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独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育学部再編 根本的な論議が必要だ 
.[he-forum 2979] 信濃毎日新聞社説11/26-up11/26 .-

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『信濃毎日新聞』社説  2001年11月26日付

教育学部再編 根本的な論議が必要だ

 国立の教員養成系大学・学部を半数以下に再編統合する考えが示された。文
部科学省の懇談会がまとめた報告である。改善、充実を図る方策として説得力
に欠ける。教員をどう育てていったらいいか、根本的な論議をさらに重ねる必
要がある。

 報告は、各都道府県に少なくとも一つ設置してきた原則を転換するものだ。
一学部の定員を増やし、効率化や教育内容の充実を図る狙いである。大学・学
部がなくなる地域では教員の研修のためサテライト教室を置くなど新たな対応
も考える。

 背景には、少子化によって教員の採用数が減っている事情がある。昨春、国
立の教員養成系を卒業した学生で教職に就けたのは八人に一人だ。信州大は兵
庫教育大と並んで最も高いけれど、半数強にとどまる。

 このままでは大学や学部の活力が心配される。教員を目指す学生にも好まし
い状況ではない。教員免許の取得を目的としない課程も多い。教員養成系大学・
学部が岐路にあるのは確かである。とはいえ、今度の報告を良しとすることは
できない。

 何より気になるのは、どこまで教員養成の課題や将来像を見据えての結論で
あるかだ。教員養成系大学・学部の再編統合は文部科学省が経済財政諮問会議
に示した「大学の構造改革の方針」に盛られていた。「初めに削減ありき」の
印象も受ける。

 実際に進めるとなると、かなりの困難が予想される。この点も見過ごせない。
大学・学部のなくなる都道府県では、教員養成や研究の拠点を失うことに対し、
大学や教育関係者をはじめ反発が避けにくい。地域に深刻な混乱を招く可能性
もある。

 隣接する二、三の大学の統合を想定している。文部科学省は具体的な組み合
わせなどを来年度中にまとめる予定だ。これに先立ち、再編への取り組みを来
年一月に各大学から聴取する。実施を急ぐのでなく、しっかり合意をつくるよ
う求める。

 教員養成はどうあるべきか、さらに踏み込んで論議を交わす余地は大きい。
この際、教員養成の枠組みを問い直すのも一つではないか。中学や高校の教員
免許は教員養成系の大学・学部でなくても取れる。この基本は今回の報告でも
変わらない。

 例えば、小学校の教員についても同じような仕組みは考えられないのか。逆
に高校まで含めた形での教員養成系という発想は、あり得ないのか。多様な可
能性を探りながら、再編統合の是非に一定の方向づけをするよう再検討を促し
たい。