トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育大学・学部再編 地域の教育力低下を防げ 
. [he-forum 2982] 徳島新聞社説11/26up11/26 .-

----------------------------------------------------------------

『徳島新聞』社説  2001年11月26日付

教育大学・学部再編 地域の教育力低下を防げ

 国立の教員養成系大学・学部の在り方を検討してきた文部科学省の懇談会が、
各都道府県に少なくとも一つの教員養成系を置いてきた体制を転換、再編・統
合を進めることを盛り込んだ報告をまとめ、同省に提出した。

 これを受けて文科省は、全国に四十八ある教員養成系大学・学部の半減も想
定し、来年度中にも具体的な再編・統合計画を策定することにしている。教員
養成系がなくなる「空白県」が相当数に上ることになりそうだ。

 明治以来の教員養成システムの大変革につながる可能性が大きく、特に空白
県となる地域での影響は大きい。教員養成機能だけではなく、教育研究や教育
支援の中核を失い、地域の教育力の低下を懸念する指摘もある。

 それだけに、報告は地域の視点が欠けた「再編・統合ありき」に映る。すで
に各大学間で再編・統合に向けた協議が始まり、文科省は来年一月までに各大
学のプランを聞いた上、再編・統合計画を示す方針だが、空白県からは強い反
発が出る可能性もある。

 教員になる卒業生が三人に一人という教員就職率の低下など、危機にある教
員養成系大学・学部を再編・統合で効率化、教育の充実を図るのはやむを得な
いとしても、文科省は、地域との密接な関係で築いてきた教育力の低下を招か
ない方策を示すべきだ。

 報告によると、再編・統合は、単科大学(教育大学)に統合するケースと総
合大学に統合するケースの両方を想定。地域に偏りが出ないよう隣接する教育
大学・学部を統合することで、教育大学・学部を現在の半数以下の「教員養成
担当大学」に集約する。

 単科の教育大学が他大学に統合された場合は、大学自体が消える。また、教
員養成学部が教育大学に統合された場合は、教育委員会、学校などの地元教育
界と密接な関係にある教員養成学部がなくなることにつながる。

 確かに少子化もあり、一九八〇年代半ばに二万人を超えていた国立の教育大
学・学部の定員は、二〇〇〇年に一万人を割り、半数以下になっている。また、
かつて80%近くに達していた卒業生の教員就職率も34%にとどまり、各大
学・学部に分散している教員養成機能の効率化は避けられない。

 ただ、教育大学・学部は、教員養成だけが目的ではなく、現職教員の質を向
上させるための大学院での研修や、地域の特色に合った教育支援という役割を
担っている。地元で人材養成することで、教育界を中心に地域社会を支える役
割も担っているはずだ。

 このため報告は、教員養成学部を持たない大学でも、中学や高校の教師を目
指す学生が教職課程を学べるよう組織を整備。教育大学・学部がなくなる空白
県でも、現職教員の再研修ができるよう教員養成担当大学のサテライト教室を
設け、遠隔教育を実施するとしている。だが、十分ではない。

 文科省は、統合の目安となる教員養成担当大学の規模や、地元教育界との連
携や現職教員の再研修などで十分な地域支援ができる具体的な方策を明らかに
した上、再編・統合計画を示し、地域の理解を得る必要がある。

 それを抜きにすると、例えば四国の鳴門教育大学、愛媛、香川、高知各大学
教育学部の再編・統合構想も、地元教育界と各大学との長くて密接な関係から
反発を招くのではないか。