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☆【教員養成大】統合は地域の視点が欠けている  
.[he-forum 2974] 南日本新聞社説11/25up11/25-
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『南日本新聞』社説  2001年11月25日付


【教員養成大】統合は地域の視点が欠けている 

 文部科学省の懇談会が全国に48ある国立の教員養成大・学部の再編統合を
打ち出した。隣接する複数の大学・学部の統合を「基本とすべき」としている。
実現すれば養成大学・学部は半数以下に減りそうだ。

 当然ながら養成学部のなくなる空白県が出てくる。どの県にも教員養成機関
を置くという明治以来の方針の大転換だ。

 少子化で教員の採用数が減り、教員養成系の定員も減少している。統合によ
り学部としてふさわしい規模を確保し、充実した養成をしようと考えるのは、
自然な流れにも見える。

 だが、養成大・学部は教員養成だけが目的ではない。現職教員の質を向上さ
せるための大学院などでの研修や、地域の特色に応じたカリキュラムづくりな
ど地域への支援という役割も持っている。

 先生が大学で学んだ知識だけで一生通用する時代は終わった。教育環境が激
しく変わる中で、先生も学び続けなければ、子どもの変化についていけなくなっ
ている。養成大・学部は働きながら学ぶ教員の再教育の場として重要である。

 これまで教員養成学部は実践と離れた研究に目を奪われがちだった。学校現
場や地域に十分に目を向けてきたとは言いきれない。

 不登校、学級崩壊、そして「自ら学び、考える力を育てる」という教育観の
転換など、学校現場が抱える困難な課題を考えれば、養成大・学部を地域を支
える資源として再生させる必要がある。

 教育委員会、学校、大学が手を結ぶためには、三者が近くに存在して日常的
に支え合うことが欠かせない。

 もちろん、懇談会も養成大・学部がなくなる大学には、一般学部での教員免
許取得や教委との連携のために「教職センター」を置くとしているが、十分な
地域支援機能を想定しているとは思えない。

 養成大・学部がなくなる県には、統合した養成大のサテライト教室を設ける
というが、現職教員の研修ニーズを満たすほどの広範なメニューを用意できる
わけではあるまい。遠隔指導の活用も、カウンセリングなど現職教員の関心の
高い分野は対面教育が不可欠であることを考えると、限界がある。

 教育を取り巻く今日の状況を踏まえたというよりは「初めに統合ありき」の
議論と言わざるを得ない。何よりも地域からの視点が欠けている。養成機能の
統合という理由だけで、地域支援や現職教員の研修機能まではぎ取るのは疑問
だ。

 文科省は各大学から聞き取り調査をしたうえで具体的な統合計画をまとめる
が、地域の教育支援機能をつぶすようなことでは将来に禍根を残す。