところ、「再編案」は研究をほとんど、外部資金等が導入できる「先端的、融合的」な時限プロジェクト研究としてしか考えていない。しかし先端的研究は、先験的・固定的に存在するわけではない。基礎的研究の蓄積のなかから、新たな先端的研究が生まれてくるのである。また基礎的研究分野なしに、融合的研究が成立しないことも、いうまでもないことである。基礎的研究体制をどう編成・構築するかを構想していない教員組織再編論は、再編論としての要件すら欠いたものである。
(2)教育軽視の教員組織再編案
教育と研究は一人の教員において統一されて行われるものである。そのことを無視して教育と研究への従事を数値的に分配することを主張し、さらには「研究従事の必要性を客観的に証明できるならばいくらでも研究に専念できる」ことを“肯定的側面”としてとらえていることは、「再編案」がいくら教育重視を叫んでも、結果として教育軽視、あるいは端的に言って教育活動蔑視を蔓延させることとなろう。
3)教授会否認=教育・研究者の自治と自律性を否定する教員組織再編案
「再編案」は、「柔軟な資源管理は、現在の学部教授会中心運営方式では不可能」とし、その理由として、(1)「合議制をとる」こと、(2)固定的な定員配置、をあげている。まず、「合議制をとるため、意志決定にかける人的・時間的コストが不当に膨大になる」とある。しかし、もし、不当にコストが膨大になるとすれば、それは議論の進め方の問題であって、合議制否定の根拠にはならない。むしろ、意見や要求の分れる問題こそ合議制が必要であることは民主主義の基本である。もちろん大学運営は機能的・合理的に行われるべきで、無駄な会議などは排除されることが望ましい。しかし、研究・教育はそれに携わる教員の自発性・自主性がなければその効果を望みえないもので、それゆえ教員の自治が必要とされてきたことは忘れられてはならない。また研究組織と教育組織を分離すれば、効率化・合理化されるわけではなく、会議の複雑化・重層化を生じざるをえないことは、筑波大の事例が参照されるべきである。(2)の定員問題でも、部局教授会が行っているのは定員管理であって定員死守ではないことは、部局間協議・u「筺w)協力を通じて再編が行われていることからみて明白ではないか。
(4)導入資金による差別化の教員組織論――指令型研究・教育体制への道
 「再編案」は、教員を「大学院教育、学部教育を個人ごとに異なる比率で担当するもの」とし、「研究のために必要な資源・時間は導入資金等に見合う形で確保」しようという。このことは、「教員であることによって自動的に研究が保障されるわけではない」が、「研究従事の必要性を客観的に証明できるならばいくらでも研究に専念できる」ことを意味するというのだから、教員を研究担当、大学院担当、学部担当に差別化し、研究について保障しない教育専任の教員の存在をつくることである。こうした導入資金の額で研究能力が示されると考える資金至上主義、また研究を行わない教員で大学教育ができると考える発想が恐るべきものだが、こうした原理で教員を編成・組織していった場合の論理的帰結を考えているのだろうか。
 まず教員個人ごとの、大学院・学部教育の担当のコマ数の申告の総計が、必要とされる講義のコマ数総計と一致する保証はない。一致しない場合、「資料」の考え方では「合議制」では合理的に処理できないというのだから、教育組織の「責任者」=ディレクターが教員個々人に担当コマ数を指令する以外ない。導入資金額が研究・教育能力を客観的に証明するという考え方は、教員の自由な競争を生み出すようにみえて、じつは指令型の研究・教育体制への衝動を生み出さざるをえないのである。

【提言】教員組織の検討はどうなされるべきか
 組織改革を実施しようとするなら、第一に現状の分析、第二にそこから導かれた改革の課題、第三に明確な改革案とそのメリット・デメリットの提示が不可欠である。こうした基礎作業抜きに、あれやこれやの組織いじりや、「教育体制、研究体制から相対的に独立」した「教員組織」などという不可解な提起をすべきではない。「再編案」が強調している「組織としての柔軟な資源管理」、「大学共通資源枠」という全学共通の教員定員枠に関することについては、現在でも全学的見地からの定員利用は行われており、教員組織の再編とは別の問題として具体的に取り扱うべきだろう。これを検討するには、まず、教員定員と現員の現状を明らかにし、どの程度全学共通定員枠を生み出しえるのか、また、どういう改革での実施のためにどれだけの定員枠が必要か、ということから具体的に論じるべきである。その上で、1)部局の侵すことのできぁw)覆・u「権限の範囲は何か 2)最高決定機関である評議会が満場一致で決定できない場合は多数決が必要となろうが、現在の評議会は多数決実施の上で合理的な構成になっているか 3)学長・副学長等大学執行部の執行権限はどこまであり、かつそれに対してはどのようなチェック機構を配置するか ということを全学的に議論・決定することを提言するものである。学内の競争的資金設定のように、5%程度なら可能だろうというような大雑把で不信感の残る処理はしてはならない。

【動向】新潟大学学長選:
民主的議論を無視して教員組織改変を企図した現学長敗北
1.
12月4日の新潟大学学長選挙の結果は、期待しつつも予想を越える結果であった。5名の候補者による選挙で投票率は73.5%(有権者1197名)と高く、現職学長がトップと81票はなれて2位にとどまっていた。12月5日の決戦投票では、推薦母体の医歯学部の激しい巻き返しがあったが、投票結果は長谷川氏(前理学部長:物理学)が514票、荒川氏(現学長)が478票と36票差で現職が敗北した。投票者数は1004名(83.9%)まではねあがっていた。予期されなかった結果であり、とりわけ、一回目の投票で現職が当選するとみていた人々にとっては衝撃的な結果であったと思われる。新潟大学では、医学部出身以外の学長は1992年以来で3人目である。同日、新潟大学で記者会見した長谷川彰氏は、学生が伸び伸び学べる環境づくりをはじめ、文理融合型教育研究システムの確立、他の地方大学との連携推進に努める意向を表明した。文部科学省が打ち出した国立大学改革については「過度な競争原理の導入は避け、現学長が進めてきた教育改革路線にぁw)弔・u「ても、情勢に応じて必要な修正をしていきたい」と述べた。 
2.新潟大学では教員組織再編の方向が評議会で決定され、その実施の準備がすすめられている中での学長選挙であった。教員組織再編とは、学内特例措置として、教育研究院をおき、学部、大学院から教員を切り離し、すべての教員を教育研究院に配置するものである。教員組織を再編することにより、人事の一元化がおこなわれ、流動定員を15%程度確保し、学長等から構成されるトップの委員会の判断で教員定員の調整が行われるものである。医歯学系、人文社会科学系、自然系の3学系をおき、その中を分野別にいくつかの系列にわける。教員組織再編が完成した時点で「人事」については、教授会のかわりに代議員会が始動することになる。
この再編は、とりわけ、理、工、農学部に現実的矛盾をもたらすものであった。自然科学研究科をもつ新潟大学は、学部を基礎としながら、大学院の教育研究面で大幅な学際的分野を導入している。この大学院構成の手法は、自治単位が学部に基礎をもっている場合は、一定積極面として評価されてきた。しかし、学部から教員組織が切り離されるにおよんで、これまでの教育研究単位が変動することになる。実際、ある分野では、教室が3つに分割され、他分野と混在することになることが判明した。これまでの自治の上に積み重ねたものを大学の生き残りという口実のもと、いとも簡単に消滅させていくという大学執行部にたいする怒りが、自然系学部から現学長に対立する統一候補をたてていく直接的動機のひとつとなっていったと思われる。教育人間科学部と人文社会科学系の学部では事態は複雑に進行していったが、今後の詳しい分析を待つことにする。
3.職員組合は、選挙に関係して、4回の学長選特集と、公開質問状にたいする候補者の回答を発行した。第一回目の特集が「あらたな段階にはいった教員組織の一元化」であり、「トップダウンの人事方式」「教育の責任体制と学部自治」「のぞまれる学長像」が論ぜられた。「組織再編というような大問題はトップダウンの手法ではなく、トップから問題提起をし学科、教室レベルからのボトムアップをおこない、それを執行部で整理立案していく姿勢が必要なはずです。これらの大学運営の基本について、真の学内民主主義、大学の自治、現場主義で臨む姿勢をもった学長が選出されることを望みます。」とういう組合の主張は多数の教職員の共感をよぶものであった。
4.選挙結果の意味するものは、「組織再編」等に典型的ノあらわれたこれまでの大学運営の進め方にたいして、多数の教員が拒否したことである。新学長は、多くの期待を背負いながら新潟大学の進路を模索することになるであろう。
選挙結果を聞いたある若手教員は「もう少しこの大学の明日を見てみたくなりました」と組合関係者に語ったという。現学長とその支持者たちは、新潟大学の明日に失望した多くの教員の意思に気づかなかった。思わぬところに、強大に見える「独法化体制」の弱点をみた思いである。                         (新潟大学教員からの寄稿)


 
【投稿】海洋バイオシステム研究センターの窮状    
海洋バイオシステム研究センター(以後本センターと呼ぶ)は、平成11年4月に理学部附属海洋生態系研究センターから改組して、学内共同教育研究施設として10年の時限で設立された。理学部附属時代は、生物系の教官(教授、助教授、助手、各1名)、2名の技官、および1名の事務官が、安房郡天津小湊町の小湊実験場および水族館、銚子市外川の実験場を拠点に教育、研究などに携わってきた。生態系研究センターは10年間の時限に伴う改組で海洋センターになり、教官組織は新たに地学系の教授、助教授、助手各1名が加わり2分野となった。本センターは発足3年目であるが、現在運営費(電気などの経費)工面のために、研究費をほとんど全額投入するという状況にある。
理学部から配置換えになった私を含めた教官は、理学部に比べて、予算規模が小さいことに驚いた。センターは、校費として教育研究基盤校費(教官分)および附属施設経費が主なものであり、学部にある学生定員に伴う教育研究基盤校費(学生分)は無くなる。学部の教官定員を減らしてセンターのそれに振り替えたという経緯を考えると、配置換え後も学部教育の充実のために、学部担当教官と同じ時間数の学部の講義、実験、セミナーを開き、および卒論生の指導も行っている。しかし本センターが学部学生の教育組織ではないので、教育研究基盤校費(学生分)は本センターには配分されない。平成13年度の理学部の教育研究基盤校費(学生数相当分)は教育研究基盤校費(教官数相当分)の約35%であることを考えると、教育研究基盤校費(学生数相当分)が無いことはかなりの予算規模の縮小を意味する。
本センターへの予算は他の部局と同様の基準で配分されているが、学生数相当分の基盤経費が無い状況でかつ教官数相当の教育基盤校費は少人数の教官組織であるために少ない(約800万円)。また多くの部局がそうであるように、配分される学生および教官数相当分の合計の教育研究基盤校費の概ね半分以上は水道光熱費や電話や事務などの経費になり、研究費として利用できない。
本センターは、前身の東京水産大学時代からの水族館を開館している。水族館を社会教育上有効に活用できるが、生きた海洋生物を維持管理するために海洋生物の購入、餌、水温維持、海水の循環などのために、餌料代、電気(水族館分)が年間約400万円になる。施設経費(約290万円)を加えて、総額1,100万円規模の予算の大半が、水族館維持の他に2つの実験場にかかる電気光熱水道費、通信費、電話、工事費、繕費学内ネットワーク維持費、年報印刷費、複写機賃貸・保守、電気・消防設備保守費などとして使われる。2つの研究分野に配分できる研究費はそれぞれ年間12万円だけである(総額24万円、即ち1人当り4万円)。教官が兼務している自然科学研究科の教育基盤校費(4名分の総額約300万円弱)が研究経費として利用できるが、その経費も教官の自主的な判断で、10%を本センターの運営費として供出している状況である。
学内には、学内共同利用センター(全国共同利用研究センターを除く。以下センターと呼ぶ。)が多い。専任教官のいるセンターとして、学内の関連部局等の教員が組織する運営委員会がセンターの運営(研究及び教育に関する重要事項、教員人事、センター長候補者の推薦、その他の管理運営について審議する組織)を支えている。本研究センターはそれ以上の学内教官組織にはどこにも所属していないし、発言権もない。大学の改革が議論される中、我々のような少数であるが、大学の教育研究を担ってきているセンターの存在を認識した改革の立案を希望する。また意見を表明できる組織改革も期待する。
些細なことだが、来年日本への国費留学が内定した学生が留学生センターでの半年間の語学研修後、どこの部局に所属するのかという文部省から問い合わせがあった。本センターは研究生を受け入れる機関でない(学内規定)ことが理由で、他部局の研究生になることになった。大学の全ての施設が教育研究機関と理解していたが、それは必ずしも正しくなかった。現在研究生を受け入れられるように学内規程を改訂するよう要請中である。センターは学部とは設置の理念が異なるが、学生に対しては学部や大学院組織と同じ教育研究施設と理解したい。またセンターは教官数が少ないが、学内の教育研究施設としての重要性が正しく理解されることを希望する。
【編集者注】センターの窮状は独法化の動きとは無縁でないので、投稿を受け付け、全学の教職員に状況をお知らせします。

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【開示1】第2回教員組織検討委員会(01年12月10日)における委員長報告
1. 高度職業人養成を重要な課題とする大学院教育の拡充と多様化、社会的需要に応える高品質な学部レベル教育の提供、国際水準の先端的、融合的研究の推進を効率的かつ迅速に実現するためには、個別教員へのインセンティブだけでなく、組織としての柔軟な資源管理が必要である。
2. 柔軟な資源管理は、現在の学部教授会中心運営方式では不可能である。その理由は、第一に、現在の方式は教授会およびそのもとに設置された委員会による合議制をとるために、検討すべき選択肢の幅からみて、意思決定にかける人的・時間的コストが不当に膨大になるという点、第二に、現代の先端的学術状況が、学際性、融合性を求め、大学における教育研究体制を柔軟に対応させていかなければならないにもかかわらず、教育あるいは教育の組織に固定的に定員を配置する方法では対応が困難である点である。
3. 組織としての柔軟な資源管理のためには、教育体制、研究体制から相対的に独立に教員組織を構成、運用することが必要である。教員の所属を教育組織あるいは研究組織ごとに固定的にあつかうことをやめ、以下のように再編する。
a. すべての教員は、その学術的背景にもとづいて構成されるなんらかの学術部門(以下、「部門」)に属し、その運営に参加する。(学術部門の規模(定員) と学術部門の総数については、大学院教育の拡充、学部教育の高度化、研究推進の重点化の程度を考慮して今後検討するが、現在の「学科」程度の規模が目安。)各部門は、人事(給与)及び基礎的な予算に責任を持つ。
b. 学術部門相互における人員、予算などの調整のために、「系」を設ける。系は、全学で3ないし4程度とする(医薬看系、自然科学系、人文社会系、教員養成系など)。
c. 学部教育と大学院教育については、それぞれのカリキュラムと授業計画、入学認定、修了認定について責任を持つ教員を選出して、必要な補佐体制を設けて運営する(法令が教授会等を必要とする場合には、代議員会によって実質的な運用を行なう)。
d. 各教員は、(a)大学院教育、(b)学部教育、(c)研究にどの程度の関与を行なうかについて各年度ごとに明示する。大学を運営するために必要な職務に従事するものの数を必要最小限として、各教員が上記(a)-(c)の職務に専念できるようにする。
e. 教員は、大学院教育、学部教育を個人ごとに異なる比率で担当するものとして、研究のために必要な資源・時間は導入資金等に見合う形で確保する(このため、研究推進の観点からは、教員であることによって自動的に研究が保証されるわけでないという否定的側面と、研究従事の必要性を客観的に証明できるならばいくらでも研究に専念できるという肯定的側面が存在することになる)。
4. 部門の定員のなかに大学共通資源枠を設定し、全学的なイニシャティブ(時限プロジェクト(研究、教育、社会貢献等)、大学管理(任期つき)等)対応した運用を可能とする。大学共通資源枠の運用は、全学的イニシャティブを企画する全学的組織および人員、予算を調整する系別の調整組織とが、部門と協議して実施する。
《骨子バージョン》
1. 高度職業人養成を重要な課題とする大学院教育の拡充と多様化、社会的需要に応える高品質な学部レベル教育の提供、国際水準の先端的、融合的研究の推進を効率的かつ迅速に実現するためには、個別教員へのインセンティブだけでなく、組織としての柔軟な資源管理が必要であリ、そのために、教育体制、研究体制から相対的に独立に教員組織を構成、運用する。
2. すべての教員は、(学科規模の学術)部門に所属する。学部教育、大学院教育は別個の責任体制を確立し、教員ごとに異なる比率で(a)大学院教育、(b)学部教育、(c)研究に従事する。部門間の調整をはかる系を設ける。
3. 部門の定員のなかに大学共通資源枠を設定し、全学的なイニシャティブ(時限プロジェクト(研究、教育、社会貢献等)、大学管理(任期つき)等)対応した運用を可能とする。

【開示2】第2回教員組織検討委員会(01年12月10日)概要(文学部委員会資料)
1.委員長(土屋図書館長)から後出別添資料(開示1、2参照)の説明があり、これに従って将来計画検討特別委員会に教員組織検討委員会からの報告を提出したい旨が述べられた。
2.会議の場で各部局委員からは、構想されている「教官システム」への質問、異論が続出した。
 主な意見は以下の通りである。
(1)現在の教授会による意志決定のシステムの問題というのは、何を根拠にしているのか。そうした問題が、大学内のいかなる機関でどのような形で議論されたのか。自己点検や評価のうちにそうした主張が出たことがあったのか。
(2)上記の経緯をおくとしても、現行の教授会の何がまずいのかが不明瞭である。
(3)研究組織でも教育組織でもない「教官システム」の「部門」なるものの理念は何か、「学術的背景にもとづいて」というのみでは不明確である。
(4)構想されている「教官システム」にもとづく運営では、かえって煩瑣、繁忙になり、責任も不明確になるのではないか。
(5)「部門」と「系」の関係が不明瞭。他方、「系」やさらにはその上部組織が上から全てをコントロールする可能性が強く、問題である。
3.この提案の背景にある、これまで以上に全学的な観点で教育や研究を考えるべきだという点と、そのために人員をより有効に使うべきだという点に関してはおおかたの合意があった。そして、そのために現行の教授会に変えてこうした「教官システム」を設けることが適切であるかどうか、積極的な意味をもつのかどうかについて、委員会の内部で意見は一致しなかった。
4.委員長からは、「骨子バージョン」を手直ししてこれのみを将来計画検討特別委員会にもどしたいとの提案があったが、異論が出て、共通見解としはもどさないこととなった。
5.審議日程に関して委員長からは、近日の将来計画検討特別委員会を経て20日の評議会にかかり、そこから全部局教授会に諮ることになるという、スケジュールが示された。
6.今回の「教員組織検討」問題では、大学の全学的な意志決定をこれからどうしていくのかということが実際には問われているのであり、そのことをきちんと問題にするべきであるという意見があった。
なお次回の「教員組織検討委員会」は2002年1月に開催されることとなった。

【開示3】『将来構想II』《骨子》(01年12月11日版)より
1.教員組織の再編 
1)高度職業人養成を重要な課題とする大学院教育の拡充と多様化,社会的需要に応える高品質な学部レベル教育の提供,国際水準の先端的,融合的研究の推進を効率的かつ迅速に実現するためには,個別教員へのインセンティブだけでなく,組織としての柔軟な資源管理が必要である。そのために,教育体制,研究体制から相対的に独立に教員組織を構成,運用する。
2)上記の教員組織を構成運用する場合には,すべての教員は,(学科規模の学術)部門に所属する。学部教育,大学院教育は別個の責任体制を確立し,教員ごとに異なる比率で(a)大学院教育,(b)学部教育,(c)研究に従事することになる。
3)部門の定員のなかに大学共通資源枠を設定し,全学的なイニシャティブ(時限プロジェクト(研究,教育,社会貢献等)に,大学管理(任期つき)等)に対応した運用を可能とする。この運用のために部門間の調整をはかる仕組みを構成する