☆国立大統合 教育学部が矢面に
.[he-forum 2978] よみうり教育メール11/26(2)up11/26-
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よみうり教育メール 2001年11月26日付(2)
◆国立大統合 教育学部が矢面に
岐阜県高山市の県立高山工業高校の教室で午後六時ごろ、小学校から高校ま
での教員十人がテレビ画面を真剣に見つめていた。約百五十キロ離れた岐阜大
から、同大大学院教育学研究科の教授による心理学の講義が、テレビ会議方式
で中継されている。
講義は、自閉症についてのケーススタディー。「そちらの会場の意見はどう
ですか」。画面の中から教授が問いかけると、指名された教員は「自閉症にも
多くのパターンがあるので、対処法が違うと感じました」と、画面に向かって
意見を述べた。
再編・統合で最も影響を受けるのは教育学部だ。文部科学省の懇談会が二十
二日、「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について」と題する報告
をまとめた。「一学部当たりの学生数や教員組織がふさわしい規模となるよう
に再編・統合を行う」とある。
国立の教員養成大学・学部は今、すべての都道府県にある。しかし、四十八
大学・学部のうち、教員養成課程の定員が百人を割る大学が三分の一を占める。
二百人以下だと三十二大学にのぼる。少子化で教員採用が減っており、定員減
が続いているためだ。
小中学校教諭の養成教育は、教科や情報教育など分野が細分化しており、最
低でも九十人の大学教員が必要とされる。大学教員と学生定員が一対二を下回っ
ているところもある。経済効率は限りなく低い。一学部の定員は三百人以上が
望ましいとされている。統合が緊急の課題となる。
教員養成系大学・学部は、大学院で現場の教員の再研修を行うことも重要な
役目だ。県内に教員養成系の学部がなくなると、大学院へ通っての再研修は難
しくなる。岐阜大のテレビ中継研修が注目される理由はそこにある。
佐々木嘉三・岐阜大教育学部長は「教育学部は地元と密接な関係を築く必要
がある。統合されると、うまくいかない」と、統合に疑問を投げかける。だが、
多くの大学で、再編統合に向けた動きが水面下で進んでいる。
「教員養成が差別されている」。首都圏の国立大で教員養成を担当する教員
の一人は、そう嘆く。このままでは、定員が三百人に満たない首都圏の国立大
教育系学部は、教員養成の分野を東京学芸大に移すことになるとみる。その分、
教員免許取得を義務付けない「ゼロ免課程」の定員を学芸大から譲り受け、幅
広い教養教育を受け持つ学部を立ち上げることになる、との見方だ。
「専門志向の強い大学教員には、教養教育を新学部に押し付けることができ
て都合がよい。しかし、それで学級崩壊やいじめなどの問題に対処できます
か?」
実際には、教員養成系学部をそっくり廃止するだけでなく、その一部を残す
など、様々な方法がとられることが考えられる。しかし、地域への影響は計り
知れない。
教員養成系大学・学部のあり方に、抜本的な改革が必要な時期にきているこ
とは確かだ。しかし、改革は大学だけでなく、地域との協議によって進めなけ
ればならない。それなのに、大学内の閉じられた世界だけでの検討が目立つ。
地域貢献が国立大学の大きな役割とされている今、改革についての情報公開も、
各大学の姿勢を問う要素となる。