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独行法反対首都圏ネットワーク

☆この人に聞く 富山大の滝沢弘学長 
. [he-forum 2967] 朝日新聞富山版11/24up11/25.-

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『朝日新聞』富山版  2001年11月24日付

この人に聞く 富山大の滝沢弘学長
 
信頼回復と再編、道筋は?

 今月1日、富山大の学長に就任した。入試ミス隠ぺい問題で揺れた大学の信
頼回復や、富山医薬大、高岡短大との再編統合への道筋をどうつけるのか。昨
年3月に付属図書館長を最後に退職したが、今後は、先頭に立って大学の将来
を左右する課題に取り組む新学長に、意気込みを聞いた。

(阿部 英明、河野 通高)

「心の傷」におわびの気持ち

医薬大と「トップ30」の夢も

 −−入試ミス隠ぺい問題があったが、再発防止対策は万全か。大学の体質が
問題の背景にあったのではないか。

 コンピューターの扱いやクロスチェックをするなど、こうした問題が絶対起
きないように厳重に点検する。だが、学内に隠ぺい体質があるとは思っていな
い。数人の人為的な過失、いや過失というにはあまりにひどい過ちだった。

 −−元受験生への補償はどうなっているか。

 一般の被害者への補償とは性格が違う。そうした補償がもはや出来ないくら
い心の傷を与えた。国は若干の補償はするだろうが、それとは別に自分たちの
おわびの気持ちを表すために募金を始めた。もちろん、これだけが補償とは思っ
ていない。

 −−入試ミス問題の発覚で、学生や教職員が動揺を引きずっていないか。

 学生も驚いたと思う。特に来年4月に就職する学生は、就職試験などで富山
大の学生ということに引け目を感じたのではないかと申し訳ない気持ちだ。学
長に就任して、教官たちから「一生懸命やるからがんばれ」「信頼回復のため
にがんばろう」という声をもらった。富大も見捨てたものではありませんよ。

 −−大学における情報公開をどう考えるか。

 会議のごく一部の発言や素案の段階のものが、決定したかのように報道され
るのはまずい。だが、大学がこういう方向でいるとか、再編統合問題をどう考
えるかなどはできるだけ早く知らせたい。再編統合については今月末までに、
審議の進ちょく状況を正確な形で出したい。

 −−大学生の学力低下が言われて久しいが。

 ある程度はあると思う。だが、問題は学生への教育面の強化だ。これまで、
教官の評価はほとんど研究業績で、「教育に一生懸命になる時間があったら論
文一本を書け」という時代だった。今、教育に対する評価についても考えよう
と、委員会を立ち上げて精力的に検討している。

 −−再編統合の検討が遅れている。年内に基本構想をまとめられるのか。

 遅れているとは思っていない。年内にはつくりたいと思う。難しいが、やら
なければいけない。

 −−どんな新大学像を描いているか。

 いろいろあるが、自然科学系では、富山医薬大と理工系の大学院を担当して
いる人たちが一緒になれば、新しい分野で「トップ30」をめざした独立大学
院が複数できる可能性がある。医薬大もそういう期待があり、協議に入ろうと
いうことになった。学生に夢を与えることにもなる。また、いくつかの分野の
統廃合や学際的な分野を含めて組織を充実させれば、格段に充実した教養教育
ができる。

 −−再編統合問題では、学内のコンセンサスの重視を掲げているが、リーダー
シップをどう発揮するのか。

 コンセンサスを重視しながらリーダーシップを発揮するのと、独断的なトッ
プダウンは基本的に違う。コンセンサスを得るのは時間がかかると言われるが、
今、大学の教官は自分のこととして考えている。現に、再編統合検討委員会は、
忙しい中で午後5時からとか昼休みとかに会議を重ねている。

 −−文部科学省から、全都道府県に配置していた教員養成学部の統合を促す
動きが出ている。

 「効率化」だけの議論だ。地元の生徒を教えるのに、地元をよく知る先生が
何人かは必要だ。特に、小学校は同じ方言をしゃべる先生がいて初めて教育で
きる面もある。県内に教員養成機関はぜひとも必要だ。