☆変革 国立大<1> 再編・統合の協議難航(東京)
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よみうり教育メール 2001年11月26日付(1)
◆変革 国立大<1> 再編・統合の協議難航(東京)
国立大学がかつてない激震に見舞われている。小泉内閣の「聖域なき構造改
革」の一環として、再編・統合、民間的手法の導入、研究面の評価を資金配分
に結び付ける「トップ30」構想などが「大学の構造改革の方針」として打ち
出され、各大学は対応を迫られている。その中で国立大はどう変わるのか、変
わろうとしているのか。三回にわたってお伝えする。まずは、文部科学省が各
大学に、何らかの方向性を来年一月までに示すことを求めている再編・統合に
ついて――。
浜松医科大は静岡大(ともに静岡県)と一緒になるのか、それとも豊橋技術
科学大(愛知県)も加わるのか。三つの大学で統合相手をめぐる綱引きが県境
を越えて続いている。
さる十六日、浜松医科大で、静岡大との協議が行われた。協議を前に、佐藤
博明・静岡大学長は、「統合へ向けた初の正式協議」と協議を高く評価した。
しかし、寺尾俊彦・浜松医科大学長は「本格的な統合の話ではない」と、静岡
大との統合が既成事実になることに警戒感を示した。
両大学は八月、統合を視野に入れたワーキンググループを設置した。その後、
静岡大は浜松医科大との統合方針を機関決定。一方、浜松医科大の決定は「幅
広い統合の可能性の実現を視野に入れる」と、統合相手を限定しないものだっ
た。
同医科大は光量子医学研究センターを持ち、工学技術の医療分野への応用を
目指す。同じ浜松にある静大工学部、情報学部、さらに豊橋技科大の研究分野
は魅力的だ。一方、静岡市内にある静大教育学部などは視野に入りにくい。
豊橋技科大には、同医科大との統合に「可能性としては大きいほう」とする
見方も少なくない。だが、「統合すれば、意思疎通に時間がかかる。特定分野
の研究に資金を投入しにくくなるのでは」という不安の声もある。
静岡大は同医科大との統合が優先するとの立場を崩さない。「県内統合」が
スローガンだ。三大学の”三角関係”の行方は不透明なままだ。
「今日、統合に合意しました」と二神光次・宮崎大学長。「いや、以前から
合意している。今日は新しい統合理念を提案した」と森満保・宮崎医科大学長。
両大学も先月三十日の協議会で、統合のグランドデザインの違いを表面化させ
た。
当初は「統合前提の協議を」とする宮崎大に対し、医科大は慎重姿勢だった。
それが、七月、森満医科大学長が統合後の大学を「生命科学に特化した総合的
医大」とする私案を発表し、事態は大きく変わった。
私案は、宮崎大三学部のうち農学部は食資源学、工学部は医工学や人間工学、
教育文化学部は健康教育をテーマとする学部への移行を視野に入れたものだっ
た。基礎医学科目を選択必修とするなど、教養教育にまで踏み込んでいた。
森満学長は「理念無きモザイク統合では学生に選ばれない。宮崎大側からも
新しい統合案を出してほしい」と、「特徴ある統合」にこだわる。二神学長は、
両大協議会の専門部会で統合理念などのまとめ作業に入っていたとして、
「(私案の)提案も検討も認めない。統合では、これまでの互いの理念を尊重
するべきだ」と反発する。
再編統合がすべての国立大の課題となったのは、今年六月、同省が「方針」
を示してからだ。「方針」は、国立大の数の大幅削減も打ち出した。唐突とも
見える同省の強硬姿勢に大学側には戸惑いも目立つ。
さる十一日、遠山敦子文相は国立大学協会の懇談会で、「方針」が民営化を
食い止めるためだったことを示唆。さらに「今が好機。これを逃すと悔いが残
る」と、「外圧」を大学改革に結びつけることを訴えた。
読売新聞社が行った大学学長アンケートでは、再編統合は「可能性を検討し
たい」まで含めると、国公合わせて66%にのぼる。しかし、新分野の開発、
教育、研究のレベルアップにつながらない統合は意味がない。ダイナミックな
発想が求められる。